【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん

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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』

葵咲の同級生1

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 新幹線は指定席を取っていたので、座れないという心配もなく、私たちはのんびりした気分で予約した席に向かった。

 理人りひとに、荷物を棚に上げてもらっていたら、突然前に座っていた若い男性から声をかけられた。

「――もしかして、丸山さん?」

 見れば、高校時代クラスメイトだった正木まさきくんで。

「わ、正木くん!?」

 懐かしさに思わず声が弾んでしまってから、しまった、と思う。

 案の定、理人がすかさず私の後ろに立って、「どなた?」なんてわざとらしく聞いてきた。

「高校生の頃のクラスメイトの正木くん。正木くん、こちらは――」

 私が紹介するより先に、理人がずいっと私の前に出る。

「はじめまして。池本理人です。葵咲きさき――あ、丸山さんとお付き合いさせていただいています」

 わざとらしく一度、葵咲、と呼んでから丸山さん、と言い直したように聞こえた。

 いつもスーツ姿の理人は、今日は白のサマーニットに、黒のスキニーというラフな格好で、実際の年齢より幾分若く見える印象だった。だからかな。

 Tシャツにジーンズといういでたちの正木くんが、値踏みするように理人を見てから、
「あ、丸山の彼氏さんでしたか。俺は正木とおるです。彼女とは出席番号が近かったご縁で学生時代、かなり仲良くしていただいてました」
 わざと丸山、と私を呼び捨てにして、ことさら仲がよかったとか強調したように感じた。そういう子供っぽい反応が、何だか理人といい勝負で。


 私は双方の口ぶりに、ぴりぴりとした緊張感を覚えてしまって、何だかソワソワと落ち着かない。

 その空気を何とかしたくて、「正木くん、今日はどうしたの?」と聞けば、お盆間、おじいさんとおばあさんがやっておられる商売の手伝いに行くことになっている、と。

「結構人が来るからさ。バイトがてら俺も借り出されちゃって」

 ここ数年はお盆の恒例行事なんだ、と言って、彼は苦笑した。

「大変ですね。僕たちは今から二人で旅行なんです」

 にこやかに理人が言う。“二人で”というところを強調して。何だか少し自慢が入っているような?

 結局、席が向かい合わせだったこともあって、一時間余りの新幹線の道行きの間中、そんな男性陣に挟まれて、私は少しも気持ちが休まらなかった。

 表面上はふたりとも仲良く会話してくれているんだけど……。

 こんなことなら理人とドライブを楽しんだほうが良かったのかも。

 そんな風に思った。

***

 どうやら正木くんも私たちと同じ駅で降りるらしい。

 それを聞いた瞬間の理人の顔を思い出すと、測らず溜息がこぼれる。

(機嫌、悪そうだなぁ)

 始終ニコニコと笑顔だけど、それ自体が常態ではない。

(絶対物凄く機嫌が悪い……)

 理人の横顔を見て、私は何度目になるか分からない密かな吐息を漏らした。

「葵咲、元気ないけど大丈夫? 気分悪かったりする?」

 そんな中でも、理人は私の変化にはとても敏感で。

「ううん。そういうわけじゃないの。新幹線に乗るの、久しぶりだったからちょっと疲れちゃっただけ……」

 実際はこの空気が耐えられなくてのことなんだけど、二人が笑顔で取り繕っている以上、私が敢えて指摘するのもおかしいかなって思った。

「……少し眠る?」

 到着までまだあと30分くらいかかるし。

 理人がスマホの時刻を確認しながら言う。

「おいで」

 うん、とも眠る、とも答えていないのに、彼は半ば強引に私の頭を自分の肩に持たせかけるように傾けさせた。

(う……。なんか恥ずかしい……)

 目の前に同級生がいて……甘えたみたいなこの姿を見られているんだと思うと恥ずかしくて堪らない。

 でも、もし今、身体を起こしたりなんかしたら、理人の厚意を踏みにじることになる。

 自分の羞恥心と理人の気持ちを天秤にかけて、私は理人への気遣いを選んだ。

「……ごめんね。せっかくの旅行なのに」

 恥ずかしいので、努めて正木くんのほうは見ないようにして理人の耳元に唇を寄せた状態でそうつぶやくと、私は観念して理人の肩に顔を埋めた。

 ぐっと近づいてしまったからかな。

 呼吸するたびにふわりと鼻腔をくすぐるさわやかなシトラス系の香りに、私は何だかドキドキと落ち着かない気持ちになってくる。

 肌を重ねているときに、時折理人から香るそのにおいは、いつの間にか性的なイメージとともに私の脳にインプットされていた。

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