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第2話 その結婚が祝福でないことくらい、わかっています
その夜、イゼルダはほとんど眠れなかった。
寝台に横たわり、天蓋の薄布を見上げていても、目を閉じていても、昨夜の食堂の光景が何度も何度も戻ってくる。燭台の火、白薔薇の匂い、父の低い声、母のやわらかい口調、姉の潤んだ瞳。その一つひとつが、眠りの縁に指をかけて引き戻してくるようだった。
深夜、廊下の向こうで時計が鳴った。何時だったのかも曖昧なまま、イゼルダは毛布の上で指先を組み直した。掌はじっとりと汗ばんでいるのに、足先だけが冷たい。窓の外では風が庭木を揺らし、ときおり細い枝が窓硝子を掠める音を立てた。ざり、と乾いたその音がやけに耳につく。
昨夜、自分はとうとう言ってしまった。
姉の代わりでは結婚しないと。
自分の人生を、自分抜きで決めるなと。
口にした時の胸の熱も、言い終えたあとの息苦しさも、まだ身体に残っている。けれど、それ以上に消えなかったのは、父が最後に向けたあの目だった。怒りというより、理解できないものを見る目。家の都合に従うはずのものが、自我を持って立ち上がったことへの苛立ちと不快。まるで、従順だった猟犬が突然こちらへ牙を向けたような、そんな目だった。
あの目を見た時、イゼルダは悟った。
今日、もう一度話し合いの場が設けられる。
話し合い、と呼ぶにはおそらく一方的なものだろう。昨夜の父の顔は、言い返されたまま終わることを許さない顔だった。母もまた、このまま引き下がるはずがない。アデルリーヌは泣いて見せるかもしれない。あるいは、本当に泣くかもしれない。どちらにせよ、結果は同じだ。三人はきっと、違う言葉を使って、同じことをイゼルダに迫る。
受け入れなさい。
諦めなさい。
家のために尽くしなさい。
目を閉じると、今度は別の顔が浮かんだ。
セヴラン・ド・ロシュフォール。
整った顔立ちをしている。社交界では洗練されているとも評される。淡い茶金の髪を後ろへ流し、いつも香りの強い柑橘系の香油をつけていた。笑う時には目元が細くなり、気さくで人好きのする印象を与える。女たちの前ではよく笑い、男たちの前では気前よく酒を振る舞い、年長者の前では礼儀正しい。外から見れば申し分のない縁談相手なのだろう。
けれどイゼルダは知っている。
あの男の目が、姉を見つめる時だけ、わずかに濁ることを。
熱っぽく、粘つくように、欲しいものに手を伸ばす時の獣みたいな色になることを。
春の夜会のことを思い出す。
王都の中央にあるレヴェルディ公爵家の大広間。高い天井からは幾重もの硝子灯が下がり、磨き上げられた床には無数の光が落ちていた。音楽が流れ、女たちのドレスが花のように揺れ、あちこちで笑い声が弾けていた夜。
その夜、セヴランは初めて姉へ正式にダンスを申し込んだ。
「アデルリーヌ嬢、どうか一曲」
彼はそう言って恭しく手を差し出しながら、視線だけは姉の喉元から離さなかった。イゼルダは姉の一歩後ろに立ち、その様子を横から見ていた。姉は困ったように微笑み、母のほうをちらりと見た。母はごくわずかに顎を引いた。許可の合図だった。
姉が彼の手を取る。
その瞬間、セヴランの口元が満足げに緩んだ。獲物が罠にかかった時のような、ひどく個人的な喜びを、彼はほんの刹那だけ隠しきれなかった。
ダンスのあいだじゅう、彼の手は姉の腰に置かれていた。必要な位置よりほんのわずかに低く、ほんのわずかに長く。周囲から見れば礼儀の範囲に収まる。けれど、そばで見ていたイゼルダには分かった。あれは慣れた手つきだ。相手が不快を訴えにくいぎりぎりを見極め、そこに指を置くことに慣れている男の手つきだった。
ダンスが終わったあと、姉は少し青ざめていた。
「疲れたわ」
そう言って扇で口元を隠した姉へ、母は「人気者は大変ね」とやさしく笑い、父は「よいご縁かもしれん」と満足そうに頷いた。
