陛下、私はあなたの初恋ではなく、最後の失敗作です

なつめ

文字の大きさ
31 / 34

第30話 私を選ぶ



 人は、大きな決断だけで自分を取り戻すわけではないのだと思う。

 離宮へ移る。王宮を離れる。王妃位返上願いを出す。そうした大きな選択は、たしかに人生の流れを変える。けれどその後で、本当に自分が変わり始めるのは、もっと小さなところからなのかもしれない。朝いちばんに何を口にするか。どの色の布を肩へかけるか。どの花の前で足を止めるか。誰にも見せない部屋で、どのくらい背を丸めて座るか。そういう、ひどく些細で、誰からも評価されない選択の積み重ねだけが、壊れた自分の輪郭を少しずつ元へ戻していく。

 東の丘の離宮へ移ってから、十日が過ぎていた。

 朝の空は、ようやく春の色を覚え始めている。

 窓を開ければまだ風は冷たい。けれどその冷たさは、もう冬の刃ではない。土と若い芽の匂いを薄く含み、どこかやわらかくほどけている。庭園の端に残っていた雪は、もうほんの細い白い塊として日陰にうずくまるだけになり、黒かった土の面積がずいぶん増えた。池の縁に張っていた薄氷も消え、朝の光を受けた水面が、かすかに揺れている。温室の硝子は夜露を残したまま白く曇り、その内側には、まだ低いままの緑が整然と並んでいた。

 セレスティアは、その朝、寝台の中でしばらく目を開けたまま天井を見ていた。

 王宮では、起きた瞬間から朝が始まっていた。侍女の気配。洗面の支度。今日の予定。来客の名前。衣装の選定。寝起きの身体は、そのまま公務へ滑り込むための器にすぎなかった。

 ここでは違う。

 目が覚めても、すぐに起きなくていい。
 起き上がる前に、自分の呼吸だけを聞いていても誰も困らない。
 寝台の中のぬくもりが、まだ自分のものとして残っている。

 それだけのことに、最近になってようやく身体が少しずつ慣れてきた。

 掛布の端から手を出し、窓の方へ視線を向ける。淡い朝の光が、まだ閉じたカーテンの隙間から細く差していた。暖炉の火は消えている。昨夜の灰だけが白く残っていた。部屋は少し冷たい。けれどその冷たさが嫌ではない。自分が「寒い」と思えば、暖炉番を呼んで火を入れてもらえばいい。少し我慢したければ、そのままでもいい。そういう選択が、まだ新鮮だった。

 ようやく起き上がると、床板がひんやりと足裏へ触れる。王宮の厚い絨毯とは違う感触だ。木の硬さがある。少し乾いていて、歩くと小さく軋む。その音を、セレスティアは最近嫌いではなくなっていた。

 窓を開ける。

 朝の空気が流れ込む。湿った土の匂い。遠くの草の匂い。庭師がどこかで道具を動かしているのか、金属の触れ合う細い音がした。鳥の声も、王宮の庭で聞くより近い。王宮ではあれも庭師や侍従や衛兵の気配の向こう側に聞こえていたが、ここではもっと剥き出しで、風の中に浮いている。

「お目覚めでございますか」

 イゼルナの声が扉の向こうからする。

「ええ」
「お入りしても?」
「どうぞ」

 扉が開き、彼女が白湯と薄い外套を持って入ってくる。王宮にいた頃と同じように静かな動作だが、この離宮ではその静けさの意味が少し違う。王妃の気分を乱さぬための静けさではなく、この家に朝をそっと足していくための静けさだ。

「今日は少し冷えます」
「そうね」
「温室へは後での方が」
「ええ。先に庭を少し見たいわ」
「かしこまりました」

 イゼルナは白湯を差し出しながら、主人の顔を見た。

「今日はお顔色がよろしいですね」
「そうかしら」
「ええ。王宮におられた頃の“整った顔色”ではなく」
「……」
「ちゃんと眠れた方のお顔色です」

 セレスティアはその言い方に、少しだけ笑った。

 王宮では顔色すら技術だった。疲れていても、冷え切っていても、王妃として不足のない血色へ整える方法を知っていた。香油や、薄い色粉や、朝いちばんに飲む茶の濃さまで含めて。今の自分の顔は、そうではないらしい。単に眠れた人間の顔色をしているのだろう。

