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(9)そのまま俺に尽くせよ
帰国子女な二面性ありの鬼上司
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(帰国子女な二面性ありの鬼上司!)
に塗り替えられている。
この春いきなりふらりと本社に配属されてきたエリート商社マンな立神本部長。
配属直後の自己紹介では「立神信武です。先日ニューヨーク支社から帰国したばかりで日本にはまだ不慣れで分からないことだらけです。皆さん、どうかご教授ください。僕も、一日も早く会社のお役に立てるよう鋭意努力させていただきますので。よろしくお願いします」みたいにふんわりした笑顔を見せておいて。
業務開始となるや否や、美貌とやわらかな自己紹介にほだされて腑抜けた接し方をしてくる女子社員らに「俺に気安く声をかけてくるとか……身体を差し出す覚悟は出来てるんだろうな?」みたいに容赦ない鉄槌を下す二重人格腹黒本部長に違いないのだ!
(絶対この人、僕と俺の顔を場面ごとに使い分けるタイプ!)
日和美が思わずそう結論付けてしまう程に、不破の時の〝僕彼〟も、立神になってからの〝俺彼〟も、やけに板についているように思えて。
日和美には、どうしてもそうとしか考えられなかった。
そうしてそれは、実は満更間違いではなかったのだと彼女自身が知るのはまだ少し先の話。
***
「俺の仕事が気になる?」
日和美が仕事のことを問うた途端、信武がニヤリと笑った。
何だかそれがすっごく不吉に思えて、日和美は慌てて視線をそらせる。
「あっ、あのっ。べっ、別に今すぐ教えて頂かなくても大丈夫……かも知れません」
「かも知れませんって何だよ」
自分のことなのに他人事のように言い募ったら、目を眇められて珍獣でも見るような視線を送られて。
そのままククッと楽し気に笑われてしまった。
「――まあとりあえず無職ってわけじゃねぇから安心しろ。治療費も保険証なしだったから結構な金額だっただろ。全額きっちり返してやるから診療明細書を俺に渡せ。あと……アレだ。立て替えてもらった服代とかもキッチリ払うからちゃんと請求しろ」
――い、いえっ。治療費の実費分はともかく全額は要らないですし、服代だって要りません……!
そう言い募ろうとしたら、まるで反論は許さないとでも言うように腰に回された腕を狭められて、日和美は思わず「ひゃっ」と間抜けな悲鳴を上げる羽目になる。
「……ホント色気ねぇな」
言葉裏腹。
チッと舌打ちをしながらも、スルリとあごを捕らえられて今にも唇を奪われそうに顔を近付けられて。
日和美は懸命に身体を突っ張ってそれを阻止したのだけれど。
まるでそれを予期していたみたいに腰に回された手でわき腹をくすぐられて、いとも簡単にふにゃりと身体から力を抜かれてしまう。
「やひゃっ!」
変な声をあげて身を捩ったと同時――。
「ぁ、んんっ……!」
当然の成り行きだと言わんばかりに信武に唇を塞がれた日和美は、余りのことに瞳を見開いた。
しかも!
されたのが、あろうことか唇に触れるだけの軽いキスではなく、口中を舌でかき回すようなねっとりとした大人のキスだったからたまらない。
くすぐられて無防備に開けてしまっていた唇を割るように信武の舌に侵入された日和美はパニック状態。
経験値不足で息継ぎだってどうしたらよいか分からないし、今にも酸欠で倒れてしまいそう。
なのに、信武はそんな日和美にさらなる追い討ちをかけてくるかのようにキスを解くなり言い募ってきたのだ。
「俺、記憶失くしてた間のこと、ほぼ忘れちまってんだけどさ……お前のことすげぇ気に入ってたって気持ちだけは残ったみたいなんだわ。どうやら俺と一緒に住むことに関しちゃ、日和美も異存はねぇみてぇじゃん? これってお前をものにしたい俺としちゃあ結構好都合なわけ。なぁ日和美。折角だからさ。お前も腹括ってそのまま俺に尽くせよ」
さらりと不破からいい感じに思われていたのかも知れないと言う嬉しい発言を織り交ぜながら。
それを吹き飛ばすほどのとんでもない提案を持ちかけてニヤリと笑う信武に、日和美は唇を奪われたショックも相まって、ただただ口をパクパクさせることしか出来なかった。
そ、そもそも!
