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第8話 鏡の中の二人
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アイルが目を覚ましたとき、リリィは鏡台の前に座り髪を解いていた。乱れた髪は二人の激しさを物語っていた。長い髪の毛に櫛を入れ、梳いている様をベッドから眺めながら、アイルは二人の過去に思いをはせた。
リリィとの出逢いは偶然の賜物だった。
旅の途中、小便がしたくなったアイルは森の中に駆け込んだ。
「もう、早く済ませなさいよー!」
「あまり遠くへいかないように!」
「ウンコか!? ウンコか!?」
「うるっせえっっ!!」
チキ、リック、イッチに笑われ見送られ、アイルは適当な場所までいって小便を足したのだが、足し終わるといつのまにか周りを魔物たちに取り囲まれていることに気がついた。
「俺の小便に寄って集ってくるなんて、お前ら変態か」
用を足し終えたアイルは、襲いくる魔物たちの群れを大剣で薙ぎ払い事なきを得たが、妙な違和感があった。
「こいつら、やけに固かったな。何でだ……?」
場所的にも強敵が現れるはずがなく、魔物たちの種類もせいぜい並程度だった。
アイルは、敵の残骸からある推測を下した。
「魔物たちの目の色が戦闘中と違っている……俺の剣を喰らっても、ひるまず突っ込んでくるなんて、やっぱりおかしい……この森が何か影響しているのか……しかしそれなら、魔力感知に長けたチキやリックが早くから気づくんじゃないか……となると残るは……魔物たちを操る者が潜んでいる……」
アイルは、もう少し森の奥を探索してみることにした。
そして、塔を見つけていた。
「……あら? 起きてたの?」
鏡の中のリリィが、ベッドの上のアイルを見つめている。
「いま、お前と出逢ったときのことを思い出していた」
「素敵な思い出? それとも、不幸な思い出かしら?」
アイルはベッドから立ち上がると、リリィの背後に立った。
「お前はどう思ってる?」
「素敵な思い出に決まってるじゃない。勇者様に出逢えたのよ」
「あのときはまだ、厳密には勇者ではなかった。見做し勇者だった」
「そうね。でもあなたなら……本当の勇者になれると思ったの。わたしの夫を殺してね」
鏡の中の二人が笑みを浮かべる。
「出逢ったときのお前は、まさに飼い犬だった。魔王に飼われている雌犬。塔の天辺に幽閉され、魔王の慰み物にされるだけの存在……」
「あの人はアレが小さくて、セックスも下手くそだった。満たされず、飢えるだけの毎日。地獄だった。でも……」
リリィが振り返り、アイルと口づけを交わす。
「…………あなたに助けられて、わたしの運命は変わった」
「俺の運命は、お前のおかげで大きく狂わされた」
「後悔してる?」
「んなわけないだろ……」
リリィの胸をまさぐり、首筋にキスするアイル。
「悪女だよ、お前は。勇者を誘惑し、魔王を殺す手引きをした。おかげで勇者は、魔王を楽に倒すことができた」
「そしてわたしは勇者様を手に入れた。お互い様よね?」
さらに抱こうとするアイルの腕を、リリィは笑って拒む。
「ほんと、旺盛だこと。わたしお腹空いちゃったの。何か食べましょうよ」
「食べ物ならここにあるじゃないか……たわわに実った二つの果実が……」
「駄目よアイル。せっかく解いたのに御髪が乱れちゃう。ねぇ、森の外に出ましょうよ。ね?」
リリィの提案に、アイルは少し考えた。
「出るのはいいが、誰かに見られるかもしれないぞ? どうする?」
「見られたらまずいの?」
「当たり前だろう。それでなくても噂好きな連中が多いんだ。勇者の隣に見知らぬ女がいたら、格好のネタになる」
「じゃあ……奥様ってことで。どう?」
リリィの手が、アイルの腕を撫で回した。
「まだだ。そのためにやることが残ってる」
「例えば?」
アイルはリリィから目を逸らせた。
「いわせるなよ」
「お仲間を裏切るのは、さぞ心苦しいでしょうね?」
アイルは、リリィに目を合わせる。
「苦しい。考えるだけでも」
「でも、あなたはやるしかない。わたしとの約束だし、あなたは勇者様だから何でもできるわ」
深いため息を吐くアイル。
「そうだ。やるしかない。俺は苦しいが……せめてあいつらは、苦しめたくないな……」
「あぁ、あなたのそういう顔、大好き……」
リリィが腕を引き、アイルがそれに応えていた。
鏡の中の二人は体をぶつけ合っていた。リリィは髪が乱れるのも構わず反り身になりながらアイルの頬を抱いていた。
「もっと……! もっと、愛して……!」
鏡台がガタガタ音を鳴らして揺れ動く。化粧の小瓶が倒れ、中身がこぼれて床に落ちた。真っ青な色の液体が徐々に広がっていく。
