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3 幼児に見せる光景じゃありません
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地下室から救出?された私は、目の前の光景に呆気に取られていた。
「ふぇ?」
言葉にできないとはまさにこの事。
私の目に映るのは縄で拘束された侍女や執事、母と思われる女性と恐らく不倫相手の男。
不倫の証拠見つけて、離縁するって言ってたけど…まだ他に何かやらかしてたのかな?
人間、驚きすぎると冷静に考えることが出来るものだと痛感した。
「…ん?グウェン、その子は何だい?」
縄に繋がれた人達の前に立っていた男性が、私達の存在に気がついたようで振り返る。
茶色の髪に赤褐色の瞳。三十代前半に見える男性は、グウェンさんの腕の中にいる私に目を止めると、眉間に皺を寄せた。
……もしかしなくても、ワーズナー公爵?
子どもを見つけて眉間にシワを寄せるなんてなかなかない反応だ。
まぁ、もしかしたら単なる子供嫌いな人かもしれないが。
「わざわざ確認しなくても分かるだろ?」
グウェンさん、そうかもしれないけど言い方ってもんが……。
呆れたように言うグウェンさんに内心あわあわとする。
地下から出て明るいところに出たわけだが、グウェンさんの顔はまだ見ていない。見ようとしていないのではなく、彼は仮面を付けていたので見られなかったのだ。
「まぁ、確かに分かるがね」
ゆったりとした歩みで近づいてくる男性。
ちなみに、その表情は〝不快〟と言い表すことしか出来ない。眉間に皺を寄せたまま、近づいてくる様子は子どもでなくとも怖い。
恐怖を感じた私は、グウェンさんの厚い胸板に顔を埋めた。
精神年齢まんまの見た目だったら完全にアウトだが、今の私は幼児。セーフ…だよね?
ちょっと自信がない。
目をぎゅっと瞑って体を強ばらせていると、すぐ近くに男性がたつ気配がした。
「こっちを向いてくれないかい?」
言葉だけを聞けば優しげだが、その声はおどろおどろしい。決して、幼児に対して話しかける声じゃない。
ひょっとして、この男性は私を怖がらせたいのかな。
なんて考えてしまう。
男性の言葉を無視していると、母親と思われる女性が男性を鼻で笑った。
「その忌み子にまで蔑ろにされるなんて、なんて惨めなのでしょうね?」
完全に見下した発言。
顔は美女といっても差し支えないほど整っているが、厚い化粧で迫力が増しとても近づきたいと思えない威圧感を放っていた。
縄で縛られ床に跪かされながらも、嘲るように笑いながら話す女性に鳥肌が立つ。
「てめぇ、公爵様に向かって……」
「いい、私は気にしていない」
彼女の物言いに食ってかかろうとする誰かを、男性―ワーズナー公爵―は諌めた。
「その子はあんたの子じゃないわ」
「あぁ、勿論知ってるとも」
わお、ドストレートな会話。
こんな会話はなかなか聞けるものじゃないね。
「私が君を抱いたことは一度もないからな」
ねぇ、地下にいた時から思ってたんだけど、幼児の情操教育に全く良くないことが聞こえてくるんだけど?
うーん、普通は意味なんて分からないから関係ない、のか……?
「それに子どもがいると知っていたら、もっと早くに帰ってきたさ。二年も放置したりしない」
あ、放置してる自覚あったんだ?
あれ?でも、じゃあなんで放置してたの?戦争終わったの?
「なっ!」
「はははっ、驚いたかい?……なかなか証拠が揃わなくて、大変だったよ。私がいない間、随分好き勝手してくれたようだな?まぁ、一つ見つかれば芋づる式でどんどん出てきて私としては万々歳だったがね」
「なによこれ!私は知らないわ、使用人達が勝手にしたことでしょ!?」
多分、証拠の書かれた紙を見せられたのだろう。
母の声は上ずり、明らかに焦りを見せた。
「そうかな?まぁ、使用人達だけでやっていようが、それに気づかず諌めることが出来なかった君にも問題があると思うのだよ。それに、この国で黒髪の子どもに対する虐待は重罪だ。帝国貴族の女性の君なら知らないはずもないとは思うが?どう言い逃れをするつもりなのかね?」
「……」
重い沈黙が流れた。
黒髪、それは紛れもなく私をさしての言葉だと思う。
私を世話する侍女達の会話から何となく、黒髪は何かを意味することは理解出来たけど未だにその意味は分からない。
「もう言い逃れはできないよ。君は私がいないからと自由にしすぎた。君の父親は君の事を勘当したそうだ。不貞を働き、罪を犯した貴族の女性がこれから歩む道は二つしかない。教会行きか平民として暮らすか…まぁ、君の場合どちらを選んでも生きづらいだろうけどね」
ワーズナー公爵の話し方は、すごく軽かった。言うなれば「あっ……君、罪犯したから流刑ね?」みたいな感じで重さが感じられない。
どんな表情で話しているのか気になって、チラッと振り返ってみたらすごく驚いた。
「あぁ、やっとこっちを見てくれたね」
私のことをガン見していたのだ。
え?もしかしなくても、ずっと私を見ながら会話してた?嘘でしょ?誰かつっこむ人いなかったわけ?
あまりの衝撃に、開いた口が塞がらない。
「不思議だね、血は繋がってないはずなのに赤褐色の瞳や顔立ちはどことなく私に似ている」
あの、ナチュラルに私の顔に触らないでくれます?
「知らなかったからとはいえ、君を救い出すのに時間がかかってしまった」
いや、私不倫相手の子どもですけど?
「これからは私の子として大切に守っていくから…」
だから、血は繋がってないし。なんなら孤児院に追いやってもおかしくないような存在なんですが?
