【完結】【R18】組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~

鷹槻れん

文字の大きさ
133 / 237
32.芽生を手放す覚悟

枯れない花

しおりを挟む
 いつもなら千崎せんざきが付き従っているところだが、丁重に断って一人で出向いたのは、女々しくもそんなものを頼んでいる自分を誰にも見られたくなかったからだ。

 もしかしたら、芽生めいを手放す決意をしたというのを、千崎に悟られたくなかったのかもしれない。

(このに及んで、万が一にも手放せなかった場合を想定をしてんのかよ、俺……)

 千崎に、芽生と離れるために餞別せんべつ代わりの指輪アクセサリーを作るだなんて知られたら、という可能性を完璧に潰されてしまいそうな気がした。

 芽生の安全を考えるなら手元に置くべきじゃないのは重々承知しているくせに、それでもやはり今まで通り……いや、今まで以上にがっしりと芽生を囲って自分の庇護下に置けば、問題ないんじゃないかという迷いが生じてしまった。

 その時は、『子ヤギは俺にとっちゃー娘みてぇな存在だからな』と、思い込もうとしていた京介だったけれど、今思えばあれはすでに恋着れんちゃくだった気がする。


 佐山さやまが芽生と仲良くしていると知って、言いようもない腹立たしさを感じてしまったのだってそうだ。

 自分と同じ極道モノに芽生むすめをやるつもりはない、だなんてもっともらしい理由を付けて芽生をさいなんだけれど、今なら素直にあれは嫉妬だったと認められる。


 芽生の出生の秘密を知って、芽生が狙われたことに変わりはないのに、それが自分のせいじゃなかったと知った時の、なんともいえない安堵感あんどかん。あれを知る人間は、恐らく自分だけだ。


 結局、芽生を裏社会こちらがわに引き込む代わり。彼女のことを自分の身内として全力で守り抜くと腹をくくった今となっては、芽生の誕生日合わせで特注オーダーメイドした恥ずかしいくらいの感傷的センチメンタルたっぷりのチューリップの指輪は、おのれへの自戒の念込みで、芽生の指に一生枯れない情愛を示す指輪あかしとして、これ以上ないくらいに相応ふさわしく思えたのだ。


***


 正直ぶっちゃけそんなことを誰かに吐露するのは死ぬほど気恥ずかしかった京介だが、芽生めいの泣きそうな憂い顔を前にしては、話すしかないではないか。

「花も……ちゃんと手配してあるから安心しろ」

 言いながら芽生を腕の中へ抱き寄せれば、芽生が「本当?」と涙に潤んだ瞳で京介を見上げてきた。

「今更そんな嘘ついても仕方ねぇだろ」

 実際手配していなかったなら、こんな雪が舞い散るような頃合いに、季節外れの春の花なんて渡せるはずがない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

取引先のエリート社員は憧れの小説家だった

七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。 その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。 恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──

処理中です...