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 音芽おとめのやつ、一丁前に抵抗をして、俺が太腿に伸ばした手を握って動きを封じてきやがった。
 でも、悪いな。
 責める方法は他にもあるんだよ。

 俺は封じられた手はそのままに、音芽の可愛らしい耳朶を軽くんでやった。

「ひぁっ、……」

 途端、音芽の身体がピクンと跳ねたのが分かってドキッとする。
 ちょっ、お前、感度良すぎだろ。

 もっと、こいつに触れたい……と思ってしまって、音芽に押さえつけられたままの手にほんの少し力がこもる。

 危うく本来の目的を見失いそうになった俺を、
「……んっ、に、日曜日っ。公園前っ、のバス停、……で十時っ」
 音芽が生まれたての小鹿のようにふるふると震えながらそう言って。

 俺は寸前のところで手の力を緩めることができた。
 
 けど、恥ずかしさに真っ赤になるその姿も本当可愛くて、俺はクラクラさせられっぱなしだ。

 マジ、勘弁してくれよ。

「面白くねぇな。もう降参かよ」
 余裕ぶってクスクス笑ってそう言ったけれど、実際は理性を総動員して音芽おとめから離れたのは内緒だ。

 やべー。
 からかうつもりが本気になるところだったぜ。
 音芽の魅力、凶悪すぎんだろっ。

 実際一度タガが外れた、俺の“音芽に触れたい欲求”は、日増しに強くなっていて……。
 なまじ音芽が強く抵抗しないからついついエスカレートしがちでマズイ。

 音芽は過去に性的なことで怖い目に遭ってトラウマを抱えている。

 相手が幼い頃から見知った俺だからって、調子に乗って色々やりすぎたら傷口をえぐる事になりかねない。
 ちったぁー自粛しねぇと。

 思いはするのだけれど――。

 好きな女を前にすると俺もただの男なんだとつくづく実感させられてしまうことばかりだ。
 別に女には不自由してねぇし、処理しようと思えば発散法はいくらでもある。
 ……はずなのに音芽以外にそういう気になれないツケが回ってきてるということか。
 俺、自分は理性的な方だと思ってたんだけどな。

 最近どうも自信がねぇ。

 音芽、ごめんな。
 俺、もう少し紳士的になれるように頑張るから。

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