「イくっ! イくっ! イくっ……!」
アイルの体が小刻みに震え、リリィの吐く息と二人の体の火照りとで、鏡は曇っていた。
リリィとの出逢いは偶然の賜物だった。
旅の途中、小便がしたくなったアイルは森の中に駆け込んだ。
「もう、早く済ませなさいよー!」
「あまり遠くへいかないように!」
「ウンコか!? ウンコか!?」
「うるっせえっっ!!」
チキ、リック、イッチに笑われ見送られ、アイルは適当な場所までいって小便を足したのだが、足し終わるといつのまにか周りを魔物たちに取り囲まれていることに気がついた。
「俺の小便に寄って集ってくるなんて、お前ら変態か」
用を足し終えたアイルは、襲いくる魔物たちの群れを大剣で薙ぎ払い事なきを得たが、妙な違和感があった。
「こいつら、やけに固かったな。何でだ……?」
場所的にも強敵が現れるはずがなく、魔物たちの種類もせいぜい並程度だった。
アイルは、敵の残骸からある推測を下した。
「魔物たちの目の色が戦闘中と違っている……俺の剣を喰らっても、ひるまず突っ込んでくるなんて、やっぱりおかしい……この森が何か影響しているのか……しかしそれなら、魔力感知に長けたチキやリックが早くから気づくんじゃないか……となると残るは……魔物たちを操る者が潜んでいる……」
アイルは、もう少し森の奥を探索してみることにした。
そして、塔を見つけていた。
「……あら? 起きてたの?」
鏡の中のリリィが、ベッドの上のアイルを見つめている。
「いま、お前と出逢ったときのことを思い出していた」
「素敵な思い出? それとも、不幸な思い出かしら?」
アイルはベッドから立ち上がると、リリィの背後に立った。
「お前はどう思ってる?」
「素敵な思い出に決まってるじゃない。勇者様に出逢えたのよ」
「あのときはまだ、厳密には勇者ではなかった。見做し勇者だった」
「そうね。でもあなたなら……本当の勇者になれると思ったの。わたしの夫を殺してね」
鏡の中の二人が笑みを浮かべる。
「出逢ったときのお前は、まさに飼い犬だった。魔王に飼われている雌犬。塔の天辺に幽閉され、魔王の慰み物にされるだけの存在……」
「あの人はアレが小さくて、セックスも下手くそだった。満たされず、飢えるだけの毎日。地獄だった。でも……」
リリィが振り返り、アイルと口づけを交わす。
「…………あなたに助けられて、わたしの運命は変わった」
「俺の運命は、お前のおかげで大きく狂わされた」
「後悔してる?」
「んなわけないだろ……」
リリィの胸をまさぐり、首筋にキスするアイル。
「悪女だよ、お前は。勇者を誘惑し、魔王を殺す手引きをした。おかげで勇者は、魔王を楽に倒すことができた」
「そしてわたしは勇者様を手に入れた。お互い様よね?」
さらに抱こうとするアイルの腕を、リリィは笑って拒む。
「ほんと、旺盛だこと。わたしお腹空いちゃったの。何か食べましょうよ」
「食べ物ならここにあるじゃないか……たわわに実った二つの果実が……」
「駄目よアイル。せっかく解いたのに御髪が乱れちゃう。ねぇ、森の外に出ましょうよ。ね?」
リリィの提案に、アイルは少し考えた。
「出るのはいいが、誰かに見られるかもしれないぞ? どうする?」
「見られたらまずいの?」
「当たり前だろう。それでなくても噂好きな連中が多いんだ。勇者の隣に見知らぬ女がいたら、格好のネタになる」
「じゃあ……奥様ってことで。どう?」
リリィの手が、アイルの腕を撫で回した。
「まだだ。そのためにやることが残ってる」
「例えば?」
アイルはリリィから目を逸らせた。
「いわせるなよ」
「お仲間を裏切るのは、さぞ心苦しいでしょうね?」
アイルは、リリィに目を合わせる。
「苦しい。考えるだけでも」
「でも、あなたはやるしかない。わたしとの約束だし、あなたは勇者様だから何でもできるわ」
深いため息を吐くアイル。
「そうだ。やるしかない。俺は苦しいが……せめてあいつらは、苦しめたくないな……」
「あぁ、あなたのそういう顔、大好き……」
リリィが腕を引き、アイルがそれに応えていた。
鏡の中の二人は体をぶつけ合っていた。リリィは髪が乱れるのも構わず反り身になりながらアイルの頬を抱いていた。
「もっと……! もっと、愛して……!」
鏡台がガタガタ音を鳴らして揺れ動く。化粧の小瓶が倒れ、中身がこぼれて床に落ちた。真っ青な色の液体が徐々に広がっていく。
「イくっ! イくっ! イくっ……!」
アイルの体が小刻みに震え、リリィの吐く息と二人の体の火照りとで、鏡は曇っていた。
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