あの時、イゼルダだけが気づいていた。姉が疲れたのは人前に立っていたからではない。セヴランに触れられるのが嫌だったからだと。
だが、その不快はきれいな言葉で塗りつぶされた。
翌週の茶会でもそうだった。庭に面した温室で開かれた小さな集まりで、セヴランは姉の好む花の名をいくつも並べた。白いリシアンサス、薄紅の月季花、香りの弱い薔薇。見事な覚え方だと周囲は感心した。けれど彼は、そのひとつひとつを語る時、まるで姉自身を所有物のように分類している響きを声に滲ませていた。
「アデルリーヌ嬢には、やはり白がよくお似合いだ。あまり強い色ではなく、守ってやりたくなるような、そういう花が」
守ってやりたくなる。
その言い方を、イゼルダは嫌というほど覚えている。女を飾り棚の上の工芸品みたいに扱う男たちは、たいていそういう言葉を使う。繊細で、儚くて、壊れそうで、自分が庇ってやらなければならない存在。そう定義してしまえば、相手の意思など後回しでいいと思えるからだ。
姉は曖昧に笑っていた。母は満足そうだった。父は「侯爵家のご子息は熱心だ」と機嫌がよかった。
イゼルダはその時、温室の硝子に映った自分の姿を見た。姉の隣で、花の説明に頷き、カップを持ち、適切な相槌を打っている自分。会話の輪の中にいるのに、そこにいる意味はひとつもない。自分はただ、姉の物語の余白を埋めるために置かれている。
その余白へ、今度は丸ごと押し込まれようとしている。
セヴランが欲しがっていたのは、ずっとアデルリーヌだった。社交界で追い回し、花を贈り、視線で舐めるように眺めていたのは姉だった。イゼルダではない。自分はその熱が冷めたあとに差し出される代替品だ。姉が無理なら妹でよい。似ているならなおよい。家格が釣り合うなら十分だ。そういう計算の上に置かれた結婚を、どうして祝福と呼べるのだろう。
その結婚が祝福でないことくらい、わかっている。
誰より、自分が。
空が白みはじめた頃、ようやくうとうとと浅い眠りに落ちたらしい。次に目を開けた時、カーテン越しの光はすでに朝の色をしていた。頭が重い。瞼の裏が熱を持っている。寝台から起き上がると、肩から毛布が滑り落ち、夜気の残る冷たさが素肌に触れた。
扉の向こうから小さなノックがある。
「お嬢様、朝でございます」
マルグリットの声だった。
「……ええ」
返事をすると、自分の声が少し掠れていて、やはり眠れていなかったのだと知れる。マルグリットが入ってきて、窓を開けた。春先の朝の空気が流れ込む。湿り気を帯びた土の匂い、まだ冷たい風、遠くで鳴く小鳥の声。庭の木々が朝露を含んで、陽の光にほの白く光っている。
「お顔をお冷やしいたしましょうか」
「少しだけお願い」
冷たい布が額に触れる。気持ちよかった。イゼルダは目を閉じたまま、息を整える。
マルグリットはいつも余計なことを訊かない。けれど今朝は、布を替えながら慎重に言った。
「奥様付きの侍女から伝言がございました。お支度が整い次第、朝食はお部屋ではなく東のサロンへ、と」
「東のサロン」
やはり、とイゼルダは思った。
東のサロンは、家族が外向きの顔ではなく、内輪の「話」をする時によく使う部屋だ。食堂ほど広くなく、応接室ほど開かれてもいない。窓から朝日がよく差し込むから、母は「落ち着いて話すのに向いている」と言う。実際には、逃げ道の少ない部屋だった。
「……そう」
マルグリットは一度だけイゼルダを見た。何か言いたげだったが、結局何も言わなかった。その代わり、衣装棚から濃すぎない灰青色のドレスを選んでくれた。装飾の少ない、落ち着いたものだ。今朝の自分にはその静けさがありがたかった。
身支度の最中、鏡に映る自分の顔は、思った以上に白かった。目の下にうっすら影が落ちている。唇の色も薄い。けれど、不思議とみじめには見えなかった。むしろ、何かをぎりぎりで飲み込んでいる顔だと思った。その顔が少しだけ頼もしかった。
