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第十四章 鋼の誓いと禁断の火
第250話 セイオンの撒いた毒
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セイオンからの悪意に満ちた挑戦状。
その書簡がもたらした衝撃は王都の屋敷に重く冷たい沈黙を落としていた。
ほんの数日前まで誓いの喜びに満ちていたこの場所は、今や世界の運命を左右する天秤の上で、身動きの取れない檻と化していた。
俺とカズエルが仲間たちに大量破壊兵器の、その本当の恐ろしさを語り終えた時、談話室の空気は絶望の色をさらに濃くしていた。
「……一つの都市を、そこに住む全ての人々を一瞬で……」
エルンの声は、か細く震えていた。
精霊の歌を愛し、命の調和を重んじる彼女にとって、その技術は想像を絶する冒涜的な力だった。
「そんなものが、この世界に生まれようとしているというのですか……。誰も勝者になれない、ただの滅びの光が」
セリスもまた、血の気の引いた顔で唇を噛みしめる。
戦士としての誇り、騎士としての誓い、その全てが絶対的な破壊力の前では無意味だと突きつけられたのだ。
「戦いではない。ただの蹂躙だ。……そのような兵器の存在を戦士として見過ごすことはできん」
レオナルドが心の底からの怒りを込めて言った。
俺たちは混沌の使徒が仕掛けた、この恐ろしいゲームの盤上で、どう動くべきか、その答えを見つけ出せずにいた。
***
重苦しい沈黙が数日続いた、ある日の午後。
屋敷の扉が慌ただしく叩かれた。
現れたのは王宮からの使者だった。その表情は切迫しており、息を切らしている。
「カイン様! 緊急の報告です! エルフェンリートの森、そして西方連合の諸侯から、正式な使節団が王宮に到着いたしました!」
「なんだって……!? 早すぎる……!」
「彼らはドワーフ王国が極秘裏に開発中と噂される、世界を脅かす新技術について、王国としての見解と……何より、双冠の英雄である皆様の明確な立場表明を強く求めております。……このままではドワーフ王国に対する包囲網が敷かれ、深刻な外交問題に発展しかねません……!」
セイオンの撒いた毒は俺たちが考えていたよりも遥かに速く、世界を蝕み始めていた。
奴は手紙を送るのと同時に、すでに各国の要人へ情報をリークしていたのだ。
「……始まったか。セイオンの本当の狙いが」
カズエルが冷ややかにつぶやく。
「奴は俺たちをこの外交問題の泥沼に引きずり込み、がんじがらめにするつもりだ。ドワーフを擁護すれば世界を敵に回し、糾弾すれば友を裏切ることになる。……俺たちを王都に釘付けにし、孤立させることが目的だろう」
「どうするのですか、カイン殿」
セリスが俺の顔を真剣な眼差しで見つめる。
「エルフの森の使節団はおそらく保守派の長老たち。彼らはこれを好機と捉え、ドワーフとの同盟を破棄し、カイン殿を再び糾弾するでしょう。英雄は危険な技術を黙認していたのか、と」
その言葉に俺は静かにうなずいた。
もう、この王都で答えを探している時間はない。会議室で言葉を弄している間に世界は破滅へと転がり落ちていく。
「……決めた」
俺は立ち上がった。その瞳にはもう迷いはなかった。
「俺たちはもう一度、ドワーフの都へ行く」
「カイン……!?」
「セイオンの狙いが俺たちをこの問題の渦中に引きずり込むことなら、その盤上から一度降りて、直接、ことの中心にいる人物と話をつけに行く。……ドワーフの鍛冶王、バルグラスとだ」
俺の決意に、仲間たちの顔に再び闘志の光が灯った。
そうだ、俺たちは決して、セイオンの掌の上で踊らされるだけの駒じゃない。
「使節団への対応はレオンハルト陛下に一任するしかない。俺たちは外交という名の言葉ではなく、現場という現実を動かす。俺たちが、この世界のざわめきを止めるんだ。そのために、まず、友と腹を割って話をしに行く」
俺たちはレオンハルト王にだけ、書面でその決意を告げた。若き王ならば、俺たちの意図を理解し、ギリギリまで時間を稼いでくれるはずだ。
再び、ドワーフの都へ。
だが今回は指輪を作るための甘い旅ではない。
