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サブストーリー1:死神の恋は、静寂の音色
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世界は、常に暴力的な「騒音」で満ちている。
私、シルヴィオ・D・ベルンシュタインにとって、生きている人間とはすなわち「ノイズ」の塊だ。 ドクドクと脈打つ心臓の音、荒い呼吸、体内を駆け巡る生温かい血液の流れる音。そして何より、彼らが絶え間なく撒き散らす欲望、嫉妬、虚栄といった感情の波動。 それらが混ざり合い、不協和音となって私の鼓膜を劈き、脳髄を掻き乱す。 だから私は、幼い頃から生者よりも死者を好んだ。 死者は静かだ。何も語らず、何も求めず、ただ冷たく凪いでいる。その沈黙こそが、私にとって唯一の安息であり、世界の正しい在り方のように思えたのだ。
あの日、王宮の夜会に顔を出したのは、単なる気まぐれと、少しばかりの義務感からだった。 国王陛下から直々に届いた招待状。「たまには顔を見せぬか」という文面には、私の父の代からの付き合いである王の、諦めきれない親愛が滲んでいた。 無視し続けるのもベルンシュタイン家の当主としてはいささか不義理だろう。私は重い腰を上げ、数年ぶりにあの煌びやかな地獄へと足を踏み入れた。
会場は予想通り、吐き気を催すほどの喧騒だった。 何百人もの貴族たちが発散する、むせ返るような香水の匂いと、脂ぎった体臭。 シャンデリアの過剰な光は、網膜を焼くようだ。 私は頭痛を堪えながら、会場の隅にある柱の陰に身を潜めた。 グラスに入れたただの水をあおり、感覚を麻痺させる。 早く帰りたい。私の静かな地下室へ戻り、昨日届いたばかりの最高級マホガニー材の棺桶の木目でも眺めていたい。そうすれば、この耳鳴りも止むだろうに。
そう思っていた時だった。 ふと、その「静寂」を見つけたのは。
会場の中心、最も光が集まり、最も騒がしい場所。 そこには、この国の次期王となるアレクサンダー王太子がいた。 彼はまさに「太陽」だった。周囲を焼き尽くすほどの熱量と、他者の都合などお構いなしに降り注ぐ傲慢な光。彼の笑い声は、私にとっては黒板を爪で引っ掻く音よりも不快だった。
だが、その隣に。 まるで、そこだけ世界の色が抜け落ちたような、奇妙な「空白」があった。
赤いドレスを着た公爵令嬢。名は確か、ヴィオレッタといったか。 以前、聖女を害した罪で処刑されたという噂を聞いたことがあるが、どういうわけか今は王太子の婚約者としてそこに立っている。 彼女の周りには、人が群がっている。王太子も大声で愛を叫んでいる。 なのに、彼女自身からは「音」がしなかった。
呼吸をしているのかすら疑わしいほど、気配が薄い。 作り笑いを浮かべてはいるが、その顔の筋肉は死後硬直のように強張り、魂がそこにはないことが一目でわかった。 そして何より、その瞳だ。 周囲の景色を映し込んではいるが、何も見ていない。光を吸い込むだけで反射しない、深淵のような黒い瞳。 まるで、丁寧に防腐処理を施され、硝子のケースに収められた美しい標本のようだった。
――美しい。
私は息を飲むのも忘れ、その姿に見入ってしまった。 職業柄、死体を見て「美しい」と感嘆することは多々ある。 苦しみから解放され、永遠の眠りについた顔は、どんな生者の顔よりも安らかで尊いものだ。 だが、生きている人間を見て、これほどまでに心を奪われたのは初めてだった。
彼女は、生きながらにして死んでいた。 絶望という名の防腐剤に全身を浸され、永遠の静寂をその身に宿している。 周囲の喧騒を一身に浴びながら、彼女の内側だけは絶対零度の静寂に保たれている。 その矛盾した存在感が、私にはたまらなく愛おしく、そして痛ましく映った。
不意に、視線が交差した。 彼女がこちらを見た。 あの闇の中に潜む私を、正確に捉えた。
通常、私のような「死神」と目が合えば、人間は二通りの反応を示す。 恐怖で顔を歪めて逃げ出すか、あるいは「不吉だ」と蔑みの目を向けるか。 だが、彼女は違った。 その虚ろな瞳の奥に、微かな、本当に微かな光が灯ったのだ。
