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7 四月二十八日、夜の公園
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「お前は本当に、誰も殺してないだろ」
燐音を抱きしめる腕に力を込め、何回も伝えている『事実』を静かに伝えた。
誘拐犯──あの女は、生きている。
血みどろで見るに耐えない顔面でも、その場で生きていると確認された。そのまま捕まって、病院で治療まで受けて、妥当だと判断された刑を言い渡された。
本当に、生きている。
なのに燐音は、いつも。
「でも……ホントに……殺しちゃったって……思ってた……人、殺したって……思ってたから……あの時の、わたし、は……人殺しだよ……」
今もまた、泣きながら同じ反論をしてくる。
「違うだろ」
燐音の頭を、怯えさせないように撫でる。
「お前は俺を守ってくれただけだろ。誰も死んでない。お前は誰も──」
「なおちゃん」
泣いているのに芯の通った燐音の声が、あの暗闇で鈍く輝く刃物より鋭く思え、反射的に身を固くした。
「なおちゃんも、死んじゃったって思ってたから」
みんな生きてるって。
「言ってくれた。わたしを庇って助けてくれた。わたしのほうが、ずっと」
縋るように抱きしめられ、
「ずっとなおちゃんに、守ってもらって助けてもらってるよ」
人を殺したと思っても。
「みんな生きてるって言って、わたしを守ってくれたの、安心しちゃったんだよ」
「っ……」
自分が情けなくて、顔がゆがむ。
「……思ったよ、本当に死んだかもって思ったよ。ごめんな、燐音。俺のせいでずっと苦しませた」
泣いている燐音を、あの時のように頭ごと抱えた。
「けどな、燐音。かもって思ったのも本当だけど」
絶対に。
「燐音は誰も殺してない、殺さない。アイツも誰も死んでないって、それもずっと思ってたから」
だから、あの時。
「俺が殺したって言わなかった。みんな生きてるって言った。お前は本当に誰も殺してないし、俺の中でも人殺しじゃないんだよ、燐音」
燐音。
「ずっとごめんな。お前が悩んでたの、気づけなくてごめん。自分を責めないでくれ、責める必要なんてないんだよ。ごめんな、燐音」
抱きしめてる燐音がさらに泣き出し、ごめんと重ねようとして、
「……また、安心しちゃったよぉ……ころ、して、ない……良かったぁ……なおちゃんに、助けてもらってばっかだよぉ……」
涙の理由に安堵して、腕に込めていた力を抜いた。
「うん、燐音は守ってくれただけだ。誰も死んでない、大丈夫。安心してくれ、燐音」
宥めるために頭を撫でながら、なるべく優しい口調を心がけて伝える。
「それにやっぱり、俺のが燐音に助けられてばっかな気がするんだよな」
暗闇、夜、薄暗い程度でも、怖い時は怖い。
誘拐事件を受けて防犯のためと整備され、あの頃の面影なんか綺麗さっぱり消え去ったこの公園だって、まだ少し怖い。
怖いけど、怖いヤツはもう居ない。確かめるために、毎日公園へ足を運ぶ。
そんな俺に、燐音はいつも付き添ってくれて。
「燐音に大丈夫って言ってもらえると、全部が怖くなくなる」
ひらひらふわふわの服がトラウマになって、服そのものも着られなくなりかけたのに。
「ぴったりするヤツ、伸縮性のあるヤツ着てみたらって燐音が言ってくれたから、服も着られるようになった」
今も伸縮性のヤツを中に着てるから、制服も普通に着られるし。
「睨みつけるカオになった俺のこと、燐音は避けないでくれた」
可愛いから目をつけられて誘拐された。自分の見た目を呪いたくなっていたら、いつの間にか『悪人面』が出来上がり、剥がせなくなった。
「そんな俺と、ずっと一緒に居てくれて、俺はずっと救われてるよ」
「……ありがとだけど……泳ぐの……泳いでるなおちゃん、カッコいいけど……好きだけど……」
胸に顔を押し付けたまま遠慮がちに言われ、「あー、やっぱ分かってたか」と苦笑した。
