白い結婚を強いた旦那様と離縁したら、隣国の宰相に求婚されました

なつめ

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**第16話 元公爵夫人の価値**



 離縁が正式に成立してから、最初の三日は、驚くほど静かだった。

 王都という場所は、火がつけば一瞬で燃え広がるくせに、その火が本当に燃え広がるまでにはわずかな間がある。紙に書かれた事実が各家へ伝わり、そこから侍女たちの囁きとなり、夫人たちのお茶会へ流れ、紳士たちの食後酒の話題へ移り、やがて社交界全体の空気になる。そのわずかな間の静けさを、セレスティーヌはヴァレール侯爵家の南向きの居間で、まるで嵐の前の息苦しさのように感じていた。

 窓の外には春の陽が柔らかく落ち、ライラックの花房が風に揺れている。香りは甘く、少し青い。遠くで庭師が土を返す音がして、湿った土の匂いが時おり薄く流れ込んだ。室内では母が刺繍枠を膝に置いていたが、針を動かす手はあまり進まない。セレスティーヌも本を開いてはいたものの、一頁として頭に入ってこなかった。

 静けさの下で、噂は育っている。

 それが分かるからこそ、待つ時間は長く感じられた。

 最初の火花は、四日目の午後に届いた招待状だった。

 淡い象牙色の厚紙に、香りの薄い青いインクで名前が記されている。差出人は、王都でもっとも上品に人を値踏みすることで知られるラ・セル伯爵夫人。名目は春の小さなお茶会への招待。だが、その紙の端々に滲むものを、セレスティーヌはすぐに読み取った。

 見たいのだ。

 離縁した元公爵夫人が、どんな顔をして現れるのかを。

 打ちひしがれているのか。痩せ細っているのか。強がって微笑むのか。それとも侯爵家の娘として平然と座っていられるのか。夫人たちはたいてい、本人の幸福より、本人がどれほど傷ついているかを見たがる。

 招待状を読んだ母が、少しだけ眉をひそめた。

「無理に出ることはないのよ」

 刺繍枠を膝に置いたまま、エレノールは静かに言った。

「今はまだ、好き勝手に言わせておけばいいわ」

 セレスティーヌは招待状を膝の上で軽くなぞった。紙の表面はさらりとしていて、指先の熱を吸わない。

「いいえ」

 自分でも驚くほど落ち着いた声が出た。

「参ります」

 母が顔を上げる。

「本当に?」

「ええ。私が隠れれば、余計に“捨てられた女だから”と言われるだけです」

 少し間を置いて、セレスティーヌは続けた。

「それに、今の私は“捨てられた”のではありませんもの」

 言葉にした瞬間、自分の胸の中でも、それが静かな重みを持って沈んだ。

 そうだ。捨てられたのではない。自分で終わらせたのだ。たしかにそこへ至るまでに傷つきはした。削られ、冷やされ、長い時間を無駄にした。けれど最後に立ち上がって、白い寝室と沈黙する食卓から足を引いたのは自分だった。

 母の目元が、わずかに柔らいだ。

「そうね」

 それだけ言って、母は刺繍枠を置いた。

「では、お茶会用のドレスを選びましょう。哀れみに見える色はだめよ。強すぎてもいけない。あなたがあなたとして立つための色にしましょう」

 その言い方に、セレスティーヌは小さく笑った。母は変わり始めている。まだ侯爵夫人としての感覚は深く身についているが、その中に娘のための言葉が混じるようになってきた。

 ラ・セル伯爵夫人の屋敷は、王都の西にある古い邸だった。春の光の中でもどこか薄暗い落ち着きを帯びた石造りで、庭にはよく手入れされた薔薇の株が並んでいる。お茶会の席には、予想通り、年長の伯爵夫人たちと、その娘たち、そして王都で噂好きとして名を馳せる二、三の子爵夫人が集まっていた。

