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2113年 ハジメの場合
☆訓練生になる-3☆
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櫻井少佐は、校庭の真ん中で訓練生に囲まれていた。少佐の後ろには、鋼鉄の巨人、つまり、全地域制圧型二足歩行兵機、鋼殻体が控えていた。それが、無粋な訓練生の群れから彼女を守るかのように見える。
機械仕掛けの巨人のカラーリングは、スカイブルーの下地に桜吹雪とド派手な感じで、胸の装甲が開き、コックピットが見えている。
「注目してください。皆さん二度目ですね。櫻井鷹子です」
櫻井少佐は、拡声器を使って注意を引こうとするが、最初から男子訓練生からは惹かれている。
「これが鋼殻体です。私の愛機、桜前戦です。色が派手なのには理由があります。味方の誤射を防ぐためです。ジャイアントは色を認識できないですから、敵の対策は考慮する必要はありません」
櫻井少佐は、身振り手振りのオーバーアクションで話すから、胸が揺れる。軍服を着てはいるが、多くの男子訓練生は、まるで猫じゃらしの動きを追う猫のように、視線を動かしている。
だが、僕は違う。そうする訳にはいかない。そう、校庭には女子も集まっていた。教官が目を光らせているので近付けないが、ミヤコも見学している筈だった。
さて、櫻井少佐の説明は続く。
「体長は七㍍。重量は五㌧。動力は電気です。電圧を掛けると、伸縮する金属があります。これを繊維状に束ねた人工筋肉を使用しています。人工筋肉は、電圧を掛ければかける程、パワーがでます。そのため鋼殻体は、充分な電力を得るため、バックパックに小型化したジェットエンジンを搭載していて、その発電能力は、火力発電所のジェットガスタービン一基に相当します。なお、このジェットエンジンは、ジャンプやダッシュの推力としても使用可能です。燃料切れさえ気を付けてくだされば、かなりの距離を高速移動できます」
その後、少佐が実際に鋼殻体に乗ってのデモンストレーションに移る。
校庭に立てられた的を、高速で移動しながらライフルで撃ち抜くと言う妙技で、足を止めずに百発百中は凄い。それに、初めて間近で体験する火器の爆煙と爆音の迫力に圧倒された。
「可愛いだけじゃないんだね」
いつの間にか、自分の横にミヤコがいた。どさくさ、と言うパターンを利用したらしい。
僕は、久し振りにミヤコが近くに居て興奮する。つまり、ビックリするやら嬉しいやら、と言った具合。
「訓練生活はどう?」
聞かれたミヤコは、浮かない感じだった。
「成績は最低なのに班長なの。サイアク」
「ミヤコも班長なんだ。実は、僕も班長」
「へえ、偶然だね」
こんな何でもないような事が嬉しいなんて、まさに恋はマジックと言える。
二人で盛り上がっていると、恋の女神が嫉妬するのか? 大抵の場合は邪魔が入る。そして、僕の場合は最悪なケースが現れた。
「ミヤコか? お前も居たのか」
いきなり馴れ馴れしく語りかけるのは、背の高い男で、しかもイケメンなので、何だかイヤな展開の予感がしていた。そして、僕の勘は、悲しい程の的中率を示す。
「あっ、藤堂ぼっちゃん。いらしていたんですね」
僕には、ミヤコが発した「あっ、」の感嘆詞のイントネーションが、とても気になる。
背の高いイケメンの、金持ち風で育ちが違うぞオーラを発している藤堂さまは、ミヤコに上から、と言うより、ご主人様目線で話しかける。
「ぼっちゃんは止めろ。親父はお前の母親を雇っていたが、俺は親父じゃ無いし、お前も母親じゃ無いだろ。主従関係はない。ただ、慎之助でいい」
「何を偉そうに」と、心の中で呟く。ミヤコの尊敬の眼差しも気に入らない。二人の会話を聞く内に、怒りが沸沸と沸いて来た。
「なに、知り合い?」
上ずった声を発すると、慎之助の不思議そうな視線が刺さる。いつの間にか、僕の方が邪魔者の立場に変わっていた。天国から地獄へ、そんな気分を味わう。
「失礼した。俺は、一組の藤堂慎之助。ミヤコとは幼馴染みなんだ」
「失礼した。俺は、一組の藤堂慎之助」何だか偉そうな言い回しに腹を立てつつ、僕は自己紹介をする。
「え~と、九組、 “班長 ”の斎藤 一。ミヤコさんとは、知り合い」