髪を結い上げてもらいながら、イゼルダは窓の外を見た。庭の向こう、白い石造りの礼拝堂の小塔が見える。そこにかかる鐘は、日曜ごとにやわらかく鳴る。修道院の鐘はどんな音だろう、とふと思った。もっと澄んでいるのか、もっと厳しいのか。それとも、自分が勝手にそう想像しているだけで、祈りの場の音はどこでも似たものなのか。
「お嬢様」
マルグリットの声で我に返る。
「はい」
「……どうぞ、ご無理をなさいませんよう」
たったそれだけだった。けれどイゼルダは、少しだけ目を見開いた。マルグリットは鏡越しに会釈し、それ以上は言わない。侍女にできる励ましとしては、それが限界なのだろう。
「ありがとう」
イゼルダは小さく答えた。
東のサロンへ向かう廊下は明るかった。朝の陽が磨かれた床に差し込み、窓枠の影を幾何学模様のように落としている。けれど、その光を踏んで歩くほど、胸は重くなった。部屋の前にはすでに使用人が一人立っていて、イゼルダが来ると無言で扉を開けた。
室内には、すでに家族が揃っていた。
父は窓を背にして立ち、片手を後ろに組んでいる。黒に近い深緑の上着は朝から隙なく整えられ、その姿勢にはどこにも乱れがない。母は小卓の脇の長椅子に座り、茶器の前に手を置いていた。淡い鼠色のドレスに真珠の首飾り。朝の光を受けた横顔は静かで、昨夜の苛立ちはもう表に出していなかった。アデルリーヌはその隣で、薄いクリーム色の室内着に身を包み、指先でハンカチを撫でている。顔色は少し悪く見えるが、それが本当に昨夜の件のせいなのか、もともとの体調のせいなのかは分からない。
「来たか」
父が言った。
「はい、お父様」
イゼルダは一礼した。部屋の空気は、昨夜の食堂よりもさらに整然としていた。怒鳴り声は上がらないだろう。涙も、おそらくここでは慎ましく使われる。だがそのぶん、言葉はもっと冷たく、もっと逃げ道なく並べられるに違いない。
「座りなさい」
母が向かいの椅子を示した。
イゼルダは従った。椅子の座面は春先の空気を含んでひんやりしている。小卓にはすでに紅茶が注がれていた。湯気の向こうで、薄く切ったレモンが浮かんでいる。香りはよいのに、口にする気にはなれなかった。
少しの沈黙のあと、母が口を開いた。
「昨夜は皆、少し感情的になってしまったわ」
「……そうかもしれません」
イゼルダは答えた。母はその返事に小さく頷く。
「だから、今朝は落ち着いて話しましょう。あなたも一晩眠れば、いくらか考えも整理できたでしょう」
「整理はいたしました」
「ならよかった」
母はほっとしたように微笑んだ。その微笑みが、イゼルダには恐ろしかった。まだ何も聞いていないのに、もうこちらが折れたと思い込んでいる顔だったからだ。
父がゆっくりと言う。
「まず確認しておくが、ロシュフォール侯爵家との話は、我が家にとって重要だ」
予想どおり、説明は「重要」から始まった。感情ではなく理屈。個人ではなく家門。
「侯爵家は王都でも発言力がある。最近は北方の交易にも力を伸ばしていて、今後さらに影響力を増すだろう。あちらとの縁が結べれば、モンティエール家にとって利益は大きい」
「それは理解しております」
「理解しているなら、なぜ昨夜のような愚かな真似をした」
父の声は穏やかだったが、その穏やかさの底に苛立ちが硬く沈んでいた。
イゼルダは紅茶の湯気を見た。薄い白い筋が立ち上り、朝の光の中でほどけていく。
「家にとって利益があることと、わたくしが受け入れられることは、同じではありません」
「またそれか」
父の眉間に皺が寄る。
母がその間にやわらかく入った。
「イゼルダ。あなたが戸惑う気持ちは分かるの。けれどね、貴族の結婚というものは、必ずしも心からの恋慕だけで成り立つものではないわ」
「存じております」
「でしょう? ならば、なおさらよ。祝福される結婚というのは、何も甘い言葉や熱烈な愛情ばかりではないの。家同士が支え合い、役割を果たし、穏やかに関係を築いていくこともまた、ひとつの祝福なのよ」
イゼルダは母の言葉を静かに聞いた。
穏やかな関係。
