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第23話 義母と愛人、辺境へ来る
その日、北の館の空気は朝からどこか硬かった。
雪は夜明け前にやみ、空には薄い銀色の雲が広がっていた。晴れるとも崩れるともつかない冬の空だ。中庭の石畳には昨夜の雪がまだ薄く残り、踏まれたところだけが鈍く灰色をのぞかせている。風は強くない。けれど止まっていると、耳の先からじわじわ冷えてくる種類の寒さだった。
セスティアは客間の窓辺で、外の白さを見ていた。
小卓の上には、午前のあいだ見ていた補給路の記録と、倉庫係から回ってきた新しい在庫表が開かれている。けれど目はそこへ落ちていなかった。数字は今朝も整っている。塩樽の本数も、燭用油の残量も、雪入り後の飼料の配分も、きちんと追えば安心できるものばかりだ。なのに今日は、その整然さが胸へ入ってこない。
理由は、さきほどラドヴァン付きの若い従者が運んできた一言に尽きた。
来客がある。
それも、南から。
誰が、と問う前に身体が理解していた。
伯爵家の側だ、と。
そして、その予感は外れなかった。
来たのはベルソナとメルフィナ。
義母と愛人が、雪を踏んで辺境の館まで押しかけてきたのだ。
知らせを受けた瞬間、セスティアの喉は小さく狭くなった。だが以前のように、視界が白く飛びかけるほどではなかった。怖い、とまず分かる。それから、その怖さが何の怖さなのかも、自分で少しは説明できる。怒鳴られること。泣き落とされること。こちらの罪悪感を揺さぶられること。どれも一度は効いたやり方だった。
けれど今は、ここが伯爵家ではない。
その事実が、かろうじて背骨の芯を支えていた。
「奥様」
ニネッタが、少し青ざめた顔で部屋へ入ってくる。
「どうなさいますか」
どうするか。
以前なら、その問いはもっと残酷だっただろう。出るしかない、応じるしかない、謝るしかない、説明するしかない。そういう「しかない」ばかりが並んでいた。けれど今は違う。会うか会わないか。どこで会うか。誰を同席させるか。拒むことすら、選択肢に入っている。
セスティアは一度だけ深く息を吸った。
「ラドヴァン様は」
「応接間で待たせておられます」
「……お一人で?」
「いえ。ご自身もおられます。『セスティアが決めるまで入れるな』と」
その言葉に、胸の内へ小さな熱が落ちた。
入れるな。
つまり、まだ自分の意志の外では会わせていないということだ。勝手に客間へ通したわけでも、こちらへ判断を急かしたわけでもない。会うかどうかを決める前の時間が、ちゃんと守られている。
セスティアは窓辺から離れた。
「会うわ」
ニネッタが目を見開く。
「本当に?」
「ええ」
「でも」
「逃げる形で終わらせたくないの」
そう言いながら、自分でもその理由を確かめる。怖い。会えばきっと嫌な言葉を聞く。ベルソナは泣きもしないで人を追い詰めることができるし、メルフィナは泣きながら人の罪悪感へ入り込むのがうまい。ユリゼンの手紙だけであれほど身体が冷えたのだ。本人たちを前にしたら、きっともっと揺れる。
それでも、会う。
なぜなら、もう戻らないと決めたからだ。
紙の上だけではなく、自分の口で。それをあの二人へ向かってきちんと言う必要がある気がした。説明のためではない。理解を求めるためでもない。ただ、線を引いたことを、声にするために。
「大丈夫ですか」
ニネッタの問いは、怖がりながらも信じたい人の声だった。
「大丈夫とは言えない」
セスティアは正直に答えた。
「でも、行くわ」
そう答えると、自分の声が思ったより静かなことに気づく。落ち着いているわけではない。むしろ胸の中は細く張りつめている。それでも、その張りつめたものが今は前へ向いている。
支度に時間はかけなかった。
館の客として整えられた落ち着いた色のドレス。過度に飾らず、けれど弱っては見えない形。髪もきちんとまとめ、手元には館で買ったぴたりと合う手袋をはめる。冬市で自分で選んだその手袋が、今日こんなにも頼もしく感じられるとは思っていなかった。
扉を出る前、セスティアは一度だけ自分の手を握った。新しい手袋の内側はまだ少しだけ毛の感触が生きていて、熱を逃がさない。
行ける。
怖いままで、行ける。
応接間へ向かう廊下は、いつもより長く感じた。石壁の間を、厚い絨毯がまっすぐ伸びている。窓の外の雪明かりが白く差し込み、角ごとの燭台の火がその白さをやわらげる。足音は絨毯へ吸われ、心臓の音だけがやけに自分の耳へ近い。
