白い結婚を強いた旦那様と離縁したら、隣国の宰相に求婚されました

なつめ

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**第13話 元夫の焦り**



 最初にその話を耳にしたとき、ローデリクはそれをただの体面の問題だと片づけた。

 王都の北寄りにある外務省付属の会議室は、朝の光が高い窓から斜めに入り込み、長机の上へ白く冷たい筋を落としていた。窓枠の外では春先の風が旗を鳴らし、室内には磨かれた木材と蝋、乾いた羊皮紙の匂いが混じっている。財務官たちの低い声。書記がペン先を走らせる音。硬い椅子がわずかに軋む音。そのどれもが、会議の場らしく無駄なく整っていた。

 議題は北部交易路の補修費と、ルーヴェンディア側との税率再調整に関する下準備。公爵として顔を出しておくべき実務のひとつに過ぎない。ローデリクは机の上に置かれた資料に目を落としながら、淡々と必要な発言を重ねていた。

 その休憩の合間だった。

「そういえば」

 年配の外務補佐官が、湯気の立つ茶を受け取りながら、いかにも何気ない調子で言った。

「ルーヴェンディアの宰相閣下が、昨日ヴァレール侯爵家を訪ねられたとか」

 ローデリクの手が、書類の端をめくるところで一瞬だけ止まった。

 ほんの一瞬だ。周囲が気づくほどではない。彼自身も、その止まり方をすぐに無かったことのように次の紙へ視線を移した。だが胸の奥に、ごく細い針のような違和感が刺さったことははっきり分かった。

「礼の訪問でしょうな」

 別の官僚が肩をすくめる。

「先般の晩餐会の件もありますし」

「礼にしては妙な宛先ですがね」

 補佐官が笑った。年を取った男特有の、悪意を酒で薄めたような笑い方だ。

「普通なら公爵家へ向けるところを、わざわざ侯爵家へでしょう。まあ、書簡の文面はたいそう上品だったと聞きますが」

 ローデリクはそこで初めて顔を上げた。

「どこからその話を聞いた」

 声音は平坦だ。咎める色は出していない。だが補佐官はそれでも少しだけ姿勢を正した。

「失礼。昨夕、財務卿夫人の茶会で耳にしただけです。王都は噂が早いもので」

「……噂で仕事をするのは感心しないな」

「まったくです」

 男はまた笑ったが、今度はそれ以上続けなかった。

 会議はすぐに再開された。税率、木材、橋梁、通行証、代替路、春先の荷運び。話題はどれも具体で、数があり、冷たく、考えれば考えるほど感情の入り込む余地がない。ローデリクはそれを好む。数字と条件は裏切らない。人の機嫌や言葉の揺らぎと違って、必要な箇所だけを押さえれば済む。

 だが今日に限って、頭のどこかにさっきの一言が棘のように残った。

 ルーヴェンディアの宰相が、ヴァレール侯爵家を訪ねた。

 礼の訪問。

 それだけのことだ、とローデリクは自分に言い聞かせた。先日の晩餐会のあと、ルーヴェンディア側が侯爵家へ礼を述べるのは、不自然とまでは言えない。ヴァレール侯爵家は王都の中でも古い家柄だ。公爵家との縁によって目立ってはいるが、元から無視できるほど軽い家ではない。外務筋の人間が形式を整えるなら、あり得ないことではない。

 それに今、セレスティーヌは実家に戻っている。

 その事実は、王都の空気を吸っていれば遅かれ早かれ誰かの耳に入る。実家に戻った侯爵家の娘へ、侯爵家宛てに礼を送る。筋としては外れていない。

 問題は、そこに余計な意味を見いだされることだ。

 王都の貴族どもはすぐに色めいた噂へ飛びつく。形式上まだ公爵夫人である女と、隣国の宰相。わざわざ侯爵家を訪ねたとなれば、何もないはずのところへでも勝手に火をつけるだろう。

 そうだ。これは体面の問題だ。

 ローデリクはその結論へ自分を押し込んだ。

 エーレンフリート公爵家の名と、ヴァレール侯爵家との結びつき、ひいては王都における自分の立場に関わる。気に障るのはそのせいだ。個人的な感情ではない。そんなものがあるはずもない。

 会議が終わって外務省の石段を降りる頃には、空はすっかり晴れていた。風はまだ冷たい。だが陽は強く、石の壁から乾いた白さが照り返してくる。馬車へ乗り込む前、ローデリクは一度だけ目を細めた。

 胸の奥に刺さった小さな不快感は、まだ抜けていなかった。

 馬車が公爵邸へ着くと、玄関ホールの空気がいつもよりわずかにざわついていることに気づいた。使用人たちはきちんと動いている。だが動線に、ひどく小さな綻びがある。給仕のひとりが銀盆の置き場所を一瞬迷った。扉の前で若い侍女が道を譲るのが半拍遅れた。廊下の花瓶の花が、昨日から替えられていない。