「まあ、最初の動機は、な」
体を鍛えたら『可愛い』から遠ざかるかと、筋トレを始めて色んなスポーツにも手を出した。一番性に合った──精神的に楽だったのがスイミング、水泳だった。
常に水の中に居る、何も身に着けていないような、けれど肌に何かしら触れている状態だから、精神的に楽だという動機。泳げば泳ぐほど、拭い去れない記憶を忘れられる。
「でも、今はさ」
髪を梳くようにゆっくり撫でていた燐音の頭を、ぽんぽんと軽く撫でる。
「お前のおかげで、純粋に競技として取り組めるようにもなったんだよ」
燐音がまっすぐ応援してくれるのが嬉しくて、記録更新、大会出場、真正面から向き合い始め、ライバルみたいな仲間もできた。
「全部が燐音のおかげだよ。俺は燐音にずっと助けてもらって、ずっと救われてる。分かってくれたか?」
「ありがとだけど、嬉しいけども」
なぜか、不貞腐れたような声になった燐音が、
「わたしをずっと助けてくれて、今も助けてくれてるのは、カッコ良すぎるなおちゃんです」
よく分からないことを言ってきた。
「えーと? ありがたいけど……悪い、なに? どれのなんだ?」
些細なあれこれは思い浮かぶけれど、些細すぎて燐音には遠く及ばない気がする。
「なおちゃんのおかげでカオ動くし、喋れるんです。なおちゃんのおかげで歌えるから、歌えるってわかったからです」
「……あー……燐音? えっと……」
何をどう聞けばいいのかと迷う俺を見上げるように、燐音が顔を上げた。
なんか、怒ってるような。
「なおちゃんが作ってくれた歌で、わたしは喋れなくても歌えるってわかりました」
「あ、あぁ、それ……」
話せなくても、読み書きや身振り手振り、手話などでも意思疎通を。
無理に喋らせないようにと、周囲は燐音へ気を遣った。
俺も気をつけたけど、燐音本人は喋りたがっていた。喋る代わりに歌ってみたらどうか、歌うって言ってもハミングとか、そういう感じの。
燐音と周囲に確認を取ってから、楽しく気軽に遊び感覚でやってみようと、燐音が好きそうなメロディーを短く作った。既存の曲だと、全力を出しがちな燐音がミスった時、燐音の重荷になる。
身近な素人が遊び感覚で作ったオリジナルのほうが気楽に歌えるかなと、本当にメロディーだけで歌詞も何も無い、短い曲を作った。
燐音がとても楽しそうに歌ってくれて、俺も周囲も、泣きそうなほど嬉しかった。
「園にあったピアノで作ったあれだろ? あれは、良かったっていうか、燐音が楽しそうで良かったから、俺も嬉しかったよ」
不満そうに見上げてくる燐音の頭を撫でたら、
「最初は、それだけど」
もっと不満そうになって、
「それからも『なおちゃん』はずっと作ってくれてた。なおちゃんが『くじら』さんになってからも、ずっと作ってくれてた」
「……うん、はい」
可愛く訴えられたこともだが、やっぱりバレてたかという気持ちもあり、素直に首を縦に振る。
うん、お前が毎朝練習してた曲を作った『くじら』は俺だよ。嬉しかったよ、お前が『くじら』の曲をよく聴いてるとか、それをよく歌うとか言ってくれてさ。
毎日新曲を頼まれるのも嬉しくて、燐音へ毎日新曲を作った。メロディーだけでなく、歌詞も頼まれた。そうして一ヶ月もなく、既存の曲、流行りの曲も気軽に歌えるようになった燐音は、喋れるようにもなってきた。感情も無理せず表へ出せる、気づけば出ているくらいまで、燐音は毎日楽しそうだった。
小学校でのお化け屋敷の件で女子グループに呼び出された時も、燐音のために早く家に帰って曲を作りたかったから、素直に応じたんだけど……まあ。
小学校の三年生に上がった頃、なんだかワクワクしている燐音に尋ねられた。
『なおちゃんの曲ね、どっかに上げたりしない?』
色んな人に、なおちゃんの曲、知ってほしいし聴いてほしいし。
わたしみたいな誰かさんが歌えたりしたら、わたしは嬉しいんだけど、なおちゃんはどう?
