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本編
18 なんとも言い難い
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「前、あの時……てつさんに少し似た方の話をしたでしょう? またそれとは別に……今、このてつさん達に似たものをあたしは知っている」
「えっ?!」
「本当か」
「?!」
その言葉に、私達だけじゃなく海江田さんも驚いたように身体を揺らした。
おお、別方向からまたてつのヒントが?
「けれど……それは、」
「鈴音さん、待ってくれ」
「え?」
何で止めるの海江田さん!
「その話……副支部長、せめて遠野がいる所で話してくれ」
「……ああ、そういう」
えっ何でそれで鈴音さんも納得するの? 副支部長と遠野さんがどう関係……あ、上司だがら?
「俺は今聞きてえがなぁ?」
てつが私の肩を人差し指でとん、と軽く叩いた。
「ごめんなさいねぇ、今あたし達は保護……だかをされてるから。主に近いひとの言葉を聞くよ」
「……そおかい」
てつもその言葉に納得……はしてなさそうだけど、引いた。
そこで話も終わったようで、私達はまた庭からぐるりと回って帰る事になった、のだが。
「さっきはすみませんでした! またこっちにいらっしゃる事ありますか?」
美緒さんだけじゃなく華珠貴さんも一緒である。
何故に? 見送りにしては近いよ? 腕を組むほどだよ。
「どうなんでしょう……海江田さん」
「あーあんま無いかもなー……でも遠野に言えば何かしら出来るかも知れないが……」
「なるほど! 遠野という方に言えば、また杏さんとてつさんに会えるんですね! 分かりました!」
これ後で遠野さんに特攻かけたりしないだろか、なんて考えが頭をよぎる。
美緒さんも後ろ、私達を気にしながら前を歩いている。またやり過ぎと判断したら、首根っこを掴むんだろうか。
「お前あんま近寄るなよ……俺の気に当てられて傷が疼いたらどうすんだ」
「お気遣いありがとうございます! それで強くなれたりしますかね?」
「耐えられればな……」
「なるほど耐えます!」
……なんかてつの声疲れてない?
結局あの門まで一緒に歩いて、華珠貴さんの質問責めになる前に脱出。
「海江田さん。色々、ありがとうございました」
「ん?」
「鈴音さん達に会うの、本当ならあまり良くない事なんですよね? でも、会わせてくれたから」
時々渋い顔をしていたり、鈴音さんの話を止めたのもそういう事があるからだろう。今になって、そんな考えが浮かんでくる。
「気付いてたか……いやあ俺もまだまだだな……」
頭をかいて、はにかみながらそう言って。
「どういたしましてだが、気にすんな! これは俺の判断によるものだからな」
「はい、分かりました」
……いい感じにまとまった、のかな。
「で、俺らはいつ帰って良いんだ?」
「!」
……そうだった……! 家の事とか、頭からすっぽり抜け落ちていた。
「ああ、それなんだが……榊原達、あそこから直で連れてかれたろう? だからそのまま家に帰した方が不審がられないだろうってな」
「そのまま家に……?」
私自身、寝間着に男物のジャケットとサンダルという格好なので、人目に触れないで行けるのは有り難い。
「ああ。あ、鍵とかは大丈夫だぞ。室内に通すから。プライバシーの関係で、その道もすぐ破棄するしな」
「それはまた……凄いですね……」
前に、伊里院さんと行った時と同じ技術を使うんだろう。
「じゃあさくっと帰るか! 遠野には俺が伝えておけるしな」
「ありがとうございます。お願いします」
帰れると分かったからか、どっと疲れが押し寄せてきた。急に重たくなる瞼をなんとか開きながら、私は海江田さんにそう言った。
「ねえ、君の名前だけど」
「あん?」
風がそよぎ、草がさざめく。ここの所雨続きだったもんだから、周りの草木は青々としている。
「前聞いたら特にないって言ってたじゃない? それでちょっと、考えてきたんだよね」
俺の隣に座り込み、つらつらと流れて来る声に自然と意識が向く。
「君の瞳の色、緑がかった深い青だろう? 前に読んだ本でね、そういう色を『藍鉄色』って言うんだって知ってさ」
「あいてつ……?」
「そう、藍鉄。趣があると思わないかい? 僕は良いと思ったんだけど」
お前はいつも勝手に話を進めるな。
日差しが心地良くて、微睡みながら俺はそう思った。
「あー……まあ……」
「鉄は鉄でも『鉄錆野郎』とかとは全然違うでしょ?」