それは恐怖ではない。 助けを求める信号のようでもあり、同類を見つけた共鳴のようでもあった。 あるいは、砂漠で渇き切った旅人が、オアシスの水面を見つけた時の眼差しに似ていたかもしれない。 彼女は私の中に、自分が失った(あるいは求めている)「死」を見たのだ。
その瞬間、私は恋に落ちたのだと思う。 いや、生者が語るような、心臓が高鳴り血が沸騰するような熱烈な恋ではない。 もっと静かで、冷たくて、底知れない執着。 私の鼓動は、早くなるどころか、深く沈み込むように落ち着いていった。
この美しい「生ける屍」を、私の棺に入れたい。 あの騒がしい太陽の下で、無理やり生かされ、干からびていく姿を見るのは耐え難い。 私が彼女を保護し、適度な湿度と冷気の中で、その美しさを永遠に保存してやりたい。 それは歪んだ所有欲かもしれない。だが、私にとってはこれ以上ない純粋な愛情だった。
その後、彼女が私の管理する墓地へ逃げ込んできた時、私は運命というものの存在を初めて信じたくなった。 夜風に吹かれ、墓石に背を預けて座り込む彼女は、夜会の時よりもさらに美しかった。 月光を浴びた肌は陶器のように白く、触れればひんやりと冷たい。
「私はもう死んでいますから」
彼女はそう言った。 その言葉の、なんと甘美な響きだろう。 彼女自身が、自分の魂の死を自覚し、それを受け入れている。 生きることに執着し、見苦しく足掻く人間ばかりを見てきた私にとって、彼女のその潔い諦念は、聖女の祈りよりも尊く響いた。
彼女の頬に触れた時、私の指先は歓喜に震えた。 この体温こそが、私が求めていたものだ。 生温かい熱情ではなく、冷たく澄んだ静寂。 私は彼女に告げた。「美しい。まるで極上の遺体のようだ」と。 常人なら悲鳴を上げて逃げ出すであろうその言葉に、彼女は微笑んで「ありがとう」と答えた。 その瞬間、私たちの共犯関係は成立したのだ。
しかし、障害はあまりにも大きかった。 王太子アレクサンダー。あの光の暴力装置。 彼は彼女を愛していると言いながら、その実、彼女を追い詰め、破壊していた。 彼女に真っ赤な薔薇を送りつける神経が、私には理解できない。 彼女に似合うのは、色が抜け落ちたドライフラワーか、純白の骨だけだというのに。
彼女に小鳥の頭蓋骨を贈ったのは、私なりの求愛であり、試験でもあった。 もし彼女がこれを「気味が悪い」と拒絶するなら、所詮は住む世界の違う人間だったということだ。 だが、彼女はそれを髪に飾り、王太子に抵抗したと聞いた。 私の贈った「死」を、彼女は「盾」として使ってくれたのだ。 それを知った時、私は執務室で一人、声を上げて笑ってしまった。 ああ、愛しいヴィオレッタ。君はやはり、私の花嫁になるべき女性だ。
だからこそ、王太子が彼女を北の離宮に閉じ込めたと知った時、私は激しい怒りを覚えた。 静寂を愛する私が、これほどまでに感情を露わにしたことは生涯なかっただろう。 私の静寂を、私のコレクションを、汚す者は許さない。 王太子であろうと、神であろうと、私の「棺」に手を出す資格はない。
私は即座に屋敷の地下へ降り、古い文献を紐解いた。 王宮の地下見取り図。かつての王族たちが隠した秘密の通路。 墓守たちを招集し、私は告げた。「姫を奪還する」と。 それは、ベルンシュタイン家が長年守ってきた「王家への不可侵」の掟を破る行為だったが、迷いはなかった。 彼女のいない世界など、ただの騒音地獄でしかないのだから。
地下聖堂で彼女と再会した時、泥だらけの彼女を見て、私は胸が詰まるような思いがした。 黒い喪服を着て、私に飛び込んでくる彼女。 その体は震えていたが、私の腕の中で次第に落ち着きを取り戻していった。 彼女が求めていたのは、私の「冷たさ」だった。 私がコンプレックスとして抱えてきた、死神のような体温を、彼女は「救い」だと言ってくれた。
その後の戦い――王太子の軍勢との攻防は、私にとっては単なる「害虫駆除」に過ぎなかった。 歴代の王たちの霊魂を呼び出したのは、少々やりすぎだったかもしれないが、あの鈍感な王太子に「歴史の重み」を理解させるには、あれくらいの演出が必要だっただろう。 それに、ご先祖様たちも久しぶりの現世への顕現を楽しんでいたようだし、結果オーライというやつだ。
今、すべてが終わり、彼女は私の屋敷にいる。 サンルームで静かに本を読み、時折、私が入れたただの水を美味しそうに飲んでくれる。 会話は少ない。 けれど、その沈黙こそが、私にとっての最高の音楽だ。