役割を果たすこと。
家同士が支え合うこと。
どれも正しい。正しすぎる言葉だった。だからこそ厄介なのだ。正論は、時に暴力より綺麗な顔で人を追い詰める。
「その結婚が祝福でないことくらい、わかっています」
思っていたよりも、声ははっきり出た。
母の手がぴたりと止まる。父の目がわずかに細くなった。アデルリーヌは驚いたようにイゼルダを見た。
「イゼルダ」
母がたしなめるように名を呼ぶ。
イゼルダは視線を伏せなかった。
「わたくしは、夢のような恋を申し上げているのではありません。ただ、この縁談が、誰かに祝福されるようなものではないと理解しているだけです」
「どういう意味だ」
父が問う。
「セヴラン様が望んでいたのは、最初からお姉様です」
アデルリーヌの肩がびくりと揺れた。
「夜会でも茶会でも、あの方はずっとお姉様を追っておられました。贈り物も、言葉も、視線も、すべて」
「それの何が悪い」
父は即座に返した。
「最初は姉へ話が来たとしても、事情が変われば妹に移ることなど珍しくない。家格が釣り合い、条件が整うなら、婚姻の形としては何もおかしくない」
「おかしくないのは、紙の上だけです」
イゼルダは言った。
自分でも驚くくらい、心は澄んでいた。傷ついている。怖い。だが、怖いからこそ、もうごまかせなかった。
「お相手が本当に家だけをご覧になる方なら、まだ違ったかもしれません。ですがセヴラン様はそうではありません。あの方は、お姉様を欲しがっておられた。ずっと、あからさまに」
「欲しがっていたなどと、なんてはしたない表現を」
母が眉をひそめる。
「失礼いたしました。では申し上げ直します。熱心に求めておられた。その相手が叶わなかったからといって、よく似た妹で構わないとされる婚姻を、どうしてわたくしが喜べるのでしょう」
父が声を低くした。
「喜ぶ必要はない。受け入れればよい」
「受け入れられません」
「なぜだ」
「……残り物のように差し出されるからです」
その一言は、部屋の空気をさらに冷やした。
母が顔色を変える。父は一歩前へ出た。アデルリーヌは、今にも泣き出しそうな目でハンカチを握る。
「そんな言い方はやめて」
姉が震える声で言った。
「お願い、イゼルダ。私、そんなつもりじゃ……」
「では、どんなつもりだったのですか」
イゼルダは姉を見た。
真正面から見つめるのは久しぶりだった。アデルリーヌの瞳は水気を含んでいて、昔のイゼルダならそれだけで言葉を引っ込めただろう。姉がつらそうにする姿を見るのが、自分は昔から苦手だったからだ。
でも今は、その涙の膜の向こうにあるものを見てしまう。
自分が傷ついたことへの痛みではない。
自分が責められる側に立たされたことへの戸惑い。
そこに、本気の悔いは薄い。
「私のせいでごめんなさい」
アデルリーヌは、とうとうそう言った。声は細く、今にも消えそうなくらい頼りなかった。けれど、その言い方さえ、あまりにも見慣れていた。自分を悪者にしきらず、相手にそれ以上責めるのを躊躇わせる、絶妙な弱さの出し方。
「でも、私、本当にどうしたらいいのか分からないの。お父様たちも家のことを考えておられるし、私の身体では無理で……だから……」
姉はハンカチを目元に当てた。
「あなたにだけ押しつけたいわけじゃないの。ただ、私にはできないことだから……」
その言葉を聞いた瞬間、イゼルダの胸の奥に、ひどく冷たいものが落ちた。
やはりそうなのだ。
姉は謝っているようでいて、結局は何も手放していない。私は悪くない、私にはできない、だからあなたがやって。当然だとは言わない。可哀想だとも言わない。ただ、できないから仕方ないのだと。そういう顔で差し出してくる。
それは昔から変わらない。
刺繍の発表会の日、姉が気分が悪いと言って出られなくなった時もそうだった。母は「アデルリーヌは無理がきかないの」と言い、父は「代わりにお前が出ればよい」と言った。姉は泣きそうな顔で「ごめんなさい」と言った。イゼルダは「気にしないで」と笑った。結果、姉が準備した作品としてイゼルダの刺繍が人前に出された。
