ツヨシくんとトモカちゃん

雨川 海(旧 つくね)

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ツヨシくん編

ブラック桃太郎

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 こんばんは、愛妻家のツヨシです。


 僕は、東北地方の理系の大学を卒業してから、機械を検査する機械を検査する機械を設計しています。
 
 設計通りに作動するか検査する機械も必要なため、なかなかカオスな展開です。

 ターミネーターと言う映画で、機械が機械を造る設定に似ているのでは? などと密かに思っています。

 つまり、僕はスカイネットに近付いているのでしょうか? 


 そんな妄想はさて置き、最近は仕事が忙しく、愛しいトモカちゃんとのスキンシップも儘ならない状況です。

 残業も多いので、

「もしやブラック企業?」

 などと疑惑を持ちますが、ニュースで他社の過酷な実態を観る度に、わが社は大丈夫と安心します。

 僕はおめで……。いや、素直なんでしょうか? 

 僕が知っているブラックと呼べる物は、あの話しかありません。
 日本に古来から伝わる残酷物語、桃太郎です。

 昨今、大手企業の過労死事件で、労働者の立場が見直され、国会が紛糾するご時世です。


 桃太郎の物語は、川で拾われた捨て子が、猿、犬、雉に鬼退治をさせる話です。

 つまり、僕が妄想する桃太郎は、こんな感じです。



 雉子は、苛酷な労働条件に鳴いていた。

 契約では、吉備団子が毎日支給される事になっており、約束は実行されていたが、細かい点を決めていなかったので、1日に1個しか貰えなかった。

 労使交渉のイロハを知らぬ彼女にも問題があったが、人情としては、朝、昼、晩の三食を期待していた。
 全て、桃太郎の良心を信じた彼女が浅はかだった。

 彼女の他にも騙された犠牲者が居て、犬尾と猿子だった。

 特に消耗が激しいのは、体の大きい犬尾だった。
 脱水症状なのか? 何時も大きな舌を垂らして、ハーハーと苦しそうだが、桃太郎は見てみぬ振りを決め込んでいた。

 桃太郎のお供となった三人は、

「ちょっと鬼ヶ島まで」のちょっとの部分に騙された。

 鬼ヶ島の正確な位置を知らなかったので、果てしなく歩かされる破目になる。

「もう帰りたい」

 と言えば、

「お前は一度始めた事を投げ出すのか!」

 と、まるで○造みたいな勢いで怒鳴られ、泣きたくなるほど根性論を説かれるので、仕方なく、また歩き出してしまう。

 また、一度は脱走を試みるが、連れ戻されてしまう。

 そして、桃太郎は、根性論では通じなくなったと感じたらしく、今度は使命感に訴えかけようとする。

 鬼が如何に悪逆非道な連中なのかを訴え、自分たちの使命が如何に崇高で尊い物なのかを諭し、雉子、猿子、犬尾には、民衆から与えられる感謝を全て受ける事ができ、自分は鬼ヶ島の財宝だけでいい。と、説得する。

 もう、考える事に疲れた三人は、完全に桃太郎の奴隷と化していた。

 ただただ、目的地を目指して歩き、鬼ヶ島へ着いた。

 ここで、最後の決戦となる。

 桃太郎は、吉備団子を山積みにすると、三人に言う。

「さあ、腹が減っては戦はできぬ。婆さんに徹夜で作らせた吉備団子で腹ごしらえをするのだ」

 三人は、目の前の吉備団子を見て、怒りが沸沸沸沸沸沸沸沸と涌いていた。

 そして、雉子は吉備団子を頬張りながら怒鳴っていた。

「鬼を片付けたら、お前の番だぞ!」 


 以上が、僕が考えた桃太郎の物語です。
 この話からしたら、今の職場はブラックではないでしょうね。
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