ハナとイグル ~人間に興味があるとかいう精霊様に何故かなつかれてしまったようです~

山法師

文字の大きさ
10 / 51
リベスの街

精霊様に遊ばれる

しおりを挟む
 俺はとんでもないものを見ちまったのかも知れない。
 そう言ったら、親父は持っていたジョッキを置いて俺の背中を叩いた。

「フレッド。あの二人が悪党にでも見えるってのか?」
「いや、そうは言ってないけどよ。あの、ハナちゃんの取引は……ただの娘には出来ねえよ」


『変な出所のものじゃないですってば。そりゃこんなに綺麗な形の結晶は貴重だって分かりますけど』
『それが分かってんなら余計危ないだろが。嬢ちゃん、ウチは危なそうなもんは扱わないんだ』

『危なくないのに……こんなに綺麗な三六面で鮮やかな柘榴石、滅多にないですよ? 水晶だって透明度高い上、草入くさいりですよ? このまま台にはめるだけで十分売れますよ?』

『なんでそんなこと分かんだよ。宝石商に行けばいいだろ』
『そんなとこツテがなきゃ無理じゃないですかー。…………では、店主さん』

『なんだ』

『その後ろのオルゴール、とても古いものってさっき言ってましたけど』
『ああ、二百年は前の骨董品だ。精霊様に好かれた職人が手掛けたっつうもんで、今でも動いてんだよ』

『多分、偽物です』

『……なんで分かる?』

『装飾部分の曇りや傷はパーツ毎にわざと細かくつけてますし、均一過ぎます。木も、ただの艶の所と傷とか欠けとかの中の艶がどこも同じようですし。あとはまあ、二百年前にしては装飾がちょっと、近代に寄ってるといいますか』

『……』

『中の機械部分も、そんな感じじゃありません?』
『ちょっと待っててくれ』


『……おい、ハナちゃん。もの持って引っ込んじゃったじゃないか。どうするんだ』
『うーん……ここ、良い物も多くあるので気になってしまって』

『そもそもそんな知識をどこで』
『……嬢ちゃん、どうやらその通りのようだ。俺はお涙話に騙されてたみたいだな』

『合ってました? 良かったです』
『本当か? ジョシュ』

『ああ。俺もまだまだだな。贋作掴まされたなんて、親父にどやされるよ。で、だ』

『何だよ』
『お前じゃねえよ。嬢ちゃん、今の代わりに石を買い取れってことか?』
『少しそんな気持ちもありました!』

『はあ、若いクセに世渡りが上手いな。分かった、一つなら良い』
『えー……一つ見つけたら一つですか?』

『は?』

『ならあと三つ見つければ全部買ってくれます?』
『はあ? おい待て、ウチにまだ偽物があるって?!』

『二つは見つけてるんですけど……』

『はあ?! おい待てそりゃ親父の仕入れのやつだ! フレッド! 一旦嬢ちゃん外出せ!』


「あっはっはっは! ジョシュに追い出された訳か!」
「そのあと呼び戻されて全部確認してたよ。親父さんまで出てきて」
「ジョニーもか! そりゃ凄い! ……で、大丈夫だったのか?」

 エールを一口飲み、親父が声を低める。

「大丈夫も何も、きっちり換金したあとに働かないかって言われてたよ」
「あっはっはっはっは!」

 聞いた話だから笑えるんだよ。その場にいた俺の身になってみろ。

「いやあ面白い。ところでな、俺も面白い話がある」

 親父はにやりとして、もったいぶってから口を開いた。

「お前たちが行ったあとでな、あのキラキラしいにいちゃんから言われたんだよ」

『最近草ばっかりで飽きたって。前に食べた大粒のベリーのジャム? が食べたいってチェシーが言ってたよ』

「…………どういうこった」
「そのまんまだろ。チェシーもグルメになったってことだ」
「いや、だってチェシーは馬だろ。なんで言ってることが分かるんだ」

 ベリーのジャムをやったのは前の冬に入ったばかりの頃だ。エリンが直接やりたがって、俺がエリンを持ち上げて少しだけ舐めさせた。
 そんな話、移動中はしてないぞ。

「当てずっぽうだと思うか?」
「…………いや……」

 エールを飲んでも、さっぱり酔えてる気がしない。

「あの二人は不思議な存在だが、悪い子らじゃない。俺の勘だが確信してる。それにな、人生何度か、精霊様に遊ばれるようなこともあるってもんだ」

 親父はまた、俺の背中を叩いた。そろそろ痛い。

「何度かってことは、親父は前にもそういうことがあったのか?」
「いや、これが初めてだ」
「なんなんだよ」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...