誰も盗んだとは言わなかった。
ただ、自然にそうなっただけだった。
今回も同じだ。
奪われる側が大騒ぎしなければ、世界は何事もなかったように進んでいく。
「お姉様」
イゼルダは静かに言った。
「本当に申し訳ないと思っておいでなら、今ここで、この縁談をお断りください」
「え……」
「お父様とお母様に仰ってください。妹に押しつける話ではないと。ご自分が断るべき話だと」
アデルリーヌの顔が固まった。
目に浮かんだ涙はそのままに、唇だけがわずかに開く。言葉が出てこない。イゼルダはその沈黙を見つめた。痛いほど見慣れた反応だった。自分が差し出すものを受け取ることには慣れていても、自分の手元から何かを離すことには慣れていない人の顔。
母がすかさず口を挟む。
「無理を言うものではありません。アデルリーヌはただでさえ心を痛めているのよ」
「心を痛めておいでなら、なおさらです」
「イゼルダ」
父の声が硬く落ちる。
「そこまでにしろ」
「まだ申し上げます」
「いい加減にしなさい!」
母の声が初めて高くなった。東のサロンの静けさが、その一声でひび割れたように感じられる。母は扇を握りしめたまま、珍しく表情を隠さなかった。
「あなたはどうしてそう、自分のことばかり」
「自分のことを申し上げております。わたくしが嫁ぐ話なのですから」
「あなた一人の問題ではないでしょう!」
「ええ。ですからずっと、皆さまのお気持ちを優先してまいりました」
イゼルダは答えた。
「お姉様が辛くないように。お母様が困らないように。お父様の顔に泥を塗らないように。ずっとそうしてまいりました」
その言葉を口にすると、胸の奥から次々に記憶が浮かんだ。
姉の代わりに出席した舞踏会。姉の気まぐれで取りやめになった来客の埋め合わせ。姉が読みたくないと投げた手紙の返事。姉の機嫌を損ねた婦人への詫び。体調が悪いからと断られた乗馬会に代わりに顔を出し、「妹さんのほうが意外と気丈なのね」と笑われた昼。
そのたびに、イゼルダは笑ってきた。大丈夫ですと。気にしておりませんと。お姉様のお役に立てるなら嬉しいですと。
それが正しい妹だと信じていたからだ。
そうしていれば、いつか自分も家族として見てもらえると思っていたからだ。
でも、違った。
与え続けた先にあったのは感謝ではなく、当然だった。
「ですが、結婚までそうであれと仰るなら」
イゼルダは指先に力を込めた。膝の上で組んだ手が冷たい。
「わたくしは、もうできません」
「できないでは済まない」
父が言い切った。
「済ませていただきたいのです」
「戯れ言を」
父は低く吐き捨てた。そして机の上に置かれていた一通の封書を取る。厚手の羊皮紙に侯爵家の紋章が押されている。赤い蝋の光沢が朝日を受けて鈍く光った。
「ロシュフォール侯爵家へは、すでに前向きに検討すると返してある」
「……お返事を、なさったのですか」
「当然だ。相手を待たせるわけにはいかん」
イゼルダは一瞬、息をするのを忘れた。
まだ自分の承諾も取っていない。昨夜、自分ははっきり拒んだ。その言葉すら、父の中では最初から存在しなかったことになっている。
頬の内側を噛みそうになる。かろうじて堪えた。
「それは、承諾ではありません」
「同じことだ」
「違います」
「何が違う」
父の声には、もはや苛立ちを隠す気がなかった。
「お前はモンティエール家の娘だ。家が決めたことに従う。それだけの話だ」
「……わたくしの意思は」
「必要ない」
あまりにもはっきりとした返答だった。
イゼルダの背筋に、冷たいものがすっと通った。怒りが込み上げるより先に、心のどこかが妙に静まった。これで、はっきりした。
期待する余地は、最初からなかったのだ。
「必要ない、のですね」
「そうだ」
父は少しもためらわない。
「婚姻は家と家の結びつきだ。娘一人の好き嫌いで左右されるものではない」
「では、わたくしが嫌だと申し上げても」
