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■手術しようと思うんだ■オマケ的短編⑧

僕が手術を決意した理由

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葵咲きさき、僕、手術しようと思うんだ」


 うちの大学図書館で一番頼りになっていたバイトの鈴木くんが卒業してしまって以来、ほんの少し人手不足。

 いや、人手不足というより……人手は足りているけれど、僕への負担が増えた感じというのかな。

 鈴木くん程うちの図書館のことを熟知しているバイトの子が、今はいないから。

 自分が如何に彼に頼っていたのか思い知らされて。


 ちょっぴり無理がたたってしまったらしい。



 このところ、僕は少し不調なんだ。


「目?」

 今日は眼鏡をかけているからだろうな。

 何となく葵咲きさきちゃんがソワソワして落ち着かない。

 第一に、僕の顔を見て話してくれない。


 ほらね、今だってちらっとこちらを見たものの、すぐに視線を逸らしてしまった。



「うん。僕さ、無理するとすぐ〝麦粒腫ものもらい〟が出来てしまうだろ?」


 腫れてこそいないものの、今も目にコロコロとした違和感があって、コンタクトレンズが入れられないんだ。

 それで眼鏡でしのいでいるわけだけど、僕の眼鏡姿に慣れてくれない葵咲ちゃんの距離感が辛い。


「そんなに酷いの?」

「ん? 麦粒腫これは今回それほどでも」

 酷い時はまぶたが腫れてしまうので、それに比べたらまだまだ。


「――? 酷くないのに手術するの?」

 癖になっているから?と続ける葵咲ちゃんに、僕は言葉が足りなかったと反省する。


葵咲きさき、おいで?」

 手を広げて誘ってみるけど、「あ、あの、今はちょっと」と真っ赤になってうつむく葵咲ちゃんに、僕は小さく溜め息をひとつ。


「ほらね、それ。――それなんだよ」


 僕が手術を決意した理由!



 言いながら有無を言わせず距離を削って、葵咲ちゃんを腕の中にギューッと抱きしめる。

「や、あのっ、理人りひとっ、今はちょっと」


 慌てて僕から視線を逸らす葵咲ちゃんを捕まえて、ソファに押し倒すと、上からじっと見下ろした。


「目、そらさないで? 僕を見て?」

 言っても無駄だと分かっていても、見て欲しい。

「め、がね……外して……くれたら」

 そうすれば見られるのだと、葵咲ちゃんが目端めはしうるませる。


 葵咲きさきちゃんは僕の眼鏡姿がダメらしい。


 好きならもっと見てくれても構わないのに。
 正面から見つめられると照れてしまっていけないんだとか。
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