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音芽の本心

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音芽おとめ……、おい、音芽」

 その姿を見たらにわかに不安になって、俺は思わず乱暴に音芽の肩を揺すってしまった。

 その振動に、音芽が小さく身じろいで、微かに吐息を落とす。

 寝てた……のか?

 一瞬状況が把握出来ないみたいにキョロキョロとあたりを見回す彼女を見て、そう思う。
 ベッド横に立つ俺を認めた音芽が、信じられないみたいに小さく息を詰めたのが分かった。

 俺からは音芽の顔がちょうど自分の影になっていて余りよく見えなくて。

「はる、ま、さ?」

 ややして俺の名をつぶやいた声が、凄くかすれている様に感じられたのは気のせいだろうか。

 ノロノロと身体を起こした音芽が、途端頭に手を当てて「んっ」と小さく声を漏らしたことにも不安を覚える。

 何より――。

「お前、玄関の鍵開けたまま寝てるとか……危ないだろうがっ!」

 責めるように言って音芽の顔を見つめたら、散々泣いた後みたいに、目の周りを赤く腫らしていて。
 それに気付いて目を凝らして見たら、頬に涙が伝って乾いた跡まで残っていた。

「――もしかして泣いてた……のか?」

 言いながら、何で俺がいないところでそんな勝手に泣いてんだよ!と思って、身勝手にもモヤモヤしてしまう。

 実際は、音芽おとめが大泣きしたであろうそのときに、そばにいてやれなかった自分に吐き気がするぐらい腹が立っている。
 けど、愚かな俺は、その怒りの矛先をあろうことか音芽に向けてしまって。

「何で……?」

 ってとがめるようにつぶやいたら、今度は音芽の方が、そんな俺に対して堪忍袋のが切れたみたいにキッ!と睨みつけてきた。

「泣いてたわよ! 悪いっ?」

 強い眼差しで俺を睨みつけてそう言ってきた音芽に、
「悪いに決まってんだろ。音芽のくせに、俺の知らないところで、俺に無断で泣くな」

 とか――。

 我ながら、何でそんな酷いこと言えんだよ?

 そもそも……。
 多分だけど……俺が音芽の話を聞かずに出かけたことが、彼女を泣かせた原因じゃないだろうかって思うんだ。

 だとしたら俺のセリフ、まったくもってナンセンスだよな?
 
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