 それがどこかくすぐったく、同時に少し嬉しかった。

 支度は簡素に済ませた。髪は低くまとめるが、王宮の時のように一本の後れ毛も許さぬほどには固めない。衣も、今日は朝露で裾を汚しても構わぬよう、薄い生成りに近いものを選ぶ。王宮ならまず選ばなかった色だ。白に寄りすぎていて、光の加減では顔がぼやけて見える。王妃としては損だと思っていた。だがここでは、不足なく見えるかどうかより、自分が朝の庭の色に馴染むかどうかの方が大事に思えた。

 その「大事」の中身が変わってきたことに、セレスティア自身もようやく気づき始めていた。

 庭へ出ると、草はまだ低かった。露を含んだ若い葉が、靴の先へひんやりと触れる。庭師が整えてくれた石道はあるが、今日はそこから少し外れた土の上をゆっくり歩いた。王宮ではまずしなかった歩き方だ。裾が少し湿る。だが、誰に見せるわけでもない。困るのは洗濯係だけだ。そう思うと少し申し訳ないが、それでも足を止めたいとは思わなかった。

 池の近くまで来ると、水面の端に小さな花が一つだけ咲いていた。白でも青でもない、淡い黄色に近い花。背が低く、地面すれすれで咲いている。庭師が植えたものなのか、昔から勝手に出る花なのかは分からない。

「その花は」

 後ろから声がして振り返ると、庭師が道具を手に立っていた。

「風待ちでございます」
「風待ち?」
「ええ。朝の風が二、三日ぬるんでから、ようやく顔を上げる花で」

 庭師は皺だらけの顔を少しだけ緩めた。

「目立ちはしませんが、根は強うございます」
「……そう」

 セレスティアはしゃがみ込み、その小さな花を見た。王宮の花のような派手さはない。誰かの目を引くための色でも、夜会の灯りに映えるための形でもない。けれど、土から近い場所で、淡く、しかし確かにそこに咲いている。

「摘まない方がよろしいです」

 庭師が言う。
「ええ。分かっているわ」
「見栄えはせぬ花ですが」
「綺麗ね」

 思わずそう言うと、庭師は少し驚いたように目を瞬いた。

 綺麗。

 王宮でそれを口にする時、セレスティアはいつも「誰にどう見えるか」を先に考えていた気がする。この色は夜会に映えるか。あの花は王妃の衣装に合うか。貴婦人たちの目にどう映るか。今は違う。誰の目にも入らぬような低い花を、ただ自分が綺麗だと思った。そう思った瞬間に口へ出した。

 それだけのことに、胸の奥が少しだけやわらかくなる。

 朝食も、最近は少しずつ変わってきていた。

 王宮では胃に負担をかけぬよう、見た目にも美しく、匂いも強すぎず、朝の王妃にふさわしい軽さを守っていた。離宮でも基本はそうだが、セレスティアは最近、自分の好みを口にするようになっていた。

「今日は、焼いた林檎を少しだけ」
「かしこまりました」
「あと、薄い蜂蜜を」
「ええ」

 厨房係が少し驚いたように目を上げる。林檎の焼きものは嫌いではなかった。だが王宮ではめったに頼まなかった。甘みが朝の香りとして残るのが、王妃には少し幼く感じられると思っていたからだ。今は違う。今日は焼いた林檎の温かい匂いを食べたいと思った。そう思ったなら、それを言ってもいい。

 甘さを欲しがることを、自分で恥じなくていい。

 そんな当たり前のことを、今さら学び直している。

 昼前、東翼からの夜番報告を見た後、セレスティアはしばらく返事を書かなかった。

 王宮にいた頃なら、すぐに目を通し、必要な箇所へ一行だけでも手を入れただろう。副筆頭が困っているかもしれない。書記官の文言が硬すぎるかもしれない。貴婦人たちの機嫌を少しでも先に丸めておいた方がよいかもしれない。そういう「かもしれない」を拾うことが、ほとんど癖になっていた。

 今は、紙を机の端へ置き、一度窓の外を見た。

 昼の光が温室の硝子を白く照らしている。北側の棚にはまだ少し寒さが残る。庭師が言っていた風待ちの花が、朝より少しだけ開いているようにも見えた。

「……後ででいいわ」

 ぽつりとそう言うと、イゼルナが書記具を整えながら顔を上げる。

「東翼へのご返答を」
「ええ。急ぎではないでしょう」
「おそらく」
「でしたら、午後の温室を見てから」

 イゼルナは主人を見つめ、それから小さくうなずいた。

「それでよろしいかと」
「うん」

 うん、と。

 口にしてから、セレスティアは自分で少しだけ驚いた。王宮ではまず使わなかった返事だ。幼いでもなく、砕けすぎでもない。ただ、その場に合った素直な頷きとして出た。イゼルナも驚いたのだろう。だが何も言わず、そのまま書記具を閉じた。

