生まれ変わったので、自由を謳歌することにしました。

猫野 狗狼

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5 目まぐるしい一日②

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  ガタンゴトン……

「ちょっと揺れるかもしれないが、何も怖くないからな?」

  いえ、揺れは全く怖くないですけど、私はあなたが怖いです。

  どうやら私が汚れて痩せ細っていたことに対して、元妻を不快に思ったことで初めに見た時眉間にシワがよっていたと推測されるワーズナー公爵は、今はお前誰だよと思うほど優しい顔をしている。

  しかし、こうまじまじと顔を見てみるとかなりのイケメンだね。

  切れ長の瞳に整った顔立ち。王子様……と言うよりも貴公子と言った方がしっくりくる見た目。
  三十代後半と思っていたけど、もしかしたら二十代後半から三十代前半くらいかもしれない。

「うーん、そう言えば君の名前を聞き忘れてたなぁ。後で報告書を読まないと」

  名前?名前ならあるよ。

「でぃー」

「うん?」

  あれ、聞き取れなかったのかな?
  じゃあもう一回。

「でぃー」

「もしかして自分の名前を言ってるのかな?」

  せいかーい。

  そんな意味を込めて私はにっこり笑った。
  まぁ、本当の名前はディージェなんだけどね。舌っ足らずな今の私にはこれが限界です。

「どうしよう。この子、天使!」

  頭大丈夫か。

「でも、どうせならパパって言って欲しかったねぇ」

  どんだけ欲望に忠実なんだよ。

  残念そうに私の頬をつつくワーズナー公爵。彼はどこか子どもっぽい所があるようだ。

「あ、もうすぐ屋敷につくからね」

  公爵邸を出る前にも言ってたけど、どういうこと?もう一つ屋敷があるってことかな?

  スピードを落としながらゆっくりと停止した馬車を降りると、そこには綺麗な庭に囲まれた大きな屋敷があった。

「あそこはね、私の母が生前住んでいたところなんだ。君が今までいた屋敷は結婚してから買った屋敷……って、こんなこと言っても君には難しいかな?」

  ふむふむ、そういうことか。
  心配せずとも理解できてますよー…なんて、そんなこと伝わらないだろうけど。

  私はプラプラと手を揺らしながら庭や屋敷の外観を眺めていた。

  大小様々な花が咲き誇っている庭は見ているだけで楽しい。
  ごちゃごちゃとした印象を受けないのは、きっと庭師の腕がいいからだろう。

  少し離れたところに温室が見えるけど、野菜でも育てているのだろうか?

「ん?あれが気になるのかな?あれは植物園だよ。この国だけじゃなくて、いろんな国から集めた薬草を育てているんだ。中には毒草もあるから一人で入っちゃいけないよ?」

  いや、だいたい一人で遠くまで行動できないし。それに、そんな危ないところ近づこうとも思わないよ。

  屋敷周辺にあるものの説明を聞いているうちに玄関についた。

「ようこそ、私の屋敷へ」

  そう言って彼が扉を開くと、

「「おかえりなさいませ」」

  ワーズナー公爵の帰りを待っていた侍女や執事がスッと一矢乱れぬ動きで礼をとった。

  ビクッ

「うん、今戻ったよ。……っと、大丈夫大丈夫なにも怖くないからなー?」

  まるで軍隊のような動きをする彼らにビックリした私をワーズナー公爵はなだめてくる。
  いきなりのことで驚いただけなので、幼児扱いは少し恥ずかしい。中身が大人だなんてこの人達は知る由もないだろうけど。

「おや?旦那様、そのお子様は…」

  公爵の腕の中にいる私に気がついた年配の執事が、不思議そうに尋ねる。

「私の子どもだ。ほら、見てくれ私にそっくりじゃないか?」

「本当ですね。旦那様の小さい頃にそっくりです」

  ニコニコしながら答える公爵に、執事もニコニコしながら答えた。その表情は嘘を言っているようには見えない。

「ですが旦那様、その格好はあんまりじゃないですか?」

  私の薄汚れた格好を見て、眉をひそめる執事。

「あー、確かに。ソフィー、頼めるか?」

  執事の言葉を聞いた公爵は、一人のメイドを呼んだ。
  ソフィーと呼ばれた彼女は、見た目四十代半ば頃の年齢の女性で色素の薄い茶色の髪にエメラルドグリーンの瞳の優しそうな雰囲気だった。

「えぇ、勿論です。お可愛らしいお子様ですね。さぁ、湯浴みに行きましょうね」

  公爵の腕から私を受け取ると、ふわりと柔らかい笑顔を浮かべたソフィーさん。お母さんがいたらこんな感じなのかと思う温かさを感じた。
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