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■敵いっこない■クリスマス書き下ろし

ミニスカサンタ

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理人りひと、メリークリスマス」


 理人が仕事を終えて帰宅すると、葵咲きさきが可愛いミニスカートのサンタクロースになっていた。

「葵咲……!?」

 言うまでもなく、玄関先で扉が閉まり切るのも待てないみたいに理人が葵咲を抱きしめる。

 扉の隙間からこの可愛いサンタクロースが、自分以外の誰かに見られたらと思うと、理人は気が気じゃなかったのだ。


「――それ、どうしたの?」

 聞けば、大学の友人から借りたのだと言う。

「……理人、こう言うの、好き?」

 理人の腕にきつく抱きしめられたまま、上目遣いに葵咲が問えば、「当たり前だろ。けど――お願いだから僕以外には見せないで?」と吐息混じりの声が返った。

 仕事着にしているスーツの上にコートを羽織ったままの理人からは、何となく埃っぽいようなにおいがして。

「今日も……書庫?」

 聞けば、「仕事だからね」とささやくように耳打ちされた。



「ごめんね。葵咲きさきはもう大学、休みに入ってるのに」


 学生は冬休みが12月23日から始まっているけれど、職員である理人りひとの年末年始の休暇は29日からだ。

 ついでに言うと、終わりだって年明け3日までの理人に対して、葵咲は7日まで。

 どうあっても埋められない社会人と学生の壁が、理人にはどうしようもなくもどかしい。

 となれば、必然的に自分と離れているときの恋人の動向が気になってしまうのが理人という男だ。


「ね、葵咲。今日は何をして過ごしたの?」

 聞けば、「うまくできたか分からないんだけど」と葵咲が小さく身じろいで。


 いそいそと理人の手を引いて、リビングへ続く扉を開けた。


 帰宅してすぐ葵咲きさきを抱きしめて、彼女の髪の毛に顔を埋めていた理人りひとは気付くのが遅れたのだ。


 リビングに、葵咲手作りのご馳走が並んでいる気配に。



「私、手際悪くてすごく時間かかっちゃった」


 眉根を寄せる葵咲がたまらなく愛しくて、理人は葵咲をギュッと腕の中に閉じ込める。


「葵咲、ありがとう」

 ふっと気の緩んだ時や、素の自分をさらけ出したいときなんかに、理人の口からつい出る「葵咲ちゃん」という、幼い頃と変わらぬ葵咲への呼びかけ。

 葵咲は理人にそう呼ばれるのがすごく好きで。


 いつか自分も理人から「葵咲ちゃんにこう呼ばれてみたかった」みたいに思われる呼び方を模索したいと思っていたりするのだけど。
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