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第164話 第三王子は漢気を見せる!

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「はい…… エリスに手伝ってもらい装着しましたが、あまりの激痛で止めました」

「それを耐えるのが男の子ってもんなのよ。それに新しいギブスも作っておいたわ。題して『大リーグボール2号養成ギブス』よ!」


巨大リーグボール養成ギブスの罠に嵌められ、さらに2号まで…… 天は我に何をさせようとしているのだろう。と、詩人のように振る舞う『シュウ』です。お母上様が激ヤバです。



「お、お母上様! その直球のお名前はお止めください。せめて、○人軍の巨をお付けくださいませ! 『パクリ』だと批判の対象になりかねません!」

「シュウ君、あなたの存在自体がパクリだと気が付かないの?」

「へぇ!?」


――お母上様の言っていることがわからない? なぜ、僕の存在がパクリだと……


数多あまたある第三王子の一人じゃない? これから誰かを『ざまぁ』でもするんでしょ? それともスローライフ?」


――たまたま偶然に第三王子に生まれただけですぅぅ!!


「ざまぁもスローライフもそんなものしませんよ! 多分……」

「口先だけなら何でも言えるわ。私が欲しいのは実践よ! さあ、私が考案し、大強化された大リーグボール2号養成ギブス改め巨大リーグボール2号養成ギブスを今、ここで装着するのよ!」


「はい……」


「エリス、悪いけどシュウ君に手伝ってあげて」

「――!? お母様! これは!?…… これはあまりにも強化させ過ぎじゃないですか?」


――!? なにっ!? 巨大リーグボール2号養成ギブスは巨大リーグボール養成ギブスよりもバネの数が倍以上に増え、バネの威力も強化されてるだと!! な、なんていう拷問器具を作るンだ! 拷問の枠を越えて殺しにかかってるだろ!


「さあ、私に巨大リーグボール2号養成ギブスを装着した姿を見せていおくれ! そして、男気を…… いや、漢気おとこぎを見せるのよ!」


――お母上様のお顔が悪役魔女に見えるのが、なんとも恐ろしい限りです……


「エ、エリス。申し訳ないが手伝ってもらえるかな?」

「う、うん。シュウ君、身体が震えてるわよ。止めておいた方が良いんじゃないの?」

「だ、大丈夫だよ。単なる武者震いってヤツだよ。ここは漢気おとこぎを見せなくては…… お母上様も魔法の特訓に必要だから準備されたと思うンだ! どんな意図かはわからないけど、ここはお母上様を信じよう」

「――腕のお肉をバネに挟むだけじゃ済まないわよ。腕毛まで持っていかれちゃうわよ。それでも良いの?」


――エリスが腕毛なんてお下品な単語は絶対に言わない! これはきっと夢だ! 夢に決まっている! しかも悪い夢だ! 悪夢よ、早く目覚めてくれ!!


「ヤるだけヤってみるさ」

「準備は良い? 着けるわよ……」

「ああ、頼む。おもいっきりやってくれ!」

「うん……」


『ガシャン!』


「プギャァァァァア!! マジで痛てぇ! 夢じゃなかった! 夢じゃなかったよお姉ちゃーん! 本当にドドロあくまはいたんだよォ!」


僕の体験した数々の悶絶の中でもトップクラスの悶絶だった……

「お肉が、お肉が挟まって痛てよー! 地味に腕毛が引っ張られて痛てよぉー!」


僕は絶叫と悶絶を繰り返しながら床を転げ回った…… まさに!生き地獄!


「――クスッ、フフフフ…… ハハハハハハハハッ おかしい…… お腹が…… お腹が…… 苦しい…… 面白すぎて苦しい……」

「シュウ、お前マジかよ。頭イカれてるのか? 普通は絶対に装着しないだろ……」

「……………………」

「ワァァァァアンダホォォォォオ! 痛いよぉ 痛いよぉ!」


――あまりの痛みでお母上様、お父上様の声が聞こえない…… 激痛に耐える、どこかの国の成人の儀式なのか?


「お母様…… どうして使われていなかったギブスを今さら……」

「それ……」

「ヒャッハー 痛でぇよぉー ひでぶー!」

「ちょっとシュウ君うるさいわよ! 少しは静かに出来ないの?」


――なんて理不尽な……


「ギャー ぎゃー ギャー ぎゃー」

「ちょっとホントにうるさいわよ!」

「ブゥー ブゥー ブゥー ブゥー」

沈黙寡黙魔法おまえはだまってろ!」

「……………………」


――ひどい…… これはひどすぎるよ……


「ふぅ、これで大人しくなったわ」

「お母様……」

「続けるわね。どうしてもシュウ君をあなたのレベルまでにしなきゃいけないのよ。あなたの場合は才能と素質もあったけど、それでも長い時間をかけて魔法の特訓をしてきたわ。だけど、シュウ君には時間がもう無いの。無理やりでも…… いえ、強制的に魔法循環、魔力増加する必要があったの」


「強制的にですか?」

「巨大リーグボール養成ギブスは強制的に魔法循環、魔力増加をさせるというより自分自身の眠っている潜在能力を引き上げるアイテムなのよ」

「そんな効果が…… それは知りませんでした」

「極秘アイテムだからね。魔法の知識もなく普通に使ったら、唯々痛いだけのギブスだけど、魔法の知識を持ったものが使えばシュウ君の眠っていた潜在能力が限界まで引き上げることが出来るわ」


「……………………(だずげでぇーー!)」
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