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(14)その女性は誰ですか?
ゲロ甘系?
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「えっと……お仕事か何か、ですか?」
今日の業務に支障が出ないよう鎮痛剤を飲みながら聞いたら、信武が「ああ」とうなずいて日和美の頭をやんわり撫でてくれて。ほんの少し肩の力が抜けた日和美だ。
「なぁ。朝食の支度。くっそ簡単なもんになっけど俺にさせろ。――お前は俺が呼ぶまで寝室で布団にくるまっとけ」
「けど――」
「腹、まだ痛ぇんだろ? 仕事も休む気ねぇーみてぇだしさ。家にいる時くらい俺に甘えとけ」
信武自身も、しばらくはバタバタするみたいな宣言をしておきながら、この言いよう。
不破みたいにふんわりほわほわな綿菓子的甘さではないけれど、信武も相当に彼女をダメにするゲロ甘系の男らしい。
うー、と尚も言い募ろうとした日和美を、「素直に言うこと聞けねぇんならお姫様抱っこで寝室まで運ぶけどいいんだな?」と脅しつけてくるとか……ホント酷い。
「信武さんだって忙しくなるって言ったくせに」
すごすごと寝室へ向かいながらもそう言わずにはいられなかった日和美だ。
そんな日和美に信武が「バーカ。俺のはちぃーとサボりすぎたツケが回ってきただけだ。気にすんな」とニヤリとする。
信武が記憶喪失の男性・不破として山中家にいた期間なんて十日足らずだ。
それなのに。
作家と言う彼の職業を思えば、締め切りなどで作業が大詰めになっているのかも知れないけれど、超過密スケジュールですね⁉︎と思わずにはいられない。
(ちょっと前に蜜口が出たばかりなのに。休む間もなくすぐ別のお仕事に追われちゃうなんて。売れっ子作家さんって……ホント大変なんだ)
無意識。そんなことを思いつつ。お腹をかばうみたいに下腹部に手を当てながら寝室へ向けてトボトボと歩いていたら、背中越し。信武に「こんな時に早く帰れねぇですまねぇな? マジで一人で大丈夫か?」と投げかけられる。
大丈夫も何も、今までずっと。毎月一人で乗り越えてきた生理痛だ。
別に今更そんなに心配されなくても平気なんだけどな?と思った日和美だったけれど。
そこでふと、昨夜信武が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたことを思い出して、ぶわりと顔が熱くなった。
***
昨夜は風呂から上がってしばらくしたころ、湯冷めして身体を冷やしてしまったのだろうか。
生理痛が段々酷くなってきて、日和美はソファーでお腹をかばうみたいに身体を縮こまらせて痛みに耐える羽目になった。
そんな日和美を横に座って不機嫌そうに見下ろしていた信武が、何も言わずにふぃっと離れて行った時にはお腹の痛みも手伝って、泣きそうになって。
(こんな時こそ抱き締めてくれればいいのに)
とか、何とも勝手なことを思ってしまった。
今日の業務に支障が出ないよう鎮痛剤を飲みながら聞いたら、信武が「ああ」とうなずいて日和美の頭をやんわり撫でてくれて。ほんの少し肩の力が抜けた日和美だ。
「なぁ。朝食の支度。くっそ簡単なもんになっけど俺にさせろ。――お前は俺が呼ぶまで寝室で布団にくるまっとけ」
「けど――」
「腹、まだ痛ぇんだろ? 仕事も休む気ねぇーみてぇだしさ。家にいる時くらい俺に甘えとけ」
信武自身も、しばらくはバタバタするみたいな宣言をしておきながら、この言いよう。
不破みたいにふんわりほわほわな綿菓子的甘さではないけれど、信武も相当に彼女をダメにするゲロ甘系の男らしい。
うー、と尚も言い募ろうとした日和美を、「素直に言うこと聞けねぇんならお姫様抱っこで寝室まで運ぶけどいいんだな?」と脅しつけてくるとか……ホント酷い。
「信武さんだって忙しくなるって言ったくせに」
すごすごと寝室へ向かいながらもそう言わずにはいられなかった日和美だ。
そんな日和美に信武が「バーカ。俺のはちぃーとサボりすぎたツケが回ってきただけだ。気にすんな」とニヤリとする。
信武が記憶喪失の男性・不破として山中家にいた期間なんて十日足らずだ。
それなのに。
作家と言う彼の職業を思えば、締め切りなどで作業が大詰めになっているのかも知れないけれど、超過密スケジュールですね⁉︎と思わずにはいられない。
(ちょっと前に蜜口が出たばかりなのに。休む間もなくすぐ別のお仕事に追われちゃうなんて。売れっ子作家さんって……ホント大変なんだ)
無意識。そんなことを思いつつ。お腹をかばうみたいに下腹部に手を当てながら寝室へ向けてトボトボと歩いていたら、背中越し。信武に「こんな時に早く帰れねぇですまねぇな? マジで一人で大丈夫か?」と投げかけられる。
大丈夫も何も、今までずっと。毎月一人で乗り越えてきた生理痛だ。
別に今更そんなに心配されなくても平気なんだけどな?と思った日和美だったけれど。
そこでふと、昨夜信武が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたことを思い出して、ぶわりと顔が熱くなった。
***
昨夜は風呂から上がってしばらくしたころ、湯冷めして身体を冷やしてしまったのだろうか。
生理痛が段々酷くなってきて、日和美はソファーでお腹をかばうみたいに身体を縮こまらせて痛みに耐える羽目になった。
そんな日和美を横に座って不機嫌そうに見下ろしていた信武が、何も言わずにふぃっと離れて行った時にはお腹の痛みも手伝って、泣きそうになって。
(こんな時こそ抱き締めてくれればいいのに)
とか、何とも勝手なことを思ってしまった。
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