 ローデリクはそれを見ても、普段なら気にも留めない。いや、気づいたとしても、誰かがどこかで是正すると知っているから考えない。だが今日はなぜか、その微細な乱れが目についた。

「ベルナール」

 執事長がすぐに進み出る。

「はい、公爵様」

「花が古い」

 老執事の目が一瞬だけ動いた。彼も気づいていたのだろう。

「申し訳ございません。朝の差し替えが少し遅れまして」

「遅れた?」

「奥様がお戻りでない間、花係の手配を一部こちらで振り直しております。確認が重なったようで」

 ローデリクはそこで黙った。

 奥様がお戻りでない間。

 その言い方が、妙に耳に残る。普段なら意識もしない言葉だ。だが今は、その“間”がまるで一時のものではないかのように聞こえて、胸のどこかがまたわずかに軋んだ。

「今後は気をつけろ」

「かしこまりました」

 書斎へ向かう途中、厨房から料理長が駆け寄ってきた。

「公爵様、本日の晩餐でございますが、ラ・セル伯爵の好みの件を再確認したく」

 ローデリクは足を止める。

「古い赤だろう」

「はい、酒はそれでございます。ただ、鹿肉の火入れを、前回奥様は少し浅めにと仰っておりました。ですが……」

 料理長は言葉を濁した。

「ですが何だ」

「伯爵は前回、皿の温度が高すぎるとも仰っておりましたので、どちらを優先すべきかと」

 ローデリクは眉を寄せた。

 そんなことを、自分がいちいち決めなければならないのか。いつもは出てくるものが適切な形に整っていて、そこで初めて彼の世界は動いている。だが今日、整って出てくるはずの手前で、こうして細部が立ち止まる。

「……前回はどうした」

「奥様が、火入れは浅め、皿の温度は落としすぎぬよう布で調整をと」

 料理長が答えた瞬間、ローデリクはごく短く黙った。

 そうか、と頭のどこかで思う。こういう細部も、彼女が見ていたのか。伯爵が何を食べ、何に不満を持ち、それをどう折り合わせれば機嫌を損ねずに済むのか。そんなことまで。

「同じにしろ」

 ローデリクは短く命じた。

「奥様が仰っていた通りに」

「かしこまりました」

 料理長が下がり、廊下に再び静けさが戻る。

 書斎へ入ると、机の上に今日の文書が積まれていた。北部からの橋梁報告。代官の返書。来週の視察日程。普段ならすぐに必要箇所だけを拾って処理していくのだが、今日は一枚目の要約で目が止まった。文字の整い方がいつもと違う。必要な箇所は記されている。だが行間の詰め方、補足の入れ方、余白の取り方が、微妙に扱いづらい。

 ベルナールが控えめに口を開く。

「今週は、奥様がご覧になる前に書記官がまとめております」

 ローデリクは紙から目を上げなかった。

「……そうか」

 それだけで済ませたが、頭の奥に小さな不快が増えた。

 セレスティーヌが見ていたから、文書が読みやすかったのか。

 違う、とすぐに打ち消す。ただ、彼女の整え方に慣れていただけだ。人は慣れた形が崩れると煩わしく感じる。それだけのことだ。

 だがその“だけ”が、今日はひどく多い。

 午後、ラ・セル伯爵が来た。初老の男はいつものように皮肉げな笑みを口元に浮かべていたが、席につくなり窓辺の花を見て言った。

「今日は、奥方がいらっしゃらぬのですな」

 ローデリクは手袋を外しながら答える。

「実家へ戻っている」

「そうでしたか。いや何、ここの花の置き方が少し変わったので」

 伯爵は笑った。悪意のない調子で、かえって鬱陶しい。

「前はもう少し、目にうるさくない塩梅だった」

「……気になるほどか」

「細かいことを言えば、です」

 細かいこと。

 その細かいことを、今まで誰が調整していたのかを思い知らされるようで、ローデリクは無言で杯を持ち上げた。酒の香りが立つ。だがいつもよりわずかに温度が高い気がする。

 伯爵が話を変えるように笑う。

「王都はまた面白い噂で賑やかですよ」

 その一言だけで、ローデリクの胸の奥に嫌なものが刺さる。伯爵は続けた。

「ルーヴェンディアの宰相閣下が、ヴァレール侯爵家へ礼の訪問をなさったとか」

 やはり広まっている。

「外交上の儀礼だろう」

 ローデリクは平坦に答えた。

「もちろん、もちろん。けれど王都の女たちは、儀礼の上に色を塗るのがお好きですからな」

 伯爵は愉快そうに肩をすくめる。

「何しろ、あの宰相はなかなか目を引く男だ。しかも噂では、先日の晩餐会で公爵夫人の言葉をたいそう高く買っておられたとか」

 その言葉を聞いた瞬間、ローデリクの指先が杯の脚をわずかに強くつかんだ。

 高く買っていた。

 あの夜の光景が、望んだわけでもないのに頭へ浮かぶ。晩餐会。税率の話題。自分の返答で少し冷えた空気。そこへセレスティーヌが穏やかに言葉を差し挟み、場が自然にほどけていった。あれを、シグルドは見ていたのか。