彼女は言った。「ミイラになるまで一緒にいたい」と。 それは、どんな愛の言葉よりも私を酔わせる。 ヴィオレッタ。愛しい、私の死神の花嫁。 君がいつか本当の死を迎えるその時まで、私はこの冷たい手で君を守り続けよう。 そして君が棺桶に入る時、一番美しい死に化粧を施すのは、この私でありたい。 君の最期の瞬間を看取り、その瞼を閉じ、永遠の静寂へと送り出すこと。 それが、葬儀卿なりの、永遠の愛の誓いなのだ。
窓の外では、秋風が枯れ葉を揺らしている。 世界は相変わらず騒がしいが、この屋敷の中だけは、奇跡のように静かだ。 私は手元の書類を置き、彼女の待つサンルームへと向かった。 冷えた水と、彼女の好きな静寂を持って。
私、シルヴィオ・D・ベルンシュタインにとって、生きている人間とはすなわち「ノイズ」の塊だ。 ドクドクと脈打つ心臓の音、荒い呼吸、体内を駆け巡る生温かい血液の流れる音。そして何より、彼らが絶え間なく撒き散らす欲望、嫉妬、虚栄といった感情の波動。 それらが混ざり合い、不協和音となって私の鼓膜を劈き、脳髄を掻き乱す。 だから私は、幼い頃から生者よりも死者を好んだ。 死者は静かだ。何も語らず、何も求めず、ただ冷たく凪いでいる。その沈黙こそが、私にとって唯一の安息であり、世界の正しい在り方のように思えたのだ。
あの日、王宮の夜会に顔を出したのは、単なる気まぐれと、少しばかりの義務感からだった。 国王陛下から直々に届いた招待状。「たまには顔を見せぬか」という文面には、私の父の代からの付き合いである王の、諦めきれない親愛が滲んでいた。 無視し続けるのもベルンシュタイン家の当主としてはいささか不義理だろう。私は重い腰を上げ、数年ぶりにあの煌びやかな地獄へと足を踏み入れた。
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そう思っていた時だった。 ふと、その「静寂」を見つけたのは。
会場の中心、最も光が集まり、最も騒がしい場所。 そこには、この国の次期王となるアレクサンダー王太子がいた。 彼はまさに「太陽」だった。周囲を焼き尽くすほどの熱量と、他者の都合などお構いなしに降り注ぐ傲慢な光。彼の笑い声は、私にとっては黒板を爪で引っ掻く音よりも不快だった。
だが、その隣に。 まるで、そこだけ世界の色が抜け落ちたような、奇妙な「空白」があった。
赤いドレスを着た公爵令嬢。名は確か、ヴィオレッタといったか。 以前、聖女を害した罪で処刑されたという噂を聞いたことがあるが、どういうわけか今は王太子の婚約者としてそこに立っている。 彼女の周りには、人が群がっている。王太子も大声で愛を叫んでいる。 なのに、彼女自身からは「音」がしなかった。
呼吸をしているのかすら疑わしいほど、気配が薄い。 作り笑いを浮かべてはいるが、その顔の筋肉は死後硬直のように強張り、魂がそこにはないことが一目でわかった。 そして何より、その瞳だ。 周囲の景色を映し込んではいるが、何も見ていない。光を吸い込むだけで反射しない、深淵のような黒い瞳。 まるで、丁寧に防腐処理を施され、硝子のケースに収められた美しい標本のようだった。
――美しい。
私は息を飲むのも忘れ、その姿に見入ってしまった。 職業柄、死体を見て「美しい」と感嘆することは多々ある。 苦しみから解放され、永遠の眠りについた顔は、どんな生者の顔よりも安らかで尊いものだ。 だが、生きている人間を見て、これほどまでに心を奪われたのは初めてだった。
彼女は、生きながらにして死んでいた。 絶望という名の防腐剤に全身を浸され、永遠の静寂をその身に宿している。 周囲の喧騒を一身に浴びながら、彼女の内側だけは絶対零度の静寂に保たれている。 その矛盾した存在感が、私にはたまらなく愛おしく、そして痛ましく映った。
不意に、視線が交差した。 彼女がこちらを見た。 あの闇の中に潜む私を、正確に捉えた。
通常、私のような「死神」と目が合えば、人間は二通りの反応を示す。 恐怖で顔を歪めて逃げ出すか、あるいは「不吉だ」と蔑みの目を向けるか。 だが、彼女は違った。 その虚ろな瞳の奥に、微かな、本当に微かな光が灯ったのだ。
