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ヴリコードの街

手を伸ばすもの、守るもの

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 周り。イグル様は、視線を落としたまま。
 私たちのことを言って……る訳では、無さそう……。

「……そうだねぇ。だからこの商売が出来てるんだよ」

 静かに答えるアリス婆。

「そう」

 イグル様の瞳は、私には何を意味するのか分からない石や種を映してる。

「……それじゃ、何かそれっぽいことでも言っとくかね」

 ぽいて。

「アリス婆……」
「ぽいと言っても、ちゃんとしたモンだよ。ただお喋りするだけじゃあ、お金は頂けないからね」

 アリス婆は、撒いた石たちを覗き込むように背を丸める。

「聞き方も変えよう。あんたじゃなく、あんたと周り……」

 言って、アリス婆は動きを止めた。少しして、顔を上げる。

「……ああ、だから。ハナの行方が見えなかったんだ」

 はい?

「縁が見えるって自分で言ったのにねぇ。どうも、頭が鈍ったかね」
「え、何? アリス婆、なんで私の話?」
「ボケてはないと思うけどねぇ」

 にっこり笑って、いや聞いて?

「ハナ、イグルさん」

 その目が急に細くなって。

「二人に、何かが手を伸ばしてる。あたしにゃあどうも、恐ろしくも思えるが」
「は」
「?」
「はあ?!」

 私たちのリアクションを流し、アリス婆は言葉を続ける。

「けれど、守られてもいる。現にハナ、あんたは助かった」

 助かった……て、あの人攫いからの?

「ただの、人攫いじゃ……なかったの?」
「分からない。……その何かが、分かれば良いんだが」

 また、石たちを覗き込む。

「……無理かねぇ」
「怯えちゃってるね」

 怯え。石が? ……精霊様のお力で、それが分かる? あれ、でも。
 なら、アリス婆の占いは?

「……ま、直近のことならなんともなさそうだ」

 アリス婆が、ゆったりと顔を上げる。服に縫いつけられた石達が、ランタンの光に反射して煌めいた。

「イグルさんや。今日これから、白くて丸いものには気をつけな」

 白くて丸い?

「それさえ退けりゃ、今日は楽しい一日さ」

 イグル様が首を傾げ、アリス婆がにやりと笑う。

「ま、刺激が欲しけりゃそれでも良いがね。死にゃあしない」

 死にはしない……って。

「なんかすげぇ危なそうだけど?!」
「私もそう思う! えっ詳しく!」

 あれっ答えてくれない!

「それ含めて楽しめってこと?」

 イグル様?!

「ふっふ、アンタ、見かけより頭が回るねぇ?」
「そう?」


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