「聞き入れる理由がない」
母が慌てて間に入ろうとする。
「お父様も、そんな言い方を」
「現実を教えているだけだ」
父の目は、もうイゼルダを説得する相手として見ていなかった。従わせるべき相手、あるいは無理やり形に押し込めればよい相手として見ている。
アデルリーヌが震える声で言った。
「そんな……お父様、もう少し穏やかに」
「お前は黙っていなさい」
父は姉を一蹴した。アデルリーヌはびくりとして口を閉じる。自分が庇われる側でない瞬間に、姉は途端に弱くなる。それを見ながら、イゼルダの中に、不思議なほど冷えた感情が広がっていった。
私はこの人たちのあいだで、ずっと都合よく強い役を押しつけられてきたのだ。
姉は守られる役。
母は調停する役。
父は決める役。
では自分は何か。
耐える役だ。
飲み込む役。
受け取る役。
差し出される役。
そして今日、その役目が結婚にまで拡張されようとしている。
「お前に選ぶ権利はない」
父は、ついにそう言った。
その一言は、部屋の空気を完全に止めた。
東のサロンに差し込んでいた朝の光が、急に冷たいものへ変わった気がした。紅茶の香りも、遠くで鳴いていた鳥の声も、すべてが薄く引いていく。その言葉だけが、硬く、明確に残る。
選ぶ権利はない。
娘だから。
家の一部だから。
役に立つから。
姉の代わりになれるから。
だから、自分にはない。
イゼルダは一度だけ瞬いた。まつげの先がかすかに震える。泣きたくはなかった。ここで涙を見せれば、結局また感情的だと片づけられるだけだ。
「そうですか」
ようやく、それだけ言えた。
父は勝ったと思ったのか、少しだけ顎を引いた。
「分かったなら」
「いいえ」
イゼルダは顔を上げた。
「分かりません」
父が眉をひそめる。母が息を止める。アデルリーヌは目を見開いた。
「わたくしには分かりません。どうして、結婚する当人に選ぶ権利がないのか。どうして、わたくしが嫌だと申し上げているのに、ないことにされるのか。どうして、お姉様を望んでいた方のもとへ、妹が差し出されることを、平然と当然と思えるのか」
声は震えていなかった。
むしろ、震えない自分にイゼルダは驚いていた。身体の奥ではたしかに怖い。けれど怖さよりも、いま口にしなければ自分が二度と戻れなくなるという感覚のほうが強かった。
「わたくしは、祝福されたいなどと申し上げておりません。愛されたいなどとも申し上げておりません。ただ、人の代わりとして売られるように嫁ぐのは嫌だと申し上げているだけです」
母がはっとしたように首を振る。
「売られるだなんて」
「違いますか」
イゼルダは母を見た。
「相手が誰を望んでいたかも関係なく。わたくしがどう思うかも関係なく。家に益があるから、よく似ているから、お前でよいと差し出されるのです。それを何と呼べばよろしいのでしょう」
「言葉が過ぎる」
父の声が一段低くなる。
「現実を申し上げております」
イゼルダはもう一度言った。昨夜と同じ言葉だ。けれど意味はもっと深いところへ沈んでいる。もう父にも母にも届かないのだと知りながら、それでも言わずにはいられなかった。
「わたくしは、この結婚を拒みます」
アデルリーヌが小さく呻くような声を漏らした。母は立ち上がりかけて、けれどすぐに座り直す。父はゆっくりとイゼルダを見た。そこには呆れと怒りと、そしてわずかな軽蔑があった。
「お前は、自分の立場を分かっていない」
「分かっております」
「いいや、分かっていない。お前は次女だ。家のために使われるのは当然だ」
「……そう仰るのですね」
「そうだ」
断定。
その断定の冷たさが、逆にイゼルダを支えた。
ああ、もういいのだ、と心のどこかで思えたからだ。言葉の奥を探らなくていい。優しさの欠片を期待しなくていい。この人は今、はっきり言った。自分を家のために使うのは当然だと。
それなら、こちらももう、ためらう必要はない。
イゼルダは椅子から立ち上がった。裾が静かに揺れる。朝の光が彼女の肩に落ち、灰青のドレスの襞に淡い影をつくった。