そう、僕はミヤコに交際を申し込んでいない。だから、コンビニの客として知り合い、一緒に電車で此処に来ただけの関係でしかなかった。いま、改めてそれを思い知っていた。
機械仕掛けの巨人のカラーリングは、スカイブルーの下地に桜吹雪とド派手な感じで、胸の装甲が開き、コックピットが見えている。
「注目してください。皆さん二度目ですね。櫻井鷹子です」
櫻井少佐は、拡声器を使って注意を引こうとするが、最初から男子訓練生からは惹かれている。
「これが鋼殻体です。私の愛機、桜前戦です。色が派手なのには理由があります。味方の誤射を防ぐためです。ジャイアントは色を認識できないですから、敵の対策は考慮する必要はありません」
櫻井少佐は、身振り手振りのオーバーアクションで話すから、胸が揺れる。軍服を着てはいるが、多くの男子訓練生は、まるで猫じゃらしの動きを追う猫のように、視線を動かしている。
だが、僕は違う。そうする訳にはいかない。そう、校庭には女子も集まっていた。教官が目を光らせているので近付けないが、ミヤコも見学している筈だった。
さて、櫻井少佐の説明は続く。
「体長は七㍍。重量は五㌧。動力は電気です。電圧を掛けると、伸縮する金属があります。これを繊維状に束ねた人工筋肉を使用しています。人工筋肉は、電圧を掛ければかける程、パワーがでます。そのため鋼殻体は、充分な電力を得るため、バックパックに小型化したジェットエンジンを搭載していて、その発電能力は、火力発電所のジェットガスタービン一基に相当します。なお、このジェットエンジンは、ジャンプやダッシュの推力としても使用可能です。燃料切れさえ気を付けてくだされば、かなりの距離を高速移動できます」
その後、少佐が実際に鋼殻体に乗ってのデモンストレーションに移る。
校庭に立てられた的を、高速で移動しながらライフルで撃ち抜くと言う妙技で、足を止めずに百発百中は凄い。それに、初めて間近で体験する火器の爆煙と爆音の迫力に圧倒された。
「可愛いだけじゃないんだね」
いつの間にか、自分の横にミヤコがいた。どさくさ、と言うパターンを利用したらしい。
僕は、久し振りにミヤコが近くに居て興奮する。つまり、ビックリするやら嬉しいやら、と言った具合。
「訓練生活はどう?」
聞かれたミヤコは、浮かない感じだった。
「成績は最低なのに班長なの。サイアク」
「ミヤコも班長なんだ。実は、僕も班長」
「へえ、偶然だね」
こんな何でもないような事が嬉しいなんて、まさに恋はマジックと言える。
二人で盛り上がっていると、恋の女神が嫉妬するのか? 大抵の場合は邪魔が入る。そして、僕の場合は最悪なケースが現れた。
「ミヤコか? お前も居たのか」
いきなり馴れ馴れしく語りかけるのは、背の高い男で、しかもイケメンなので、何だかイヤな展開の予感がしていた。そして、僕の勘は、悲しい程の的中率を示す。
「あっ、藤堂ぼっちゃん。いらしていたんですね」
僕には、ミヤコが発した「あっ、」の感嘆詞のイントネーションが、とても気になる。
背の高いイケメンの、金持ち風で育ちが違うぞオーラを発している藤堂さまは、ミヤコに上から、と言うより、ご主人様目線で話しかける。
「ぼっちゃんは止めろ。親父はお前の母親を雇っていたが、俺は親父じゃ無いし、お前も母親じゃ無いだろ。主従関係はない。ただ、慎之助でいい」
「何を偉そうに」と、心の中で呟く。ミヤコの尊敬の眼差しも気に入らない。二人の会話を聞く内に、怒りが沸沸と沸いて来た。
「なに、知り合い?」
上ずった声を発すると、慎之助の不思議そうな視線が刺さる。いつの間にか、僕の方が邪魔者の立場に変わっていた。天国から地獄へ、そんな気分を味わう。
「失礼した。俺は、一組の藤堂慎之助。ミヤコとは幼馴染みなんだ」
「失礼した。俺は、一組の藤堂慎之助」何だか偉そうな言い回しに腹を立てつつ、僕は自己紹介をする。
「え~と、九組、 “班長 ”の斎藤 一。ミヤコさんとは、知り合い」
そう、僕はミヤコに交際を申し込んでいない。だから、コンビニの客として知り合い、一緒に電車で此処に来ただけの関係でしかなかった。いま、改めてそれを思い知っていた。
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