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*ふたりの初めて

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音芽おとめ、……いいか?」

 実はこれ言うの、すごく緊張した!とか言ったら、音芽は信じるだろうか?

 俺たちはどうやら相思相愛らしいと確認は出来たものの、音芽の気持ち如何によっちゃぁ、好きそれエッチこれとは話が別、とか思ってる可能性だってないわけじゃないと思う。

 何てったって相手はあのバカ音芽だからな。そんなわけないだろって断言できないところが怖いんだ。

 そんな緊張から、自然声がいつもより低くなったのは仕方ないと思う。けど、それに加えて自分で聞いても恥ずかしいぐらい懇願するみたいな響きまで含んでしまったことに、内心ヒヤッとしてしまった。

 俺、めっちゃ音芽を抱きたいみたいじゃね?
 いや、もちろんすげぇしたいと望んでるけど……別にそれが全てってわけじゃないからな?

 けど、俺も音芽もいい歳をした大人の男女だ。それがここまで来て好きな女からそういうの、拒まれたりしたら、それなりにショックだっていうのは分かって欲しい。

 それに……一度たかぶった熱を抑えるのって……それこそ物理的にでもしない限り正直無理だし、付き合ってる相手がいるのにそれしてるところを想像したら虚しくなりそうだろ?

 この、生粋きっすいの鈍感娘が相手だと、そんなつもりなかった、と言う可能性もないとは言い切れないからな、マジで。

 現にほら、俺の渾身こんしんの誘い文句に、音芽おとめの奴、きょとんとしてるし!
 挙句、「いいって……なに?」とか小声で問いかけてくるとか……マジか!

 俺の心の声でも聞こえたんだろうか。

 音芽が次の瞬間、ハッとしたように俺を見て、途端そわそわ身じろぎながら「あっ、ちょっ、でもっ」とか慌てんの。

 そういう子供みたいな擦れてない反応も可愛いとか言ったら、音芽は怒るだろうか。

温和はるまさ……」
 無言で彼女を見つめる俺の視線を捉えて、音芽に小さく呼び掛けられた。その声を聞いた瞬間、俺は自分の気持ちに嘘はつけないって思ったんだ。

わりぃ。ダメとか言われても……もう我慢できそうにねぇわ。――音芽おとめ、抱かせろよ」

 熱を込めてそう言ったら、音芽が目を白黒させて。
 両手を意味もなくソワソワと動かしながら、真っ赤になって俺を見上げてくる彼女に、俺、決定権は初体験で不安なはずの音芽に、と思っていたのもすっかり忘れて言いつのったんだ。

「答えなくていい。元よりお前の答えは求めてない」
 って。

 ちょっ、マジで俺のバカ。
 何、強気で言っちゃってんの!
 もう少し言い様があったんじゃねぇの!?

 オマケに、せきを切った気持ちに抑えがきかなくて、音芽の唇をもう一度塞いじまうとか!
 俺、十代の盛りがついたガキみたいじゃねぇか。

 音芽が相手だと、俺は調子を狂わされまくりだ。惚れた女の誘惑の力って、マジで半端ないね。
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