 自分の感情、好み、望みを取り戻すというのは、こういう些末な崩れ方から始まるのかもしれない。

 午後、温室で苗の植え替えを少しだけ手伝った。

 最初は、手伝うつもりはなかった。見て、覚えるだけで十分だと思っていた。だが庭師が小さな鉢を並べていくのを見ているうちに、自分でも土へ触れてみたいと思ったのだ。

「殿下のお手は」
 
 庭師が心配そうに言う。
「汚れます」
「ええ」
「冷えますし」
「少しだけなら」

 庭師は少しだけためらった後、小さな鉢と薄い革手袋を差し出した。

 土は冷たい。しっとりとしていて、見た目より重い。王宮では土に触れる時も、だいたいは園芸係が用意した花を切るくらいだった。根のついた苗を鉢から外し、土ごと支え、崩れぬよう新しい場所へ移す。そんな手順は知らなかった。庭師に教えられるまま指を入れると、土が爪の間へ少しだけ入り込んだ。嫌ではない。ただ、妙に生々しい。

「根は、ほどきすぎないで」
 
 庭師が低く言う。
「はい」
「今はまだ、少し窮屈なくらいでよろしい」
「どうして?」
「急に広い土へ移すと、自分の居場所を見失いますから」

 セレスティアは、苗を持つ手を少しだけ止めた。

 自分の居場所を見失う。

 その言葉が、土の冷たさと一緒に指先から胸へ上がってくる。離宮へ移ってからの自分も、まさにそうだったのかもしれない。急に広い場所へ放り出されて、何をどう選べばいいのか分からなかった。だから、すぐに自由を満喫したわけではない。むしろ、王宮で使っていた癖や整え方をそのまま持ち込み、その中で少しずつ外れていくしかなかった。

 急に広い土へ移すと、居場所を見失う。

 だから、今の自分の歩みは遅くていいのだと思えた。
 すぐに全部変われなくていい。
 髪も、声も、好きなものも、望み方も。
 少しずつ、自分に合う鉢へ根を広げればいい。

 夕方、ようやく東翼への返答文へ向かった頃には、セレスティアの手の甲には薄く土の跡が残っていた。洗えば落ちる。だが、そのまま少しだけ残しておきたくて、彼女はすぐには水へ手を浸さなかった。

 返答文は短くした。必要な確認だけを置き、余計な先回りの指示は足さない。以前の自分なら、おそらく三行多く書いた。相手が困る前に、少しでも滑らかに。少しでも顔を立てるように。少しでも王宮全体が心地よく動くように。今は違う。回るべきところは、もう自分が手を入れなくても回るはずなのだ。それを信じることもまた、手放しの一部なのだろう。

「それでよろしいのですか」

 イゼルナが確認する。

「ええ」
「もう少し、文言を」
「足さなくても大丈夫」
「……はい」

 イゼルナはその返事を聞き、ほとんど見えぬほど小さく笑った。

「少しずつ、ですね」
「ええ」

 少しずつ。

 王から距離を置いた時間は、ただの別居ではなかった。
 もし別居だけなら、王への傷を抱えたまま、ただ別の寝台で眠るだけで終わっていたかもしれない。
 だが東の丘での生活は違う。
 何を食べたいか。
 どの花を綺麗だと思うか。
 どの文言は急がず後でよいと思うか。
 朝の光の中で、どのくらい自分のままでいていいか。
 そういう選び方の練習そのものが、再生になっている。

 王から離れたことで、王に戻るための準備が進んだのではない。
 自分へ戻るための回路が、少しずつ開き始めているのだ。

 夜になり、離宮の灯りが落ち着いた頃、セレスティアは一人で書見室の窓辺に座った。

 外は深い青だ。庭の輪郭はほとんど消え、温室の硝子だけが月のない空の下でうっすらと白い。暖炉の火は低く、部屋には木の乾いた匂いと、まだ少しだけ残る土の匂いが混ざっていた。今日は自分で選んだ焼き林檎の甘い残り香も、微かにある。