 扉をくぐった瞬間に向けられた視線の数を、セレスティーヌは数えなかった。数えれば、その意味を一つずつ拾ってしまう気がしたからだ。

「まあ、セレスティーヌ様」

 ラ・セル伯爵夫人が、扇をひらきながら立ち上がる。淡い桃色のドレスに、今日も扇の飾りだけが妙に華やかだ。

「お出ましいただけるなんて、嬉しいこと。お加減はいかが?」

 問いの形をしているが、実際には“ちゃんと笑えるほど元気かどうか”を見ている。セレスティーヌは穏やかに一礼した。

「お招きありがとうございます、伯爵夫人。おかげさまで、変わりなく過ごしております」

「それは何よりですわ」

 周囲の夫人たちの唇に、よく似た微笑みが浮かぶ。憐れみと好奇心と、少しの安堵。ああ、まだ泣き崩れてはいないのね、という安堵だ。

 席に着く。磁器のカップの縁には金が走り、焼き菓子には春の花びらが載せられている。茶葉は軽く、香りは華やかすぎない。居間の窓は大きく、午後の光が女たちの頬に柔らかな陰影をつくっていた。

 会話は最初、季節の話や新しい仕立て屋の噂といった無難なもので始まった。だがやがて、当然のように刃は抜かれる。

「でも本当に、世の中何があるか分かりませんわね」

 子爵夫人の一人が、砂糖菓子を摘まみながら言う。

「誰もが羨むようなご結婚だったのに」

「公爵家ほどの家ですもの、周囲も色々と大変だったのでしょう」

 別の夫人が頷く。

「お気の毒ですわ。でも、実家がしっかりしていらっしゃるのは救いですわね」

 お気の毒。

 救い。

 まるで事故に遭った者へ向けるような言葉が、甘い茶の香りと一緒に滑ってくる。

 以前のセレスティーヌなら、そうした憐れみを真正面から受けるのが苦しかっただろう。自分が本当に敗残者になったような気がして、笑顔を作るのにも細心の注意が必要だったに違いない。

 だが今は違う。

 胸の奥にあるのは痛みよりも、妙に冷えた明晰さだった。この人たちは、私の人生がどう良くなるかには興味がない。ただ、自分たちの前でどれほど折れたかを見たいだけだ。

 セレスティーヌはカップを置き、静かに微笑んだ。

「ご心配いただきありがとうございます。でも、私は今のところ、自分で選んだことに悔いはございません」

 その一言に、空気がわずかに止まる。

 夫人たちの扇が、同じ角度で小さく止まった。

 伯爵夫人が、すぐに笑みを整える。

「まあ、強いこと」

「強いのではなく、ようやくそうするべきだったのだと思っているだけです」

 セレスティーヌは続けた。声は穏やかに、少しも尖らせない。

「私の人生ですもの。誰かに惜しまれる形で残るより、自分で終わらせるほうが良いと判断いたしましたの」

 扇の向こうで、若い娘たちの目が一瞬だけ大きくなる。年長の夫人たちは笑みを崩さないが、その奥にあった“哀れな元公爵夫人”を見る目が、ほんの少しだけ揺らいだのが分かった。

 それでももちろん、この場の大半はなお憐れみを手放さない。だが、その憐れみがもう完全には上に立てなくなったのだ。

 お茶会が終わり、ヴァレール侯爵家の馬車へ戻った時、セレスティーヌはようやく小さく息を吐いた。ショールの下の肩が少しだけ重かった。けれど惨めさはない。

 馬車の中で待っていた母が娘の顔を見て言う。

「嫌味は言われた?」

「ええ。でも想定よりは少なかったです」

「あなたが思ったより折れていなかったからでしょうね」

 エレノールは皮肉ではなく、事実として言った。セレスティーヌはその言い方に少し笑った。

「折れていたら、喜ばれたのでしょうに」

「王都の女たちはそういうところがあるわね」

 母もまた、少しだけ笑う。乾いた、けれど昔よりずっと人間味のある笑い方だった。

 だが社交界の反応は、それだけでは終わらなかった。

 数日後、今度は父の書斎へ、一通ではなく三通の招待状がまとめて届いた。差出人はいずれも、王都でも外交畑と呼ばれる家々の者たちだった。港湾税や交易、隣国との文書のやりとりに関わりの深い伯爵家、子爵家、そして法務や財務に顔の利く古参の夫人たち。

