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それでもやっぱりお隣さん

少しはときめいてよ

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 しっ、下着っ、透けてるっ!?

 今日の私、ほとんど白に近い淡いピンクのブラウスに、シフォン素材の小花柄のスカートを身につけていた。薄い布地な上に色合いも濃くなくて、濡れたらしっかりブラジャーが透けてしまう仕様で。

 一日のうちに、ショーツだけじゃなく、上まで見せてしまうとか……私、下手したら温和はるまさの中で痴女に分類されちゃうよっ。

 考えただけで寒さからだけじゃない震えが身体を駆け上ってきて、私はギュッと胸元を抱きしめたまま必死で言葉を探す。

「あっ、あのっ。わ、私っ、ハルにいにとっては妹みたいな……ものだと思、うし……えっと……そ、そんな私のし、下着姿なんて見ても……きっとハルにい的には何ともないと思う、けどっ。えっと……そ、それでもやっぱり、わたっ、私が……! 恥ずかしい……ので……タオルか何か貸してもらえると……嬉しい、です……っ」

 さ、寒いですしね!?
 吐き捨てるようにそう付け加えてから、私は自分でも何を言っているのかよく分からなくなっていた。

 でも、重要なのは「タオルが欲しい」という気持ちが通じること。最悪そこさえ伝わっていれば、もう他はどうでも……。

 突っ伏した状態のまま、ちらりと盗み見た温和はるまさは、一応私への配慮からか、そっぽを向いてくれていて……。
 そういうところは、昔と変わらず優しいな、と思ってしまう。

「待ってろ、バカ音芽おとめ
 わざわざ私の名前に「バカ」とつけてそう言い置くと、温和はるまさが浴室を出て行った。

 私は彼の立ち去る気配を顔を伏せたままで感じながら、膝が水に濡れてズキズキと痛むのに顔をしかめる。

「あーん、もうっ。痛いし寒いし恥ずかしいしっ、最悪っ!」
 温和はるまさがそばにいないのをいいことに、吐き出すように弱音を吐いてみる。

 もしこれが、妹同然の私じゃない女性とだったなら、温和はるまさはこんな状態の異性に対してどんな対応をするんだろう。

 もしかしたらエッチな気分になって、思わず手を伸ばしてしまったりとか……そんなことになったりするの、かな。
 勝手に想像して、勝手に悔しくなった。

温和はるまさのバカぁ。私にだって……少しはときめいてよ……」

 現状で温和はるまさを異性と認識するのが恥ずかしくて、わざと「ハルにい」と連呼しまくりで線引きをしておいて、そんなことを思う。

 私の方こそズルイ――よね。
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