「失礼いたします」
母が驚いて声を上げる。
「イゼルダ、どこへ」
「少なくとも、この場でこれ以上申し上げることはございません」
「待ちなさい」
「待ちません」
自分でも驚くほど、きっぱりした声だった。
父が鋭く言う。
「命令だ、座れ」
「申し訳ございません」
イゼルダは一礼した。
「お断りいたします」
その一言に、母が顔を覆い、アデルリーヌが青ざめた。父は今度こそ激昂するかと思われたが、逆に妙に静かになった。激しく怒るより先に、娘の反抗をどう処分するか計算している顔だった。
「部屋を出たところで何も変わらんぞ」
「そうかもしれません」
「ならば」
「ですが」
イゼルダは扉の前で振り返った。
「わたくしが嫌だという事実だけは、変わりません」
その瞬間、アデルリーヌが堪えきれず泣き声を漏らした。
「どうしてそんなことを言うの……私は、あなたに幸せになってほしいのに」
「お姉様」
イゼルダは姉を見た。長い間、求めて求めて、それでも得られなかったものを見る目で。
「わたくしが幸せになってほしいと本気で思っておられるなら、この結婚を勧めるはずがありません」
姉の顔が凍りつく。
もう、それ以上は言わなかった。言えばまた泣かれる。責めすぎだと見なされる。けれど、たった今の一言だけは、どうしても引っ込めたくなかった。姉はいつも、自分が優しい側にいると思い込んでいる。何も奪っていない、ただ受け取ってしまうだけだと。けれど受け取ることをやめない限り、それは奪うことと同じなのだ。
扉を開ける。
朝の廊下の空気が、肌にひやりと触れた。室内よりもずっと呼吸がしやすい。扉の向こうで母の声がした。父の低い声も重なる。アデルリーヌのすすり泣きが遠くに混じる。けれどイゼルダは立ち止まらなかった。
歩きながら、胸の奥でさっきの言葉を繰り返す。
お前に選ぶ権利はない。
あれは呪いの言葉だ、とイゼルダは思った。
長い間、自分も無意識に信じかけていた呪い。
妹なのだから。
姉のほうが大事なのだから。
家のためなのだから。
差し出されるのは当然なのだから。
けれど、もう違う。
そう言われた時の痛みがあまりに明確だったからこそ、その言葉を受け入れてはいけないのだと分かった。自分の心が、はっきり拒絶したのだ。
窓辺まで来て足を止める。庭には朝日が満ちている。白い小石の道、剪定された生垣、冬を越えた草花の新芽。その穏やかさが、今の自分には遠い。だが遠いからこそ、逆にひとつのことがくっきり浮かんだ。
この家にいてはだめだ。
説得では変わらない。
涙でも変わらない。
拒絶を口にしても、なかったことにされる。
ならばもう、出るしかない。
その考えが、昨夜よりもさらに強く、確かな形で胸の中央に座った。修道院へ行く。神に仕えるためというより、まずは自分を守るために。自分の輪郭を失わないために。
廊下の窓から見える空は青く澄んでいた。雲が高い。風はまだ冷たいが、遠くに春の匂いが混じっている。どこか、ここではない場所の匂い。門の外の匂い。まだ見ぬ道の匂い。
イゼルダはゆっくりと息を吸った。
その時、背後から足音がした。軽く、急いだ足音だ。振り向くと、アデルリーヌ付きの若い侍女が戸惑った顔で立ち止まる。イゼルダの横を通ってサロンへ向かう途中だったのだろう。彼女はどう声をかけてよいか分からないように小さく頭を下げた。
「も、申し訳ございません、お嬢様」
「いいえ」
イゼルダは静かに首を振った。
侍女はそれだけでほっとしたように息をつき、扉の向こうへ急いで消えていった。おそらく、アデルリーヌの涙を拭うための香水か、鎮静用の茶でも持ってこいと言われたのだろう。
その背を見送りながら、イゼルダは少しだけ唇を引き結んだ。
やはりそうなのだ。
この家では、泣く者のためにすぐ人が走る。
けれど泣けない者のためには、誰も走らない。
泣けないほど、ずっと堪えてきた者のためには。