それは恐怖ではない。 助けを求める信号のようでもあり、同類を見つけた共鳴のようでもあった。 あるいは、砂漠で渇き切った旅人が、オアシスの水面を見つけた時の眼差しに似ていたかもしれない。 彼女は私の中に、自分が失った(あるいは求めている)「死」を見たのだ。
その瞬間、私は恋に落ちたのだと思う。 いや、生者が語るような、心臓が高鳴り血が沸騰するような熱烈な恋ではない。 もっと静かで、冷たくて、底知れない執着。 私の鼓動は、早くなるどころか、深く沈み込むように落ち着いていった。
この美しい「生ける屍」を、私の棺に入れたい。 あの騒がしい太陽の下で、無理やり生かされ、干からびていく姿を見るのは耐え難い。 私が彼女を保護し、適度な湿度と冷気の中で、その美しさを永遠に保存してやりたい。 それは歪んだ所有欲かもしれない。だが、私にとってはこれ以上ない純粋な愛情だった。
その後、彼女が私の管理する墓地へ逃げ込んできた時、私は運命というものの存在を初めて信じたくなった。 夜風に吹かれ、墓石に背を預けて座り込む彼女は、夜会の時よりもさらに美しかった。 月光を浴びた肌は陶器のように白く、触れればひんやりと冷たい。
「私はもう死んでいますから」
彼女はそう言った。 その言葉の、なんと甘美な響きだろう。 彼女自身が、自分の魂の死を自覚し、それを受け入れている。 生きることに執着し、見苦しく足掻く人間ばかりを見てきた私にとって、彼女のその潔い諦念は、聖女の祈りよりも尊く響いた。
彼女の頬に触れた時、私の指先は歓喜に震えた。 この体温こそが、私が求めていたものだ。 生温かい熱情ではなく、冷たく澄んだ静寂。 私は彼女に告げた。「美しい。まるで極上の遺体のようだ」と。 常人なら悲鳴を上げて逃げ出すであろうその言葉に、彼女は微笑んで「ありがとう」と答えた。 その瞬間、私たちの共犯関係は成立したのだ。
しかし、障害はあまりにも大きかった。 王太子アレクサンダー。あの光の暴力装置。 彼は彼女を愛していると言いながら、その実、彼女を追い詰め、破壊していた。 彼女に真っ赤な薔薇を送りつける神経が、私には理解できない。 彼女に似合うのは、色が抜け落ちたドライフラワーか、純白の骨だけだというのに。
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だからこそ、王太子が彼女を北の離宮に閉じ込めたと知った時、私は激しい怒りを覚えた。 静寂を愛する私が、これほどまでに感情を露わにしたことは生涯なかっただろう。 私の静寂を、私のコレクションを、汚す者は許さない。 王太子であろうと、神であろうと、私の「棺」に手を出す資格はない。
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その後の戦い――王太子の軍勢との攻防は、私にとっては単なる「害虫駆除」に過ぎなかった。 歴代の王たちの霊魂を呼び出したのは、少々やりすぎだったかもしれないが、あの鈍感な王太子に「歴史の重み」を理解させるには、あれくらいの演出が必要だっただろう。 それに、ご先祖様たちも久しぶりの現世への顕現を楽しんでいたようだし、結果オーライというやつだ。
今、すべてが終わり、彼女は私の屋敷にいる。 サンルームで静かに本を読み、時折、私が入れたただの水を美味しそうに飲んでくれる。 会話は少ない。 けれど、その沈黙こそが、私にとっての最高の音楽だ。
彼女は言った。「ミイラになるまで一緒にいたい」と。 それは、どんな愛の言葉よりも私を酔わせる。 ヴィオレッタ。愛しい、私の死神の花嫁。 君がいつか本当の死を迎えるその時まで、私はこの冷たい手で君を守り続けよう。 そして君が棺桶に入る時、一番美しい死に化粧を施すのは、この私でありたい。 君の最期の瞬間を看取り、その瞼を閉じ、永遠の静寂へと送り出すこと。 それが、葬儀卿なりの、永遠の愛の誓いなのだ。
窓の外では、秋風が枯れ葉を揺らしている。 世界は相変わらず騒がしいが、この屋敷の中だけは、奇跡のように静かだ。 私は手元の書類を置き、彼女の待つサンルームへと向かった。 冷えた水と、彼女の好きな静寂を持って。
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