 内容はどれも似ている。春の小規模な晩餐、勉強会を兼ねた茶会、地方産品の見本市の打ち合わせ。名目はそれぞれだが、そこに共通するものを、父はすぐに見抜いたらしい。

「……妙だな」

 書斎の机の上へ並べられた招待状を見ながら、オーギュスト侯爵が低く言う。

「妙、ですか」

 セレスティーヌが問うと、父は彼女へ視線を向けた。

「外交筋の家ばかりだ。しかも、どれもお前個人の出席を望む文面になっている」

 たしかにそうだった。夫人だけでなく、ご令嬢セレスティーヌにもぜひ、と書かれている。元公爵夫人を見世物にしたいだけなら、ラ・セル伯爵夫人のような噂好きの席で十分だ。だが今届いているのは、もっと実務の匂いがする家々からの招きだった。

 母が一通を開き、目を通す。

「こちらは港湾監督官の妻からね。去年の秋の税率調整の折、あなたの言葉が印象的だったとあるわ」

 セレスティーヌは少し驚いて顔を上げた。

「私の?」

「ええ」

 母は便箋を娘に渡す。そこには、いかにも上品に整えられた文章で、先日の離縁には驚いたが、それとこれとは別として、以前よりセレスティーヌの視野の広さと落ち着きに感心していた、と書かれていた。そして“もし差し支えなければ、今後もぜひそのお考えを伺いたい”と結ばれている。

 もう一通には、北方領主の伯爵夫人から「夫がいつも公爵夫人の席順の妙を褒めておりました」とまで書いてあった。

 セレスティーヌは紙を持つ手に、ほんの少しだけ力が入るのを感じた。

「……覚えられていたのですね」

「覚えられていたのでしょう」

 父の声は、どこか複雑だった。喜びだけではない。驚きと、少しの悔しさと、もっと早くそれを見抜けなかった自分への何かが混じっているように聞こえる。

「お前は、思っていた以上に見られていたようだ」

 その言葉に、セレスティーヌは静かに瞬きをした。

 見られていた。

 いや、正確には、見逃されていなかったのだろう。少なくとも、賢い者たちは。誰が場を支え、誰が文書の裏まで読んでいるか、そういうところを見る目を持つ者たちは、表に出ない働きも覚えていたのだ。

 その後も、招待状はぽつぽつと増えた。

 すべてが善意とは限らない。もちろん、まだ彼女を“哀れな離縁女”として値踏みしたい者もいる。だが、そうした視線と同じくらい、もっと静かな興味もまた彼女へ向けられ始めていた。

 あの元公爵夫人は、実はただの飾りではなかったのではないか。

 そう思い始めた人々がいるのだ。

 それをはっきり感じたのは、港湾監督官の妻が開いた小さな晩餐会だった。

 集まったのは十人ほど。大きな夜会とは違い、人数が少ないぶん話題は深くなりやすい。料理は質素だが、酒も魚もよく選ばれている。席には若い飾りの伯爵夫人はおらず、代わりに夫たちの仕事を間近に見てきた年長の女性や、領地経営に関わる子爵家の娘たちがいた。