最初の不快な表情とは打って変わって、痛ましげに私を見つめるワーズナー公爵。
あの、誰かご説明くださいませんか!
「ふぇ?」
言葉にできないとはまさにこの事。
私の目に映るのは縄で拘束された侍女や執事、母と思われる女性と恐らく不倫相手の男。
不倫の証拠見つけて、離縁するって言ってたけど…まだ他に何かやらかしてたのかな?
人間、驚きすぎると冷静に考えることが出来るものだと痛感した。
「…ん?グウェン、その子は何だい?」
縄に繋がれた人達の前に立っていた男性が、私達の存在に気がついたようで振り返る。
茶色の髪に赤褐色の瞳。三十代前半に見える男性は、グウェンさんの腕の中にいる私に目を止めると、眉間に皺を寄せた。
……もしかしなくても、ワーズナー公爵?
子どもを見つけて眉間にシワを寄せるなんてなかなかない反応だ。
まぁ、もしかしたら単なる子供嫌いな人かもしれないが。
「わざわざ確認しなくても分かるだろ?」
グウェンさん、そうかもしれないけど言い方ってもんが……。
呆れたように言うグウェンさんに内心あわあわとする。
地下から出て明るいところに出たわけだが、グウェンさんの顔はまだ見ていない。見ようとしていないのではなく、彼は仮面を付けていたので見られなかったのだ。
「まぁ、確かに分かるがね」
ゆったりとした歩みで近づいてくる男性。
ちなみに、その表情は〝不快〟と言い表すことしか出来ない。眉間に皺を寄せたまま、近づいてくる様子は子どもでなくとも怖い。
恐怖を感じた私は、グウェンさんの厚い胸板に顔を埋めた。
精神年齢まんまの見た目だったら完全にアウトだが、今の私は幼児。セーフ…だよね?
ちょっと自信がない。
目をぎゅっと瞑って体を強ばらせていると、すぐ近くに男性がたつ気配がした。
「こっちを向いてくれないかい?」
言葉だけを聞けば優しげだが、その声はおどろおどろしい。決して、幼児に対して話しかける声じゃない。
ひょっとして、この男性は私を怖がらせたいのかな。
なんて考えてしまう。
男性の言葉を無視していると、母親と思われる女性が男性を鼻で笑った。
「その忌み子にまで蔑ろにされるなんて、なんて惨めなのでしょうね?」
完全に見下した発言。
顔は美女といっても差し支えないほど整っているが、厚い化粧で迫力が増しとても近づきたいと思えない威圧感を放っていた。
縄で縛られ床に跪かされながらも、嘲るように笑いながら話す女性に鳥肌が立つ。
「てめぇ、公爵様に向かって……」
「いい、私は気にしていない」
彼女の物言いに食ってかかろうとする誰かを、男性―ワーズナー公爵―は諌めた。
「その子はあんたの子じゃないわ」
「あぁ、勿論知ってるとも」
わお、ドストレートな会話。
こんな会話はなかなか聞けるものじゃないね。
「私が君を抱いたことは一度もないからな」
ねぇ、地下にいた時から思ってたんだけど、幼児の情操教育に全く良くないことが聞こえてくるんだけど?
うーん、普通は意味なんて分からないから関係ない、のか……?
「それに子どもがいると知っていたら、もっと早くに帰ってきたさ。二年も放置したりしない」
あ、放置してる自覚あったんだ?
あれ?でも、じゃあなんで放置してたの?戦争終わったの?
「なっ!」
「はははっ、驚いたかい?……なかなか証拠が揃わなくて、大変だったよ。私がいない間、随分好き勝手してくれたようだな?まぁ、一つ見つかれば芋づる式でどんどん出てきて私としては万々歳だったがね」
「なによこれ!私は知らないわ、使用人達が勝手にしたことでしょ!?」
多分、証拠の書かれた紙を見せられたのだろう。
母の声は上ずり、明らかに焦りを見せた。
「そうかな?まぁ、使用人達だけでやっていようが、それに気づかず諌めることが出来なかった君にも問題があると思うのだよ。それに、この国で黒髪の子どもに対する虐待は重罪だ。帝国貴族の女性の君なら知らないはずもないとは思うが?どう言い逃れをするつもりなのかね?」
「……」
重い沈黙が流れた。
黒髪、それは紛れもなく私をさしての言葉だと思う。
私を世話する侍女達の会話から何となく、黒髪は何かを意味することは理解出来たけど未だにその意味は分からない。
「もう言い逃れはできないよ。君は私がいないからと自由にしすぎた。君の父親は君の事を勘当したそうだ。不貞を働き、罪を犯した貴族の女性がこれから歩む道は二つしかない。教会行きか平民として暮らすか…まぁ、君の場合どちらを選んでも生きづらいだろうけどね」
ワーズナー公爵の話し方は、すごく軽かった。言うなれば「あっ……君、罪犯したから流刑ね?」みたいな感じで重さが感じられない。
どんな表情で話しているのか気になって、チラッと振り返ってみたらすごく驚いた。
「あぁ、やっとこっちを見てくれたね」
私のことをガン見していたのだ。
え?もしかしなくても、ずっと私を見ながら会話してた?嘘でしょ?誰かつっこむ人いなかったわけ?
あまりの衝撃に、開いた口が塞がらない。
「不思議だね、血は繋がってないはずなのに赤褐色の瞳や顔立ちはどことなく私に似ている」
あの、ナチュラルに私の顔に触らないでくれます?
「知らなかったからとはいえ、君を救い出すのに時間がかかってしまった」
いや、私不倫相手の子どもですけど?
「これからは私の子として大切に守っていくから…」
だから、血は繋がってないし。なんなら孤児院に追いやってもおかしくないような存在なんですが?
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