扉の前にはラドヴァンがいた。
深い色の上着を着たまま、背筋をまっすぐ伸ばして立っている。衛兵のように構えているのではない。ただ、ここが通るべき線だと身体で示しているような立ち方だった。
セスティアが近づくと、灰緑の目が一度だけこちらを見た。その視線には「大丈夫か」とも「本当に会うのか」とも書かれていない。ただ、今のお前を見ている、という静かな確認だけがある。
「会うか」
短く問われる。
「ええ」
「嫌になったら途中で立て」
それだけだった。
途中で立っていい。最後まで我慢して座り続けなくていい。その言葉が、喉の奥の細さを少しだけゆるめる。
「はい」
「入る」
ラドヴァンが扉を開けた。
暖炉のある応接間の空気はあたたかい。けれど、その温かさの中へ混ざる香りが一つだけあった。ベルソナの香油だ。甘く、濃く、鼻の奥へまとわりつくような匂い。その匂いに触れた瞬間、セスティアの身体は反射的に強ばった。
いた。
長椅子にベルソナが座っている。旅の疲れを見せるどころか、今日もきっちりと髪を結い、濃い色のドレスを着ていた。香油の匂いだけが少し強すぎる。隣にはメルフィナ。こちらは逆に、いかにも疲れましたと言いたげな淡い色合いで、顔色まで少し薄く見せている。
二人とも立ち上がらなかった。まるでここが自分たちの領分であるみたいな顔のまま、先にセスティアを見た。
その視線が胸へ刺さる前に、ラドヴァンが一歩ぶんだけ前へ出た。
大きな身体が、ほんの少しだけ視線の流れを遮る。その動作はごく自然だった。立ちはだかるというほど露骨ではない。けれど、「まずこちらを通る」と分かる程度には明確だった。
ベルソナの眉がぴくりと動く。
「辺境伯様」
最初に口を開いたのは彼女だった。声はいつも通り、柔らかいふりをしている。
「本日は突然押しかける形になってしまい、失礼いたしました。ですが、家の者のことでしたので」
「知っている」
ラドヴァンの声は低い。
短い。その短さが、応接間の空気を一気に乾かした。ベルソナは一瞬だけ言葉を詰まらせたが、すぐに薄笑いを作り直す。
「でしたら話は早いですわ。私どもは、ただこの子を連れ戻しに参っただけなのです。家の内で少し感情的な行き違いがございましたが、本来なら外の方を煩わせるような話ではありませんの」
この子。
その呼び方に、セスティアは内心で唇を噛んだ。いつだってそうだ。自分を一人の人間ではなく、家の中へ戻すべき子どものように扱う。
「セスティア様」
今度はメルフィナが、今にも泣きそうな顔で身を乗り出した。
「わたくし、本当に、ずっと後悔しておりましたの。あの時、もっとわたくしが身を引いておりましたら、こんな」
「身を引く?」
思わず、セスティアの口から声が漏れた。
自分でも驚くほど低い声だった。メルフィナが目を瞬く。
「あなたが?」
「……え」
「わたくしの席に座り、わたくしの私室に手を入れ、使用人へ責任を押しつけ、洗濯場へ勝手に入り、帳簿へまで口を出しておいて」
そこまで言ってから、セスティアは自分の指先が少し冷えているのに気づいた。だが声は止まらなかった。
「今さら、身を引くつもりだったなどと」
メルフィナの顔が、わずかに崩れる。泣き顔を作る準備が、一瞬だけ間に合わなかったのだ。
ベルソナがすぐ口を挟む。
「やめなさい、セスティア。あなた、そんな言い方をするために呼び出したのではないでしょう」
「呼び出してはおりません」
セスティアは静かに言った。
「押しかけてきたのは、お義母様のほうです」
その言葉に、ベルソナの扇を持つ手が強くなる。
「押しかけたですって?」
「そうでしょう」
ラドヴァンは何も言わない。ただ部屋の中央で少しだけセスティアの斜め前に立ち、二人の視線を真正面から受けている。その無言が、かえって威圧になっていた。ベルソナもメルフィナも、彼に向かって大きな声を出せない。声を荒げれば、自分たちの余裕のなさが露わになると分かっているからだ。
ベルソナは一度だけ息を整え、それから今度は声色を変えた。責める母ではなく、困り果てた大人の女の声へ。
「セスティア、あなたに腹が立っていないわけではありません。でもね、家は本当に困っているの。取引先の対応、領地からの訴え、帳場の整理、茶会の段取り。あの家には、あなたの手が必要なのよ」
必要。
