【完結】【R18】溺愛もふもふ甘恋同居〜記憶喪失な彼のナイショゴト〜

鷹槻れん

文字の大きさ
95 / 169
(17)サイン会ハプニング

デビュー後の経緯

しおりを挟む
 デビューして以来、こんなことはなかったのだから一度ぐらい大目に見てくれてもいいのに、どうやら出版社側の判断は信武しのぶとは真逆。
 〝原稿を落とさない作家〟と言う実績イメージをどうしても守らせたかったらしい。

 だが、タイミングが悪すぎて信武としては納得がいかなかったのだから仕方がない。



「先生って言うのはね、私ら編集に迷惑をかけない有難ぁーい存在に対してのみ使われる呼称なの! 分かる?」

「嘘つけ」

 信武は締切り破り常習犯の作家仲間が、ご丁寧に○○先生と(時には猫撫で声で)編集者から呼ばれているのを知っている。

 なのに自分はこの担当から締め切りを守ろうが守るまいが先生だなんて呼ばれたこと、それこそのだ。

 そもそもこんな風に作家の自宅へ自由に出入り出来る――要するに合鍵を持っている――不届きな編集者がそんなに居てたまるか!というのが信武の言い分だ。

 まぁそれもそのはず。

 目の前の女・土屋つちや茉莉奈まりなは、父・立神たつがみ信真のぶざね実姉じっし・土屋沙耶香さやかの一人娘。信武にとっては従姉いとこに当たる、いわゆるなのだから。

 六つ年上の茉莉奈は、幼い頃から頭脳明晰めいせき容姿端麗たんれいで、何かと面倒見の良い姉御肌あねごはだ

 実際信武は高校受験や大学受験の折、家庭教師として彼女に勉強を教えてもらったことがある。

 茉莉奈は大学を卒業すると同時に信武の父親が社長を務める大手出版社『玄武げんぶ書院』で編集者として働き始めていたから、信武が大学受験の時にはすでに社会人。
 それなのに、時間をやりくりして信武の勉強を見てくれた、いわゆる恩人なのだ。

 子供心にそんな茉莉奈のことを〝異性として〟意識していた時期もある信武だけれど、まぁいま思えばあんなの、一過性の流行病はやりやまいみたいなもの。

 日和美ひなみのことを本気で想うようになったから余計に分かる。
 憧れと恋愛は別物だ、と――。


***


 Webpediaウェブペディアにも出ているように、信武しのぶは高校生のころ『丸川書店』が主催する『マルカワ雷撃文庫』で新人賞を獲って商業作家デビューを果たしたのだが、その当時すでに『玄武書院』で編集者として働いていた茉莉奈まりなが、「信武のバカ! 何でよそに応募するのよ!」とすごく悔しがったのを覚えている。

 信武としては信真おや茉莉奈いとこのいる『玄武書院』の公募へチャレンジすることだけはなしだと思っていただけなのだけれど……。

 広いようで狭い業界。
 いくらよその出版社に出しても、デビューが決まるほどの傑作を生み出してしまえば、素性にだって自然と気付かれるもので。

 ましてや信武は本名(Shinobu Lichères Tatsugami)のミドルネーム、〝Lichèresリシェール〟をちょっぴり変化させただけの〝リシュエール〟をペンネームにしてしまっていたから、余計にバレやすかった。

 丸川書店の社長とも懇意こんいにしていた父親に受賞と作家デビューのことがダダ漏れてしまった結果、茉莉奈にも伝わったのだ。

 当時はまだ実家住まいだったため、どうしても受賞の連絡あれこれは家の方の連絡先を使わないわけにはいかなかったのだから仕方がない。

 応募の際に記載したミドルネーム抜きの本名〝信武〟という割と目立つ名前も後押しして、丸川の社長もすぐに「おや、この名前は……」と気付いたらしい。

 結局デビュー作の『ひとりぼっちの竜王と、嫌われものの毒姫さま』のみリシュエールのペンネームで『丸川書店』から。
 以後は丸っと父親の出版社『玄武書院』へ引き受けられる形になって、ペンネームもその時にリシュエールから立神信武に統一した信武だ。

 そうしたのにはちゃんと理由があって――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫のつとめ

藤谷 郁
恋愛
北城希美は将来、父親の会社を継ぐ予定。スタイル抜群、超美人の女王様風と思いきや、かなりの大食い。好きな男のタイプは筋肉盛りのガチマッチョ。がっつり肉食系の彼女だが、理想とする『夫』は、年下で、地味で、ごくごく普通の男性。 29歳の春、その条件を満たす年下男にプロポーズすることにした。営業二課の幻影と呼ばれる、南村壮二26歳。 「あなた、私と結婚しなさい!」 しかし彼の返事は…… 口説くつもりが振り回されて? 希美の結婚計画は、思わぬ方向へと進むのだった。 ※エブリスタさまにも投稿

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。 貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。 そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。 紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。 そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!? 突然始まった秘密のルームシェア。 日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。 初回公開・完結*2017.12.21(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.02.16 *表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。

処理中です...