【完結】【R18】組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~

鷹槻れん

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32.芽生を手放す覚悟

ホント、お前は泣き虫だな

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「お前が懸念けねんした通り、俺はお前を手放すつもりでその指輪を作った」

 先月の半ば――それをオーダーした時の本心を黙ったままでいることはフェアじゃない気がしてポツンと落とせば、芽生めいが京介の腕の中でキュッと身体を縮こまらせたのがわかった。

「京……ちゃん……」

 泣きそうな顔をする芽生に小さく吐息を落とすと、京介はいつも通り。照れくささに芽生の目を見ることが出来なくて、ふっと視線を外した。

「バーカ。注文した時はどうあれ……今はそんなつもり、ちりほどもねぇから心配すんなや」

 とても安心出来そうにないつっけんどんな声音で言い放ったら、当然というべきか――。

「本当……? 信じても……いいの?」

 不安が微塵みじんぬぐえていないのが分かる声音で芽生から問い掛けられてしまった。そんな芽生を腕に抱き締めたまま、京介は先程車内で石矢いしやからミラー越し、『カシラ、そういうことは目を見て言うもんです』的な非難がましい目で見詰められたのを思い出して密かに苦笑する。

「芽生」

 それで観念したように芽生の名をそっと呼べば、芽生が不安に揺れる瞳でじっと京介を見上げてきた。

「俺、お前をめとるって約束しただろ? 今更手放してなんてやれるかよ」

 そこまで言って、ついいつもの癖。

 気まずさに視線をらしそうになって、それをグッとこらえると、京介は言葉をつむいだ。

「芽生。俺はお前を失ったら生きていける気がしねぇ。頼むから……これからもずっと俺の傍にいてくれ」


 京介が芽生に贈ったピンク色のチューリップには、先程『Écri Bijouエクリ・ビジュー』のショップ店員が告げた【誠実な愛】という花言葉の他に、【愛のえ】というものもある。

 京介は、芽生用に指輪をオーダーした時、柄にもなく、花言葉なんてものまで調べてしまってそれを知っていた。

 芽生に贈るのに、これほど相応ふさわしい花はないと思ったし、もっと言えば自分の中に芽生えた気持ちを込めるのにもおあつらえ向き過ぎて笑えるな、と嫌になったのだって覚えている。

「……お前のことになると、どうかしちまうんだよ、俺。……もう、好きとかそういう域、とっくに通り越してんの、分かんだろ? っていうか分かれ」

 初めて芽生の目を見つめて……それこそ「愛してる」と一言告げれば済むことを、照れがまさって可愛げのない言葉を並べ立てた京介だ。だが、逆にそれが盛大な愛の告白になってしまっていることに、本人は気付けていない。

 そんな京介の腕の中。芽生が、花がほころぶみたいに嬉しそうに微笑んだのも無理はないだろう。

 芽生の大きな瞳から次から次、ポロポロと涙が溢れてはこぼれ落ちるのを見下ろして、
「ホント、お前は泣き虫だな」
 苦笑まじりに指先でそれをぬぐってやりながら、京介は心の中で、(お前を泣かしていいのも笑顔にしていいのも、全部俺だけだ)と思った。

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