その言葉に、胸の奥がひやりとした。
ああ、やはりそう来るのだ、と分かる。謝罪でも理解でもなく、必要だから戻れ、と。ユリゼンの手紙と同じだ。命令の形を整えただけの依存。
「あなたはあの家の女主人だったのよ」
ベルソナは続ける。
「責任というものがあるでしょう。感情で飛び出したまま、あとを全部人に押しつけるなんて、そんなのは」
「責任?」
セスティアは、そこでようやく一歩だけ前へ出た。
怖い。いまもまだ怖い。ベルソナの声は、昔と同じように罪悪感の形をして胸へ入り込んでくる。その入り方を身体は覚えている。けれど今は、その怖さの向こうで、別のものも見えている。
「お義母様がおっしゃる責任とは、何のことですか」
「何のって」
「不正な支出の穴埋めですか。愛人の部屋を整え続けることですか。使用人の顔色をうかがいながら、家の体面だけを保つことですか。それとも、お義母様とメルフィナ様が好き勝手に壊したものを、わたくしが黙って繕い続けることですか」
ベルソナの顔色が変わる。青ざめるのではなく、赤くさっと差す変わり方だった。怒りが先に出たのだろう。
「言葉に気をつけなさい!」
「気をつけておりました」
セスティアは答えた。
「ずっと長いあいだ」
その一言で、部屋の温度が少し変わる。
メルフィナがここで、ようやく本格的に涙を浮かべた。長い睫毛に大粒の涙が揺れ、いかにも可哀想な女の顔を作る。
「わたくしのせいで、こんな……でも、あの頃のセスティア様は本当に冷たくて、わたくし、どうしていいか分からなくて」
その声音は、以前なら耳へ粘るように届いただろう。けれど今は、むしろ薄っぺらく聞こえた。
「おやめなさい」
セスティアが言うと、メルフィナは泣き顔のまま固まった。
「何が本当で、何が演技か。もう分からないと思っていらっしゃるのなら、間違いです」
彼女はまっすぐメルフィナを見た。
「あなたはいつも、泣きながら人を押しのけていた。自分が可哀想だと見せるために」
ぽたり、とメルフィナの涙が膝へ落ちる。だがその涙はもう、場の空気を自分に引き寄せる力を持たなかった。
ラドヴァンが何も言わずにそこへ立っているせいもあるだろう。彼は最初から最後まで、二人の芝居に反応を返していない。慰めもしない。問い詰めもしない。ただそこにいる。その無言の重みが、泣き落としや被害者面の居場所を奪っていた。
ベルソナは最後の札を切るように、声を低くした。
「あなた、本当に分かっているの。こんな辺境にいて、今後どうなるか」
その響きは露骨な恫喝だった。都から遠い。雪深い。知己も少ない。女一人では生きにくい。そういうことを全部含めている。
「家へ戻れば、まだやり直せるのよ」
「やり直す?」
セスティアはその言葉をゆっくり繰り返した。
「何を、でしょう」
「あなたの立場も、名誉も、生活も」
「どれも、伯爵家にあった頃には壊されていました」
はっきり言うと、ベルソナはついに扇を強く閉じた。乾いた音が応接間へ響く。
「生意気な」
吐き捨てるような声だった。
「誰があなたをここまで育ててやったと思っているの」
その時だった。
ラドヴァンが、一歩だけ動いた。
本当に、一歩だけだった。けれどそれで十分だった。大きな体がわずかに前へ出る。灰緑の目がベルソナへ落ちる。言葉はない。なのに、その沈黙だけで空気が固まる。
ベルソナは口を開きかけて、閉じた。
威圧だった。怒鳴りもせず、机を叩きもせず、ただ「それ以上は許さない」と分かる形でそこに立つ。こういう威圧を、セスティアは初めて見た気がした。恐怖で相手を押し黙らせるのではなく、越えてはいけない線を身体で示して黙らせる威圧。
そして、その一歩のあと、ラドヴァンは何も足さなかった。
だからこそ、決定打を放つ場所がセスティアの前にきれいに空いた。
セスティアは、自分でも分かるくらい胸が速く打っているのを感じた。ここだ。今、自分の口で言うのだ。ラドヴァンが黙って後ろに立ち、線を守ってくれている。けれど線を引く言葉そのものは、自分が言わなければならない。
伯爵家にいた頃の自分なら、ここで説明しただろう。もっと分かってもらおうとしただろう。事情を重ね、誤解を解き、自分の苦しさを分かる言葉へ直そうとしたはずだ。そして、分かってもらえなかったぶんだけ、また削れていただろう。
でも、もう違う。
説明しないことで守れるものがあると、今は知っている。
セスティアは一度だけ息を吸った。
