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前編

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「フィリーナ、お前との婚約は破棄とする!!」

 告げられたのはある春の日だった。
 婚約者カインドルズが急に呼び出してきてそんな言葉を投げつけてきたのだ。

「婚約、破棄……?」
「ああそうだ」
「そうですか。分かりました」

 でもこちらとしてはそんなことはどうでもいい。
 だってべつに彼に執着しているわけではないから。

「……いいのか? 本当に」

 拍子抜けしたような顔をするカインドルズ。

「はい」
「なっ……な、なぬぬぬ……本気か?」
「もちろんです。だって貴方の心はもう変わらないでしょう? であれば、受け入れる外ありません」

 するとカインドルズはにやりと笑みを浮かべて「やり直したいなら今ここで泣いて謝れ、そうすれば少しは考えてやってもいいが?」などと言ってきた。

 あり得ない……。
 どうかしていると思う……。

「いえ、結構です」
「な!?」
「私、べつに、貴方への執着心はありませんので。貴方のお望みの通りで大丈夫です、問題ありません。それでは。失礼いたします」

 カインドルズとの関係はここまで。
 これ以上ずるずると付き合うような真似はしない。

「さようなら」

 こうして私たちは別れることとなったのだった。

 幸い、両親は受け入れてくれた。
 父も母も、二人とも、私がおかれている状況に理解を示してくれたのだ。

 なので私は問題なく実家暮らしへ戻ることができた。
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