断る理由はなかったけど、燐音のために作った曲は燐音のだし。そのままSNSとか動画サイトとかに上げるのは、なんか違う気がするんだよな。
考えを伝えたら、燐音が少ししょんぼりしてしまい、慌てて付け加えた。
『いや、まあ、考えるよ。けど、燐音の曲は燐音の曲だから……それ用に新しく作る』
そこまで言ってから、燐音が少しでも楽しめるかもと、また付け加えた。
『俺だってわかんないようにアップするから、暇な時にでも探してくれよ』
嬉しそうな燐音が全力で探す前にと、防犯も兼ねて持ち込みを許可されていたスマホで、昼休み時間に最低限のことを済ませた。
いつも作るのと似ているけど違う雰囲気の曲を二つ作り、アカウントを作り、即座にアップした。
名前はいつでも変えられるからと、サメ、海の生き物、くじら、と連想で頭に浮かんだ名前にした。
曲はテキトーでなく、結構本気で作った。燐音のために作る曲も燐音のためと本気だったし、不特定多数が数秒でも耳にするならテキトーに作るのは失礼な気がした。
なにより、燐音に探し出してもらう目的がある。本当に探すかは置いといて、見つけ出した時にがっかりさせる曲を載せたくない。
泳ぐのは自分のため、曲を作るのは燐音のため。
くじらとして活動しても、半分以上は燐音のため。
そんな動機で『くじら』として細々と活動していた俺は、曲を上げるたびフォロワーや登録者が少しずつ増えていき、有り難く思いながら日常を過ごしていただけだった。
三月にトレンド入りした曲も、有り難いけど有り難いで終わった。
有名な歌い手さんに歌ってもらったことも、そのおかげで曲がまたトレンドになったことも、有り難かったけど。
嬉しそうな燐音から、その曲を好きな人へ歌いたい、よく聴いてるくじらさんのと言われた時。
喜べばいいのか気絶でもすればいいのか、俺は一瞬固まった。
燐音を抱きしめる腕に力を込め、何回も伝えている『事実』を静かに伝えた。
誘拐犯──あの女は、生きている。
血みどろで見るに耐えない顔面でも、その場で生きていると確認された。そのまま捕まって、病院で治療まで受けて、妥当だと判断された刑を言い渡された。
本当に、生きている。
なのに燐音は、いつも。
「でも……ホントに……殺しちゃったって……思ってた……人、殺したって……思ってたから……あの時の、わたし、は……人殺しだよ……」
今もまた、泣きながら同じ反論をしてくる。
「違うだろ」
燐音の頭を、怯えさせないように撫でる。
「お前は俺を守ってくれただけだろ。誰も死んでない。お前は誰も──」
「なおちゃん」
泣いているのに芯の通った燐音の声が、あの暗闇で鈍く輝く刃物より鋭く思え、反射的に身を固くした。
「なおちゃんも、死んじゃったって思ってたから」
みんな生きてるって。
「言ってくれた。わたしを庇って助けてくれた。わたしのほうが、ずっと」
縋るように抱きしめられ、
「ずっとなおちゃんに、守ってもらって助けてもらってるよ」
人を殺したと思っても。
「みんな生きてるって言って、わたしを守ってくれたの、安心しちゃったんだよ」
「っ……」
自分が情けなくて、顔がゆがむ。
「……思ったよ、本当に死んだかもって思ったよ。ごめんな、燐音。俺のせいでずっと苦しませた」
泣いている燐音を、あの時のように頭ごと抱えた。
「けどな、燐音。かもって思ったのも本当だけど」
絶対に。
「燐音は誰も殺してない、殺さない。アイツも誰も死んでないって、それもずっと思ってたから」
だから、あの時。
「俺が殺したって言わなかった。みんな生きてるって言った。お前は本当に誰も殺してないし、俺の中でも人殺しじゃないんだよ、燐音」
燐音。
「ずっとごめんな。お前が悩んでたの、気づけなくてごめん。自分を責めないでくれ、責める必要なんてないんだよ。ごめんな、燐音」