それから、ベルソナとメルフィナを真正面から見た。
「お断りします」
声は思ったより静かだった。だが、応接間の隅までよく届いた。
「わたくしは、戻りません」
その瞬間、何かがはっきり変わった。
ベルソナの顔に浮かんでいた「まだ揺らせる」という色が、音もなく剥がれる。メルフィナの涙も止まりはしないが、もう武器にはならない。二人とも、今の一言が駄々でも意地でもなく、決定された線だと理解したのだ。
ユリゼンの手紙へ返事をしなかった時も、セスティアは自分の中で線を引いた。けれど今は違う。相手の前で、自分の声で、それを言ったのだ。
戻らない。
お断りします。
そのたった二つの文が、これまで説明や弁明に費やされていた時間を、一気に切り離していく。
ベルソナが何か言いかけた。唇が震え、目に怒りが滲む。だがラドヴァンが後ろに立っている。応接間の空気はもう、彼女の怒鳴り声が支配できる場所ではない。
セスティアは続けた。
「今後、手紙もお受けします。必要な記録として残すべきこともあるでしょうから」
ベルソナの目が険しくなる。メルフィナは泣き顔のままこちらを見る。
「ですが、それは返事をするという意味ではありません。戻ることも、会うことも、あなた方の都合で決まることではありません」
「……生意気な娘」
ベルソナが低く吐き捨てた。
けれどその言葉には、さっきまでの力がない。もうただの悪口にすぎない。命令ではない。
「そうかもしれません」
セスティアは答えた。
「でも、もう従いません」
応接間の暖炉が、小さく薪を鳴らす。その音だけがやけに鮮明だった。
しばらくの沈黙のあと、ラドヴァンがようやく口を開いた。
「話は終わりだ」
低い声は静かだったが、反論を受けつけなかった。
「館の門まで送らせる」
ベルソナが息を呑む。メルフィナは泣き顔のまま立ち尽くす。あれほど押しかけてきた二人が、最後はこれ以上ひと言も返せずに出ていくしかない。その現実が、妙に静かに場へ落ちた。
ラドヴァンが衛士へ目を向けると、扉の外で控えていた男たちが一歩入る。動きはきびきびしていて、だが粗暴さはない。ただ、拒否権はないのだと分かる程度には明確だった。
ベルソナは最後にセスティアを見た。その目には怒りも屈辱もある。けれど一番濃いのは、理解できないものを前にした苛立ちだった。自分の言葉が、もう効かない。その事実が受け入れられないのだろう。
メルフィナは唇を震わせ、何か言いたげだったが、結局最後まで「かわいそうな自分」の顔を保つことしかできなかった。
二人が応接間を出ていく。香油の甘い匂いだけが、あとへ薄く残る。
扉が閉まった瞬間、セスティアはようやく息を吐いた。
長い。胸の奥に溜まっていたものが、細く深く抜けていく。脚の力も少し抜けそうになる。けれど倒れはしない。今の自分は立っている。ちゃんと、自分の足で。
ラドヴァンが振り返る。
灰緑の目が、さっきまでの威圧を解いたあとだった。だがすぐに近づきすぎはしない。昨日の袖の時と同じように、こちらが求める分だけの距離を残している。
「よく言った」
短い一言だった。
その言葉に、セスティアの喉が少しだけ熱くなる。褒められたいわけではなかった。けれど、自分の引いた線を、ただの意地ではなく「よく言った」と受け止めてもらえるのは、思った以上に救いだった。
「……怖かったです」
正直に言うと、ラドヴァンは頷いた。
「見ていた」
「でも」
「断った」
「はい」
そのやり取りだけで十分だった。
ニネッタが、応接間の隅で目を潤ませているのが見えた。彼女もまた、ずっと息を詰めていたのだろう。セスティアはそこでようやく、自分の手が少し震えているのに気づいた。怖さが消えたわけではない。むしろ、終わった今になって遅れて身体へ出てきている。
ラドヴァンはそれを見て、ごく小さく顎を引いた。
「戻るか」
「……はい」
「今日はもう仕事をするな」
いつもの調子の、その言葉に、セスティアは思わず笑いそうになった。緊張のあとのふっと抜ける笑いだった。
「はい」
応接間を出ると、廊下はいつも通りだった。石壁。厚い絨毯。白い冬の光。けれどセスティアにとっては、少しだけ違って見えた。
戻らないと、自分の口で言った。
その事実が、館の空気をほんの少しだけ自分のものへ近づけた気がした。
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