自室に戻ると、窓から差し込む光が朝よりもいくらか強くなっていた。机の上のインク壺、重ねられた便箋、刺繍枠の上で止まった針。部屋の中は昨夜と変わらないのに、自分だけが大きく遠ざかったような感じがする。
イゼルダは扉を閉め、ゆっくりと机の前に座った。
手はまだ少し震えている。だが、その震えはもはや迷いだけから来るものではなかった。覚悟を決めた人間の身体にも、震えは起こるのだと初めて知る。
インク壺の蓋に指をかけて、ふと止まる。
まだ早い。
手紙を書くなら、もっと準備がいる。
持ち出せるもの、行き先への伝手、門を出る時刻、誰に見つからず動くか。
考えることは多い。けれど逆に、それがイゼルダを落ち着かせた。傷ついた心は宙を掴もうとするが、具体的な段取りは人を現実に引き戻してくれる。
昨日までは、逃げることに罪悪感があった。
でも今は違う。
父が言ったからだ。
お前に選ぶ権利はない、と。
ならば、自分で選び取らなければ、本当に何も残らない。
イゼルダは机の引き出しを開けた。中にしまってあるのは、母の形見として唯一自分に譲られた小さな銀のロザリオ、少しばかりの小銭、予備の手袋、簡単な針仕事の道具。どれも小さい。どれも、この家の豪奢さとは釣り合わないほど慎ましい。けれど不思議と、それらだけが自分のものだと思えた。
ロザリオをそっと掌に乗せる。銀は朝の光を受けて静かに光った。冷たい。けれど、その冷たさは嫌ではない。現実の温度だった。
「その結婚が祝福でないことくらい、わかっています」
独り言のように呟くと、部屋の静けさがそれを受け止めた。
誰も祝福しない結婚。
少なくとも、自分自身が祝福できない結婚。
そんな場所へ歩いていくくらいなら、自分はまだ、祈りの中へ逃げ込むほうを選ぶ。いいえ、とイゼルダは心の中で訂正する。逃げ込むのではない。自分を取り戻すために行くのだ。
窓の外で、風が庭の若葉を揺らした。さわ、と軽い音が立つ。春のはじまりの音だ。柔らかいのに、どこか背中を押すような響きだった。
イゼルダはロザリオを握りしめた。
指のあいだに食い込む小さな金属の感触が、はっきりしている。
もう、忘れない。
この痛みも、屈辱も、父の言葉も。
そして、その言葉を聞いた瞬間に自分の中で立ち上がった拒絶も。
選ぶ権利はないと、そう言われた。
ならば自分は、その言葉を踏み越えるようにして選ぶしかない。
部屋の中で一人、イゼルダは背筋を伸ばした。泣かないまま、震えたまま、それでもまっすぐに前を見た。
次にこの家の誰かに呼ばれる時、自分はもう昨日までのイゼルダではいない。
その予感だけが、冷え切った胸の中心で、細い灯のように燃え続けていた。
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嫌がらせをされてあまりにも制服が汚れるので、毎回洗って着替えを用意しておいてくれる保健室のエリーナ先生。
昼休みと放課後は、図書室で過ごすことが多いので、いつも何かと気にかけてくれる司書のマッカートニーさんと、図書委員の優しい先輩達。
妹のリリアンは、本人に悪気は無いのだけど、嫌なことや自分が怒られそうになると全て姉のファナに押し付ける。
嫌なことがあればメソメソと泣き姉に頼ってばかりだった。
いつも明るく甘えん坊のリリアンは顔もとても可愛らしく屋敷の中心で、使用人たちも父親も甘やかして育てられた。
一方、ファナはいずれ婿を取り侯爵家を継がなければならないため、父親に厳しく躾をされていた。
明るくて元気だったはずのファナの笑顔は、大きくなるにつれ失ってしまっていた。
使用人達もぞんざいな態度を隠そうともしない。ファナはもう諦めていた。
そんななか唯一、婚約者のジェームズだけはファナのことを優先してくれる優しい男の子だった。
そう思っていたのに………
✴︎題名少し変更しました。
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