周りは俺をそう呼んでたりする。血塗れとか赤黒とも呼ばれる。
「どうかな? 『藍鉄』?」
寝っ転がってる上に被さってくるな。久し振りの青空が拝めねえ。
「……まあ、良いんじゃねえか?」
「だよね!」
……藍鉄。
「あっ思ったより気に入ってくれたのかな?」
「うるせえ」
「という夢を見ました」
「だから何だよ」
あれから、支部のドアと家のクローゼットのドアを繋いで貰って帰りました。疲労のせいでほぼそのままベッドへ直行しました。そして今しがた起きました。
……何故なんだろう、なんとも言い難い気分です。
「てつ、藍鉄っていう名前なの?」
「その辺は良く思い出せねぇな」
てつは寝ている間にお腹に戻ったらしい。紐も消えたんだしわざわざ戻らなくても、と思ったが「居心地が良い」んだそうだ。それで押し切られる自分もどうかと思う。
あの夢はただの夢じゃない。感覚からして、てつが取り戻した自身の記憶に、私が同調したものだ。これからはそういう類の夢を良く視るだろうと、岩尾先生にも言われていた。
「その名前を付けたあの人は誰かも分かんない? なんか、重要な手掛かりになりそうだと思うんだけど」
そう、人。てつと話していたのは人だった。輪郭はぼやけていたけれど、夢の中のてつの感覚が「こいつは人だ」と語っていた。
異界でも、人はてつ達──いわゆるこちらで言う妖怪みたいなものじゃなく、私などこちらの人間と同じような存在だそうで。そんな『人』と一緒にいるなんて、結構珍しいんじゃないだろうか。
「名前をなぁ……杏が視たんだから、俺もそのうち思い出すかも知れんけどなぁ……」
てつは唸るように言う。まだちゃんと記憶として思い出せてはいないらしい。
「そっか……一応、報告はしとくね」
こういう夢を視たり、同調があったりしたら出来るだけ速やかに報告すべし、とも言われている。てつの正体のヒントになったり、私達の同一化についても傾向が分かるからだそう。
私はメールで、遠野さんに夢の事を報告した。業務用のスマホには、ラインは入っていなかった。
「まあ、じゃあ、支度をして大学行きますか……てつー」
「おうよ」
ずるりと口から出てくる腕、今は人の腕のような見た目だ。それを見ても、やはりというか嫌悪感はあまり無い。これも同一化のせいかと思うと少し憂鬱に……
「ならない! 私は私!」
「はっ?」
危うく考えすぎる所だった。私はその専門家じゃないし、気を付ける事もちゃんと言われてる。悩んでもどうしようもない事では悩まないようにしないと。私は私に出来る事を、出来る範囲でやるだけだ。
「じゃ、シャワー浴びてくる」
「お、おう……」
てつを置いて風呂場へ向かう。
こういう時、口の紐が無くなったのは、精神的に有り難いな。
自身を取り込んだてつについて、
・獣人型である、また人型と獣両方に変化出来る可能性有。
・明確な出生、現在の分散もしくは分裂についての確定的な情報は無し。
・本来は肉食もしくは雑食と推測される。
・体長は二メートルから五メートルほど、大きさを変えられる可能性有。
・性格に変化は見られず、自身を取り込んだ事による凶暴化なども見られない事から自我を保つ力は強いと推測される。
・ものを避ける、弾くなどの能力は見られるが、他目立った術などは現状確認出来ず。
他にも色々推測やら可能性やらが出て来たらしい。
これらはてつが思い出した事柄と、私が引っ張られた時に視た夢と、同一化による変化を合わせて出されたもの。特に同一化による変化は、どこまでが変化でどこからが潜在能力の発揮なのかの判別が難しいという。
色々と説明された事を思い出しながらシャワーを浴びる。新たに分かった事もあるけれど、さっきの夢も含め、まだまだ謎も多い。そんな事を考えながら支度を終えて部屋に戻ると、思わず顔をしかめた。
「そうだった……美緒さん達にしっちゃかめっちゃかにされたのを元に戻せてない……」
「あん?」
昨日、じゃなく今日の、美緒さん達の雪崩れ込みのせいで部屋は嵐の後のようになっている。かろうじて、壊れているものはなさそうだ。けど、棚の物は落ちてるわ、引き出しも開いて中の物が出てるわ、周りは猫の毛だらけだわと。
「これ片付けたらまたシャワーだ……」
「なんだ、また湯浴みすんのか?」
寝るために物をどかし、比較的綺麗になっているベッドの上で、てつがそんな風に言った。
「えっ?!」
「本当か」
「?!」
その言葉に、私達だけじゃなく海江田さんも驚いたように身体を揺らした。
おお、別方向からまたてつのヒントが?