セイオンの悪意を乗り越え、世界の破滅を食い止めるための、新たな、そして最も困難な旅が今、始まろうとしていた。
その書簡がもたらした衝撃は王都の屋敷に重く冷たい沈黙を落としていた。
ほんの数日前まで誓いの喜びに満ちていたこの場所は、今や世界の運命を左右する天秤の上で、身動きの取れない檻と化していた。
俺とカズエルが仲間たちに大量破壊兵器の、その本当の恐ろしさを語り終えた時、談話室の空気は絶望の色をさらに濃くしていた。
「……一つの都市を、そこに住む全ての人々を一瞬で……」
エルンの声は、か細く震えていた。
精霊の歌を愛し、命の調和を重んじる彼女にとって、その技術は想像を絶する冒涜的な力だった。
「そんなものが、この世界に生まれようとしているというのですか……。誰も勝者になれない、ただの滅びの光が」
セリスもまた、血の気の引いた顔で唇を噛みしめる。
戦士としての誇り、騎士としての誓い、その全てが絶対的な破壊力の前では無意味だと突きつけられたのだ。
「戦いではない。ただの蹂躙だ。……そのような兵器の存在を戦士として見過ごすことはできん」
レオナルドが心の底からの怒りを込めて言った。
俺たちは混沌の使徒が仕掛けた、この恐ろしいゲームの盤上で、どう動くべきか、その答えを見つけ出せずにいた。
***
重苦しい沈黙が数日続いた、ある日の午後。
屋敷の扉が慌ただしく叩かれた。
現れたのは王宮からの使者だった。その表情は切迫しており、息を切らしている。
「カイン様! 緊急の報告です! エルフェンリートの森、そして西方連合の諸侯から、正式な使節団が王宮に到着いたしました!」
「なんだって……!? 早すぎる……!」
「彼らはドワーフ王国が極秘裏に開発中と噂される、世界を脅かす新技術について、王国としての見解と……何より、双冠の英雄である皆様の明確な立場表明を強く求めております。……このままではドワーフ王国に対する包囲網が敷かれ、深刻な外交問題に発展しかねません……!」
セイオンの撒いた毒は俺たちが考えていたよりも遥かに速く、世界を蝕み始めていた。
奴は手紙を送るのと同時に、すでに各国の要人へ情報をリークしていたのだ。
「……始まったか。セイオンの本当の狙いが」
カズエルが冷ややかにつぶやく。
「奴は俺たちをこの外交問題の泥沼に引きずり込み、がんじがらめにするつもりだ。ドワーフを擁護すれば世界を敵に回し、糾弾すれば友を裏切ることになる。……俺たちを王都に釘付けにし、孤立させることが目的だろう」
「どうするのですか、カイン殿」
セリスが俺の顔を真剣な眼差しで見つめる。
「エルフの森の使節団はおそらく保守派の長老たち。彼らはこれを好機と捉え、ドワーフとの同盟を破棄し、カイン殿を再び糾弾するでしょう。英雄は危険な技術を黙認していたのか、と」
その言葉に俺は静かにうなずいた。
もう、この王都で答えを探している時間はない。会議室で言葉を弄している間に世界は破滅へと転がり落ちていく。
「……決めた」
俺は立ち上がった。その瞳にはもう迷いはなかった。
「俺たちはもう一度、ドワーフの都へ行く」
「カイン……!?」
「セイオンの狙いが俺たちをこの問題の渦中に引きずり込むことなら、その盤上から一度降りて、直接、ことの中心にいる人物と話をつけに行く。……ドワーフの鍛冶王、バルグラスとだ」
俺の決意に、仲間たちの顔に再び闘志の光が灯った。
そうだ、俺たちは決して、セイオンの掌の上で踊らされるだけの駒じゃない。
「使節団への対応はレオンハルト陛下に一任するしかない。俺たちは外交という名の言葉ではなく、現場という現実を動かす。俺たちが、この世界のざわめきを止めるんだ。そのために、まず、友と腹を割って話をしに行く」
俺たちはレオンハルト王にだけ、書面でその決意を告げた。若き王ならば、俺たちの意図を理解し、ギリギリまで時間を稼いでくれるはずだ。
再び、ドワーフの都へ。
だが今回は指輪を作るための甘い旅ではない。
セイオンの悪意を乗り越え、世界の破滅を食い止めるための、新たな、そして最も困難な旅が今、始まろうとしていた。
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