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3人でパンケーキ

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 奏芽かなめの宣言通り、パンケーキ屋にはあの後すぐに足を運んだ。

 音芽おとめはどうも朝飯をガッツリ食べてきたらしく、あまり腹が減っていないようだ。
 でも甘いものは別腹だし、という謎理論を展開してくれる。
 女というやつは、何であんなあまいもんが好きなんだ?
 俺があまり甘いものは得意じゃないから、余計にそう思うのかもしれない。

 とはいえ、音芽が喜ぶなら俺は何だっていいと思っていたりもするんだ。

 腹が減ってねぇと言ってた割に、俺のすぐ横の席で真剣にメニューにかじりついている音芽が可愛くてたまらない。

 努めてそれが顔に出ないように気をつけながら、俺もメニューに目を落とした。

 へぇ~。パンケーキっちゅーから甘いのしかねぇのかと思ったら……惣菜系もあんのか。

 そんなことを思う俺をよそに、音芽の正面に座している奏芽は、まだスイーツ系のページを彷徨さまよっているらしい。

「どれもめちゃくちゃ甘そうだな」

 言葉とは裏腹にコイツ、結構楽しそうなんだよな。

 まぁ音芽いもうとと外食自体久々なんだろうし、そういう意味でもテンションが上がっているんだろう。

 奏芽は態度がひねくれているので分かりづらいが、基本、2つ下の妹のことを――俺とは違う意味で――溺愛しているからな。

「あ、でもこれとか良くね!? パンケーキとキノコチーズオムレツ! あ、ふわとろオムレツも捨て難いな。なぁ、ハルならどれにする?」

 どうやらやっと惣菜系のページにたどり着いたらしい。というかこのペースからすると、奏芽かなめ音芽おとめ並にじっくりメニューを吟味していたってことか。
 こちらへメニューを向けながら、奏芽が俺の意見を聞いてくる。

 っていういか俺、別に食う気ねぇからどうでもいいんだけど。

 飲み物で茶を濁そうと思ってんだけどな、と思いながら、
「あ? 俺はどれでも構わねぇけど……」
 と気のない返事をしたら、こちらをちらりと盗み見て、音芽が恐る恐るといったていで提案をしてきた。

「あの、みんなで気になるの頼んで、シェアとかどう?」

 きっと音芽自身もひとつにしぼれなくて迷っているんだろう。
 本人たちに言ったら全否定されそうだけど、こういうところ、結構兄妹きょうだいで似てると思うんだよな。

 が、音芽が意を決してそう言った途端、奏芽の意地悪心に火がついたらしい。
 言わなきゃいいのに「あらっ。音芽おとめちゃんのエッチ!」とか言ってきやがって。
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