「けれど……それは、」
「鈴音さん、待ってくれ」
「え?」
何で止めるの海江田さん!
「その話……副支部長、せめて遠野がいる所で話してくれ」
「……ああ、そういう」
えっ何でそれで鈴音さんも納得するの? 副支部長と遠野さんがどう関係……あ、上司だがら?
「俺は今聞きてえがなぁ?」
てつが私の肩を人差し指でとん、と軽く叩いた。
「ごめんなさいねぇ、今あたし達は保護……だかをされてるから。主に近いひとの言葉を聞くよ」
「……そおかい」
てつもその言葉に納得……はしてなさそうだけど、引いた。
そこで話も終わったようで、私達はまた庭からぐるりと回って帰る事になった、のだが。
「さっきはすみませんでした! またこっちにいらっしゃる事ありますか?」
美緒さんだけじゃなく華珠貴さんも一緒である。
何故に? 見送りにしては近いよ? 腕を組むほどだよ。
「どうなんでしょう……海江田さん」
「あーあんま無いかもなー……でも遠野に言えば何かしら出来るかも知れないが……」
「なるほど! 遠野という方に言えば、また杏さんとてつさんに会えるんですね! 分かりました!」
これ後で遠野さんに特攻かけたりしないだろか、なんて考えが頭をよぎる。
美緒さんも後ろ、私達を気にしながら前を歩いている。またやり過ぎと判断したら、首根っこを掴むんだろうか。
「お前あんま近寄るなよ……俺の気に当てられて傷が疼いたらどうすんだ」
「お気遣いありがとうございます! それで強くなれたりしますかね?」
「耐えられればな……」
「なるほど耐えます!」
……なんかてつの声疲れてない?
結局あの門まで一緒に歩いて、華珠貴さんの質問責めになる前に脱出。
「海江田さん。色々、ありがとうございました」
「ん?」
「鈴音さん達に会うの、本当ならあまり良くない事なんですよね? でも、会わせてくれたから」
時々渋い顔をしていたり、鈴音さんの話を止めたのもそういう事があるからだろう。今になって、そんな考えが浮かんでくる。
「気付いてたか……いやあ俺もまだまだだな……」
頭をかいて、はにかみながらそう言って。
「どういたしましてだが、気にすんな! これは俺の判断によるものだからな」
「はい、分かりました」
……いい感じにまとまった、のかな。
「で、俺らはいつ帰って良いんだ?」
「!」
……そうだった……! 家の事とか、頭からすっぽり抜け落ちていた。
「ああ、それなんだが……榊原達、あそこから直で連れてかれたろう? だからそのまま家に帰した方が不審がられないだろうってな」
「そのまま家に……?」
私自身、寝間着に男物のジャケットとサンダルという格好なので、人目に触れないで行けるのは有り難い。
「ああ。あ、鍵とかは大丈夫だぞ。室内に通すから。プライバシーの関係で、その道もすぐ破棄するしな」
「それはまた……凄いですね……」
前に、伊里院さんと行った時と同じ技術を使うんだろう。
「じゃあさくっと帰るか! 遠野には俺が伝えておけるしな」
「ありがとうございます。お願いします」
帰れると分かったからか、どっと疲れが押し寄せてきた。急に重たくなる瞼をなんとか開きながら、私は海江田さんにそう言った。
「ねえ、君の名前だけど」
「あん?」
風がそよぎ、草がさざめく。ここの所雨続きだったもんだから、周りの草木は青々としている。
「前聞いたら特にないって言ってたじゃない? それでちょっと、考えてきたんだよね」
俺の隣に座り込み、つらつらと流れて来る声に自然と意識が向く。
「君の瞳の色、緑がかった深い青だろう? 前に読んだ本でね、そういう色を『藍鉄色』って言うんだって知ってさ」
「あいてつ……?」
「そう、藍鉄。趣があると思わないかい? 僕は良いと思ったんだけど」
お前はいつも勝手に話を進めるな。
日差しが心地良くて、微睡みながら俺はそう思った。
「あー……まあ……」
「鉄は鉄でも『鉄錆野郎』とかとは全然違うでしょ?」
周りは俺をそう呼んでたりする。血塗れとか赤黒とも呼ばれる。
「どうかな? 『藍鉄』?」
寝っ転がってる上に被さってくるな。久し振りの青空が拝めねえ。