 静かだ。

 王宮では得られなかった種類の静けさだった。
 誰かの沈黙を心地よく支えるための静けさではなく、
 自分が自分の呼吸を聞くための静けさ。

 そこへ身を置いて、セレスティアは胸の奥をそっと確かめる。

 愛の残骸は、まだある。
 リグヴァルドの顔を思い出せば、胸のどこかがやはり少しだけ動く。
 言い訳のない謝罪も、役目ではなく隣にいてほしいという告白も、ちゃんと届いている。
 それでも、自分は戻らない。
 戻らないと決めることは、冷たさではない。
 むしろ、自分を軽々しく差し出さぬための、静かな誠実さだ。

「……私は、私を選ぶのね」

 声に出してみる。

 その言葉は、想像よりもしっくりきた。
 誰かにとって都合のいい妃ではなく。
 役目に綺麗に収まる王妃でもなく。
 ただ一人の女として、何を着て、何を食べて、どこで朝を迎え、どんな未来へ歩くのかを、自分で選ぶ。

 王を選ばない、という話ではない。
 まず、自分を選ぶという話だ。

 その順番を、ようやく今の自分は覚え始めている。
 だからこの時間は、ただ距離を置いているだけではない。
 再生として、きちんと意味を持ち始めている。

 セレスティアは窓の外の闇を見ながら、ゆっくりと息を吐いた。胸の奥にあった空っぽな場所は、まだ空っぽのままだ。だがその空洞の縁に、少しずつ自分の手で土を寄せ、芽を植え、水をやっている感覚がある。急いで埋める必要はない。誰かの言葉や視線で満たされるのを待つ必要もない。

 自分で選び、自分で育てる。

 そのことを知った夜の静けさは、王宮でのどんな眠りよりも、少しだけやさしかった。

あなたにおすすめの小説

王妃は春を待たない〜夫が側妃を迎えました〜

羽生
恋愛
王妃シルヴィアは、完璧だった。 王であるレオンハルトの隣に立ち、誰よりも正しく、誰よりも美しく、誰よりも“王妃らしく”あろうとしてきた。 けれど、結婚から五年が経っても2人には子は授からず、ついに王は側妃を迎えることになる。 明るく無邪気な側妃ミリアに、少しずつ心を動かしていくレオンハルト。 その変化に気づきながらも、シルヴィアは何も言えなかった。 ――王妃だから。 けれど、シルヴィアの心は確実に壊れていく。 誰も悪くないのに。 それでも、誰もが何かを失う。 ◇全22話。一日二話投稿予定。

真実の愛を見つけたから離婚してくれ」と笑う夫へ。あなたの愛する彼女、私の実家で天文学的な借金の保証人になってますけど、大丈夫ですか?

まさき
恋愛
夫に「真実の愛を見つけた」と離婚を告げられた日、桐島澪は微笑んだ。「いいですよ」——その一言に、すべての準備が込められていた。 澪の実家は、不倫相手・白石奈々が10億円の借金を抱えていることを把握し、その債権をすでに買い取っていた。慧介は入籍前に、奈々に騙されて連帯保証人の書類にサインしていた——内容を確認しないまま。 逃げ場はない。奈々の本性が剥がれ、二人の愛の生活は崩壊していく。 一方の澪は静かな日々を取り戻し、叔父・桐島冬司との距離が少しずつ縮まっていく。経済界に「氷の桐島」と呼ばれる男が、澪の前でだけ眼光を和らげる——本人も気づかないまま。 「俺でいいのか」「いいですよ」 今度の答えは、本物だった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

愛人の生活費も、お願いします 〜ATM様、本日もよろしくてよ〜【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
政略結婚で結ばれた王子ザコットと、氷のように美しい公爵令嬢ビアンカ。だが、ザコットにはすでに愛する男爵令嬢エイミーがいた。 結婚初夜、彼はビアンカに冷酷な宣言を突きつける。 「お前を愛することはない。俺には愛する人がいる。このエイミーだ」 だが、ビアンカは静かに微笑み、こう返す。 「では、私の愛人の生活費も、お願いします」 ──始まったのは、王子と王子妃の熾烈な政略バトル。 愛人を連れて食卓に現れるビアンカ。次々と辞表を出す重臣たち、そしてエイミーの暴走と破滅……。 果たして、王子ザコットの運命やいかに!? 氷の王子妃と炎の愛人が織りなす、痛快逆転宮廷劇! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。 コメディーです。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。