抱きしめてる燐音がさらに泣き出し、ごめんと重ねようとして、
「……また、安心しちゃったよぉ……ころ、して、ない……良かったぁ……なおちゃんに、助けてもらってばっかだよぉ……」
涙の理由に安堵して、腕に込めていた力を抜いた。
「うん、燐音は守ってくれただけだ。誰も死んでない、大丈夫。安心してくれ、燐音」
宥めるために頭を撫でながら、なるべく優しい口調を心がけて伝える。
「それにやっぱり、俺のが燐音に助けられてばっかな気がするんだよな」
暗闇、夜、薄暗い程度でも、怖い時は怖い。
誘拐事件を受けて防犯のためと整備され、あの頃の面影なんか綺麗さっぱり消え去ったこの公園だって、まだ少し怖い。
怖いけど、怖いヤツはもう居ない。確かめるために、毎日公園へ足を運ぶ。
そんな俺に、燐音はいつも付き添ってくれて。
「燐音に大丈夫って言ってもらえると、全部が怖くなくなる」
ひらひらふわふわの服がトラウマになって、服そのものも着られなくなりかけたのに。
「ぴったりするヤツ、伸縮性のあるヤツ着てみたらって燐音が言ってくれたから、服も着られるようになった」
今も伸縮性のヤツを中に着てるから、制服も普通に着られるし。
「睨みつけるカオになった俺のこと、燐音は避けないでくれた」
可愛いから目をつけられて誘拐された。自分の見た目を呪いたくなっていたら、いつの間にか『悪人面』が出来上がり、剥がせなくなった。
「そんな俺と、ずっと一緒に居てくれて、俺はずっと救われてるよ」
「……ありがとだけど……泳ぐの……泳いでるなおちゃん、カッコいいけど……好きだけど……」
胸に顔を押し付けたまま遠慮がちに言われ、「あー、やっぱ分かってたか」と苦笑した。
「まあ、最初の動機は、な」
体を鍛えたら『可愛い』から遠ざかるかと、筋トレを始めて色んなスポーツにも手を出した。一番性に合った──精神的に楽だったのがスイミング、水泳だった。
常に水の中に居る、何も身に着けていないような、けれど肌に何かしら触れている状態だから、精神的に楽だという動機。泳げば泳ぐほど、拭い去れない記憶を忘れられる。
「でも、今はさ」
髪を梳くようにゆっくり撫でていた燐音の頭を、ぽんぽんと軽く撫でる。
「お前のおかげで、純粋に競技として取り組めるようにもなったんだよ」
燐音がまっすぐ応援してくれるのが嬉しくて、記録更新、大会出場、真正面から向き合い始め、ライバルみたいな仲間もできた。
「全部が燐音のおかげだよ。俺は燐音にずっと助けてもらって、ずっと救われてる。分かってくれたか?」
「ありがとだけど、嬉しいけども」
なぜか、不貞腐れたような声になった燐音が、
「わたしをずっと助けてくれて、今も助けてくれてるのは、カッコ良すぎるなおちゃんです」
よく分からないことを言ってきた。
「えーと? ありがたいけど……悪い、なに? どれのなんだ?」
些細なあれこれは思い浮かぶけれど、些細すぎて燐音には遠く及ばない気がする。
「なおちゃんのおかげでカオ動くし、喋れるんです。なおちゃんのおかげで歌えるから、歌えるってわかったからです」
「……あー……燐音? えっと……」
何をどう聞けばいいのかと迷う俺を見上げるように、燐音が顔を上げた。
なんか、怒ってるような。
「なおちゃんが作ってくれた歌で、わたしは喋れなくても歌えるってわかりました」
「あ、あぁ、それ……」
話せなくても、読み書きや身振り手振り、手話などでも意思疎通を。
無理に喋らせないようにと、周囲は燐音へ気を遣った。
俺も気をつけたけど、燐音本人は喋りたがっていた。喋る代わりに歌ってみたらどうか、歌うって言ってもハミングとか、そういう感じの。