――〝ものにしたい〟って何ですか⁉︎
に塗り替えられている。
この春いきなりふらりと本社に配属されてきたエリート商社マンな立神本部長。
配属直後の自己紹介では「立神信武です。先日ニューヨーク支社から帰国したばかりで日本にはまだ不慣れで分からないことだらけです。皆さん、どうかご教授ください。僕も、一日も早く会社のお役に立てるよう鋭意努力させていただきますので。よろしくお願いします」みたいにふんわりした笑顔を見せておいて。
業務開始となるや否や、美貌とやわらかな自己紹介にほだされて腑抜けた接し方をしてくる女子社員らに「俺に気安く声をかけてくるとか……身体を差し出す覚悟は出来てるんだろうな?」みたいに容赦ない鉄槌を下す二重人格腹黒本部長に違いないのだ!
(絶対この人、僕と俺の顔を場面ごとに使い分けるタイプ!)
日和美が思わずそう結論付けてしまう程に、不破の時の〝僕彼〟も、立神になってからの〝俺彼〟も、やけに板についているように思えて。
日和美には、どうしてもそうとしか考えられなかった。
そうしてそれは、実は満更間違いではなかったのだと彼女自身が知るのはまだ少し先の話。
***
「俺の仕事が気になる?」
日和美が仕事のことを問うた途端、信武がニヤリと笑った。
何だかそれがすっごく不吉に思えて、日和美は慌てて視線をそらせる。
「あっ、あのっ。べっ、別に今すぐ教えて頂かなくても大丈夫……かも知れません」
「かも知れませんって何だよ」
自分のことなのに他人事のように言い募ったら、目を眇められて珍獣でも見るような視線を送られて。
そのままククッと楽し気に笑われてしまった。
「――まあとりあえず無職ってわけじゃねぇから安心しろ。治療費も保険証なしだったから結構な金額だっただろ。全額きっちり返してやるから診療明細書を俺に渡せ。あと……アレだ。立て替えてもらった服代とかもキッチリ払うからちゃんと請求しろ」
――い、いえっ。治療費の実費分はともかく全額は要らないですし、服代だって要りません……!
そう言い募ろうとしたら、まるで反論は許さないとでも言うように腰に回された腕を狭められて、日和美は思わず「ひゃっ」と間抜けな悲鳴を上げる羽目になる。
「……ホント色気ねぇな」
言葉裏腹。
チッと舌打ちをしながらも、スルリとあごを捕らえられて今にも唇を奪われそうに顔を近付けられて。
日和美は懸命に身体を突っ張ってそれを阻止したのだけれど。
まるでそれを予期していたみたいに腰に回された手でわき腹をくすぐられて、いとも簡単にふにゃりと身体から力を抜かれてしまう。
「やひゃっ!」
変な声をあげて身を捩ったと同時――。
「ぁ、んんっ……!」
当然の成り行きだと言わんばかりに信武に唇を塞がれた日和美は、余りのことに瞳を見開いた。
しかも!
されたのが、あろうことか唇に触れるだけの軽いキスではなく、口中を舌でかき回すようなねっとりとした大人のキスだったからたまらない。
くすぐられて無防備に開けてしまっていた唇を割るように信武の舌に侵入された日和美はパニック状態。
経験値不足で息継ぎだってどうしたらよいか分からないし、今にも酸欠で倒れてしまいそう。
なのに、信武はそんな日和美にさらなる追い討ちをかけてくるかのようにキスを解くなり言い募ってきたのだ。
「俺、記憶失くしてた間のこと、ほぼ忘れちまってんだけどさ……お前のことすげぇ気に入ってたって気持ちだけは残ったみたいなんだわ。どうやら俺と一緒に住むことに関しちゃ、日和美も異存はねぇみてぇじゃん? これってお前をものにしたい俺としちゃあ結構好都合なわけ。なぁ日和美。折角だからさ。お前も腹括ってそのまま俺に尽くせよ」
さらりと不破からいい感じに思われていたのかも知れないと言う嬉しい発言を織り交ぜながら。
それを吹き飛ばすほどのとんでもない提案を持ちかけてニヤリと笑う信武に、日和美は唇を奪われたショックも相まって、ただただ口をパクパクさせることしか出来なかった。
そ、そもそも!
――〝ものにしたい〟って何ですか⁉︎
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