 話題が自然と交易路へ移ったとき、白髪混じりの伯爵が、まるで前から知っていたように言った。

「セレスティーヌ殿は、北側の川港が春先に詰まる件もご存じでしたな」

 セレスティーヌは一瞬驚いたが、素直に頷いた。

「何度か書簡を見ておりましたので」

「ほう。あの時、公爵は気づいておられなかった顔をしていたが」

 言葉は軽い。だがそこに意地悪さはなかった。ただ事実として、彼女の視野の広さを認めている響きだった。

 別の婦人が続ける。

「わたくし、あの冬の晩餐で拝見したの。怒っていたマルヴィ夫人を、あなたがたった一言で穏やかにしたでしょう。あれは見事でしたわ」

「お恥ずかしいです」

「お恥ずかしいことではなくてよ」

 婦人は笑う。

「わたくしたち、ずっと思っていたの。エーレンフリート公爵邸があれほど滞りなく回るのは、きっと女主人がよほど賢いからだろうって」

 その言葉が、静かに胸へ落ちた。

 セレスティーヌはその晩、屋敷へ戻る馬車の中で、窓の外の闇を見ながらじっと考えていた。

 捨てられた女。

 哀れな元公爵夫人。

 そう囁く者たちの声は、たしかにある。だが同じだけ、もっと静かな声も立ち上がっている。

 見逃されていただけだ。

 あの人は、失敗作ではなかった。

 むしろ、あれほどの能力を持ちながら、ただ公爵家の白い部屋と静かな食卓の中に押し込められていただけだったのではないか。

 その認識はまだ社交界全体を塗り替えるほどではない。けれど、一度そう見始めた者たちは、もう以前と同じ目では彼女を見ないだろう。

 ヴァレール侯爵家へ戻ると、玄関ホールには父が立っていた。こんな時間に自ら出てくることは珍しい。セレスティーヌが階段へ向かおうとすると、侯爵が短く呼び止める。

「今夜はどうだった」

 以前の父なら、こんなふうに娘へ直接問うことはなかったかもしれない。だが今は違う。まだ不器用で、問う形もそっけない。それでも、彼なりに知ろうとしている。

「思っていたより、落ち着いた席でした」

「そうか」

 父は少し黙り、それから続ける。

「お前のことを、前から見ていた者がいたようだな」

 その言葉に、セレスティーヌはほんの少しだけ目を見開いた。父の口からそういう種類のことを聞くのは、初めてだった。

「……はい」

「ふむ」

 侯爵はそれ以上、感慨深げなことは何も言わない。ただ短く頷いてから、いつもの硬い声で付け加える。

「招待が増えている。無理のない範囲で選べ。すべてに応じる必要はない」

「承知しました」

 父はそこで一度だけ娘を見た。その目は、もう以前のように“役に立つ娘”だけを計る目ではなかった。まだ完全ではない。だが少なくとも、そこに“価値のある一人の人間”を見ようとし始めている。

 自室へ戻ると、窓の外には春の夜が静かに広がっていた。ライラックの香りは昼よりも薄く、代わりに夜気の湿りと土の匂いがわずかに濃い。ドレスの紐を解きながら、セレスティーヌは鏡の中の自分を見た。

 以前と同じ顔だ。淡金の髪。薄青の瞳。変わらぬ容姿。けれど、その輪郭の見え方だけが、少しずつ変わっていくのを感じる。

 元公爵夫人。

 その呼び名には、まだ離縁の冷たさがつきまとう。だがそれだけではない。そこには今、新しい意味が足されつつあった。

 見逃されていただけの人。

 本当はもっと評価されるべきだった人。

 そうやって世間が気づき始める音を、セレスティーヌは確かに聞いていた。まだ小さな音だ。けれど白い寝室の中で消費されていた頃には、決して聞こえなかった音だった。

 その夜、鏡の前で髪をほどきながら、セレスティーヌは胸の奥に静かな熱を感じた。

 失われたものは戻らない。三年の時間も、削られた尊厳も、すべてがそのまま癒えるわけではない。けれど、失敗作として終わるのではなく、ようやく正しく見つけ直される未来があるのかもしれないと、初めて思えた。

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