燐音と周囲に確認を取ってから、楽しく気軽に遊び感覚でやってみようと、燐音が好きそうなメロディーを短く作った。既存の曲だと、全力を出しがちな燐音がミスった時、燐音の重荷になる。
身近な素人が遊び感覚で作ったオリジナルのほうが気楽に歌えるかなと、本当にメロディーだけで歌詞も何も無い、短い曲を作った。
燐音がとても楽しそうに歌ってくれて、俺も周囲も、泣きそうなほど嬉しかった。
「園にあったピアノで作ったあれだろ? あれは、良かったっていうか、燐音が楽しそうで良かったから、俺も嬉しかったよ」
不満そうに見上げてくる燐音の頭を撫でたら、
「最初は、それだけど」
もっと不満そうになって、
「それからも『なおちゃん』はずっと作ってくれてた。なおちゃんが『くじら』さんになってからも、ずっと作ってくれてた」
「……うん、はい」
可愛く訴えられたこともだが、やっぱりバレてたかという気持ちもあり、素直に首を縦に振る。
うん、お前が毎朝練習してた曲を作った『くじら』は俺だよ。嬉しかったよ、お前が『くじら』の曲をよく聴いてるとか、それをよく歌うとか言ってくれてさ。
毎日新曲を頼まれるのも嬉しくて、燐音へ毎日新曲を作った。メロディーだけでなく、歌詞も頼まれた。そうして一ヶ月もなく、既存の曲、流行りの曲も気軽に歌えるようになった燐音は、喋れるようにもなってきた。感情も無理せず表へ出せる、気づけば出ているくらいまで、燐音は毎日楽しそうだった。
小学校でのお化け屋敷の件で女子グループに呼び出された時も、燐音のために早く家に帰って曲を作りたかったから、素直に応じたんだけど……まあ。
小学校の三年生に上がった頃、なんだかワクワクしている燐音に尋ねられた。
『なおちゃんの曲ね、どっかに上げたりしない?』
色んな人に、なおちゃんの曲、知ってほしいし聴いてほしいし。
わたしみたいな誰かさんが歌えたりしたら、わたしは嬉しいんだけど、なおちゃんはどう?
断る理由はなかったけど、燐音のために作った曲は燐音のだし。そのままSNSとか動画サイトとかに上げるのは、なんか違う気がするんだよな。
考えを伝えたら、燐音が少ししょんぼりしてしまい、慌てて付け加えた。
『いや、まあ、考えるよ。けど、燐音の曲は燐音の曲だから……それ用に新しく作る』
そこまで言ってから、燐音が少しでも楽しめるかもと、また付け加えた。
『俺だってわかんないようにアップするから、暇な時にでも探してくれよ』
嬉しそうな燐音が全力で探す前にと、防犯も兼ねて持ち込みを許可されていたスマホで、昼休み時間に最低限のことを済ませた。
いつも作るのと似ているけど違う雰囲気の曲を二つ作り、アカウントを作り、即座にアップした。
名前はいつでも変えられるからと、サメ、海の生き物、くじら、と連想で頭に浮かんだ名前にした。
曲はテキトーでなく、結構本気で作った。燐音のために作る曲も燐音のためと本気だったし、不特定多数が数秒でも耳にするならテキトーに作るのは失礼な気がした。
なにより、燐音に探し出してもらう目的がある。本当に探すかは置いといて、見つけ出した時にがっかりさせる曲を載せたくない。
泳ぐのは自分のため、曲を作るのは燐音のため。
くじらとして活動しても、半分以上は燐音のため。
そんな動機で『くじら』として細々と活動していた俺は、曲を上げるたびフォロワーや登録者が少しずつ増えていき、有り難く思いながら日常を過ごしていただけだった。
三月にトレンド入りした曲も、有り難いけど有り難いで終わった。
有名な歌い手さんに歌ってもらったことも、そのおかげで曲がまたトレンドになったことも、有り難かったけど。
嬉しそうな燐音から、その曲を好きな人へ歌いたい、よく聴いてるくじらさんのと言われた時。
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