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ツヨシくん編

炊飯器

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 どうも、愛妻家のツヨシです。


 さて、ある日の掃除中の事です。

 整理整頓が好きなトモカちゃんは、休日ともなると掃除や片付けに追われます。

 彼女曰く、物が多いそうです。
 僕から見ればスッキリした部屋でも、トモカちゃんスコープで見ると、全然なっていないそうで、例えるなら、三年くらい閉店セールをし続けている店くらいでしょうか?
 もしくは、拉麺やスパゲッティまでメニューにある蕎麦屋レベルなのかも知れません。

 さて、僕も手伝い、一通りの整理がつきました。次は収納です。
 その時、トモカちゃんが僕に聞いてきました。

「クローゼット、何入れる?」

 さて、困りました。愛妻家の僕としては、どんな答えが良いのでしょう?
 まず、トモカちゃんがどんな答えを期待しているのかが気になります。
 何時の世も、相手のニーズに応える事が、良き夫の条件です。
 鬼嫁には気弱な夫ですし、浪費家には倹約家、天然には養殖? いや、これは関係ありませんでした。
 僕は、ここは受けを狙うべきだと判断します。

「夫とか……」

 これは失敗です。トモカちゃんが怪訝な顔をしています。マジで心配している様子が、心臓を抉ります。
 錯乱したと思っているのでしょうか? 相手に心配を掛けるようでは、受け狙いを外しています。
 ドン引き大賞決定です。

 僕が困っていると、トモカちゃんがウフフと笑います。
 どうやら、トモカちゃんにからかわれたようです。
 僕の三手先を行くのが、トモカちゃんです。


 ところで、僕たちは物持ちが良いです。
 もう、汚れた縫いぐるみを離さない幼児に匹敵します。

 使用している炊飯器も、僕が東北地方の理系の大学に通っている頃の物で、今は亡きサンヨーの白家電です。
 まぁ、白家電と言っても色は黒になります。
 それは、黒い筆記用具で書いても赤字だと言われる経理簿と、似た構図かも知れません。


 最近、炊飯器の調子が悪く、あまりご飯が美味しく炊けないとの事です。
 つまり、老朽化したと言う事でしょう。トモカちゃんの腕前は関係ありません。
 僕たちは、過去と現在を検証して、買い替えと言う未来を導きます。

 僕は理論的な言い方を好みますが、トモカちゃんからすれば、「寿命ですね」と、なります。

 かくして、僕が大学一年の頃から所持しているサンヨー製の炊飯器の役目が終わりました。

 そして後任は三菱製のIH炊飯器となります。
 明らかにご飯が美味しくなり、トモカちゃんはウフフと笑い、二人の幸せが増えましたとさ。

 まぁ、僕は彼女の作った物なら、全てパーフェクトだけどね。
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