「……まあ、良いんじゃねえか?」
「だよね!」
……藍鉄。
「あっ思ったより気に入ってくれたのかな?」
「うるせえ」
「という夢を見ました」
「だから何だよ」
あれから、支部のドアと家のクローゼットのドアを繋いで貰って帰りました。疲労のせいでほぼそのままベッドへ直行しました。そして今しがた起きました。
……何故なんだろう、なんとも言い難い気分です。
「てつ、藍鉄っていう名前なの?」
「その辺は良く思い出せねぇな」
てつは寝ている間にお腹に戻ったらしい。紐も消えたんだしわざわざ戻らなくても、と思ったが「居心地が良い」んだそうだ。それで押し切られる自分もどうかと思う。
あの夢はただの夢じゃない。感覚からして、てつが取り戻した自身の記憶に、私が同調したものだ。これからはそういう類の夢を良く視るだろうと、岩尾先生にも言われていた。
「その名前を付けたあの人は誰かも分かんない? なんか、重要な手掛かりになりそうだと思うんだけど」
そう、人。てつと話していたのは人だった。輪郭はぼやけていたけれど、夢の中のてつの感覚が「こいつは人だ」と語っていた。
異界でも、人はてつ達──いわゆるこちらで言う妖怪みたいなものじゃなく、私などこちらの人間と同じような存在だそうで。そんな『人』と一緒にいるなんて、結構珍しいんじゃないだろうか。
「名前をなぁ……杏が視たんだから、俺もそのうち思い出すかも知れんけどなぁ……」
てつは唸るように言う。まだちゃんと記憶として思い出せてはいないらしい。
「そっか……一応、報告はしとくね」
こういう夢を視たり、同調があったりしたら出来るだけ速やかに報告すべし、とも言われている。てつの正体のヒントになったり、私達の同一化についても傾向が分かるからだそう。
私はメールで、遠野さんに夢の事を報告した。業務用のスマホには、ラインは入っていなかった。
「まあ、じゃあ、支度をして大学行きますか……てつー」
「おうよ」
ずるりと口から出てくる腕、今は人の腕のような見た目だ。それを見ても、やはりというか嫌悪感はあまり無い。これも同一化のせいかと思うと少し憂鬱に……
「ならない! 私は私!」
「はっ?」
危うく考えすぎる所だった。私はその専門家じゃないし、気を付ける事もちゃんと言われてる。悩んでもどうしようもない事では悩まないようにしないと。私は私に出来る事を、出来る範囲でやるだけだ。
「じゃ、シャワー浴びてくる」
「お、おう……」
てつを置いて風呂場へ向かう。
こういう時、口の紐が無くなったのは、精神的に有り難いな。
自身を取り込んだてつについて、
・獣人型である、また人型と獣両方に変化出来る可能性有。
・明確な出生、現在の分散もしくは分裂についての確定的な情報は無し。
・本来は肉食もしくは雑食と推測される。
・体長は二メートルから五メートルほど、大きさを変えられる可能性有。
・性格に変化は見られず、自身を取り込んだ事による凶暴化なども見られない事から自我を保つ力は強いと推測される。
・ものを避ける、弾くなどの能力は見られるが、他目立った術などは現状確認出来ず。
他にも色々推測やら可能性やらが出て来たらしい。
これらはてつが思い出した事柄と、私が引っ張られた時に視た夢と、同一化による変化を合わせて出されたもの。特に同一化による変化は、どこまでが変化でどこからが潜在能力の発揮なのかの判別が難しいという。
色々と説明された事を思い出しながらシャワーを浴びる。新たに分かった事もあるけれど、さっきの夢も含め、まだまだ謎も多い。そんな事を考えながら支度を終えて部屋に戻ると、思わず顔をしかめた。
「そうだった……美緒さん達にしっちゃかめっちゃかにされたのを元に戻せてない……」
「あん?」
昨日、じゃなく今日の、美緒さん達の雪崩れ込みのせいで部屋は嵐の後のようになっている。かろうじて、壊れているものはなさそうだ。けど、棚の物は落ちてるわ、引き出しも開いて中の物が出てるわ、周りは猫の毛だらけだわと。
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