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3話

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「そうね。じゃあ同行するのはやめるわ」
「信じてくれた!?」
「同行するのは、やめておくわ」
「ありがとう! 信じてくれて! ありがとう!」

 そうね。
 ありがとう、はまってくれて。


 ◆


 研修に向けて彼が家を出ていく日、私はカメラを持って彼を尾行した。

 彼はやはり女性と会っていた。

 陶器人形のように滑らかな肌。指先で押したくなるようなふっくらした頬。控えめな唇は桜色で、アーモンド型の瞳は長い睫毛に彩られている。クリーム色とも言えるような金髪をハーフアップにしていて、後頭部の結び目には薔薇のバレッタをつけている。

「待った?」
「いいえ。待っていませんわ」

 スカイはやはり女の人と会っていた。
 私が得た情報は何も間違っていなかったようだ。

「そうかい! なら良かった」
「ふふ。早く会いたかったです」

 スカイと女性は、熱い視線を絡み合わせつつ、甘い言葉を交わす。

「どこへ行く?」
「スカイ様のお望みのままに」
「えーと、じゃあ、宿泊所? ちょっと休憩したいなぁ」
「良いですわね! ふふ」

 待ち合わせしていた二人は腕組みをしながら歩き出す。

 二人はまるで仲良しカップルのようだ。いや、仲良しカップルでも常識的な感覚があればこんなにいちゃつきはしないだろうけど。ただ、こんなにも身を寄せ合い歩いているのに実は浮気だなんて、誰も思わないだろう。
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