 いや、見ていたに決まっている。宰相なのだから。

 それだけだ。そう思うのに、胸の奥にある不快は、体面の問題として片づけるには妙に鋭かった。

「くだらん」

 ローデリクは短く言い捨てた。

「噂話に価値はない」

「たしかに。ですが、噂が広がるということは、人がそれだけ想像しやすい絵だということでもある」

 ラ・セル伯爵はそこで口をつぐんだ。これ以上は踏み込まないと判断したのだろう。だがもう十分だった。

 想像しやすい絵。

 その言葉が、頭のどこかに引っかかったまま離れない。

 夜、伯爵を送り出したあと、ローデリクは一人で執務室へ戻った。蝋燭の火が机の上を照らし、書類の端に深い影を落とす。窓の外はすっかり暗く、庭の噴水の縁がわずかに白く浮いているだけだ。

 机へ向かっても、文書は頭に入らなかった。

 ルーヴェンディアの宰相。

 ヴァレール侯爵家。

 先日の晩餐会で公爵夫人の言葉を高く買っていた。

 それらが何度も頭の中を巡る。

 体面の問題だ。公爵家の名に関わる。そう考えるたびに、胸の奥の不快はむしろ形を変えて残った。もっと私的で、もっとみっともない感情に近い何かへ。

 シグルドが、セレスティーヌの話を聞いているところを想像してしまう。

 彼女があの静かな声で何かを言い、あの男が最後まで遮らずに聞くところを。銀灰の瞳でまっすぐ見られ、必要な言葉だと返されるところを。そこへ自分がいないことを。

 ローデリクはそこで、唐突に手元のペンを置いた。

「……馬鹿な」

 誰へ向けたのか分からない呟きだった。

 何を考えている。これは愛ではない。愛などという曖昧で制御の利かぬものを、自分が今さら持つはずがない。セレスティーヌは妻であり、公爵家の位置に置かれた人間であり、必要な役目を果たすべき者だ。だからこそ他者に勝手な意味を与えられると不都合だし、家の秩序が乱れる。そういう話だ。

 そうなのに。

 胸の奥に刺さったこの嫌な感覚は、体面だけでは説明がつかなかった。

 あの男に見られることが、なぜこんなにも苛立たしいのか。

 あの男がセレスティーヌの言葉を理解しているかもしれないと思うと、なぜこんなにも腹の底がざらつくのか。

 ローデリクは生まれて初めて、その種の感情に近いものへ触れた。嫉妬。たぶんそれに似ている。だが彼はそれに名前をつけたくなかった。つけた瞬間、それは自分の制御の外へ出てしまう気がしたからだ。

 執務室を出て、深夜近い廊下を歩く。広い館は静まり返っている。燭台の火は絞られ、絨毯は足音を吸い込む。いつもならそれで終わる。ただ自室へ向かうだけの時間だ。だがその夜、ローデリクは無意識に足を止めた。

 白い寝室の前だった。

 今は誰もいない部屋。いや、寝台も家具もそのままにあるのだから、“誰もいない”わけではないのかもしれない。ただ、彼女がいないだけだ。

 扉を開ける。

 室内には薄くラベンダーの香りが残っていた。暖炉の火は落ち、窓辺のカーテンは閉じられ、寝台はきちんと整えられている。右側も左側も、今は同じように白い。人の体温がないぶん、部屋そのものがひどく冷たく感じられた。

 ローデリクはゆっくり寝台へ近づいた。シーツに手を触れる。ひやりとしている。ここへ自分が入ったことはない。三年間、一度も。必要ないと思っていたからだ。情は不要。夫人として座っていればいい。そう言ったのは自分だ。

 ならば今さら、この冷たさが何だというのか。

 答えはない。

 ただ、想像したくもないのに、シグルドがセレスティーヌの声を聞いている場面ばかりが頭へ浮かぶ。自分は聞かなかった。話そうともしなかった。聞く必要がないと思っていた。そのことを、今この空いた寝室の前で初めて突きつけられているような気がした。

 ローデリクはゆっくり息を吐いた。

 綻びは、邸内の花だけではない。文書だけでもない。料理の火入れでも、席順でもない。もっと根の深いところから始まっている。

 そしてその綻びの正体を、彼はまだ認めたくなかった。認めれば、自分が何を失いかけているのかを、はっきり見なければならなくなるからだ。

 白い寝室の静けさの中で、ローデリクはしばらく動かなかった。冷えたシーツの向こう側には、今もいない妻の気配だけが、薄く残っているような気がした。

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