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俺の初めて

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 初めての音芽おとめ相手にタオルを敷くなり何なりして養生しなかったのは俺のミスだ。

 それに、そもそも別にシーツが音芽の体液で汚れたって俺は全然構わない。

 そりよりむしろ音芽自身の身体の方が心配だ。


 俺は音芽の頭を子供の頃にしたみたいにそっと撫でながら、
「そんなの気にしなくていい。って言うか俺の責任でもあんだろ?」
 と音芽を慰める。

 なぁ、お前が痛い思いをしたのは俺のせいだぞ?
 忘れんな?


 こいつの性格からして、気にしなくていいって言っても気にするのは分かっていたけれど、今から先も俺は音芽をガンガン抱くつもりだ。

 その度にこんなシュン、とされたらたまんねぇわ。

 少しずつでもいいから開き直る術を身につけてもらわねぇと。

 ま、こういうのって慣れ、だよな、きっと。

 それプラス……。初めての時と違って2度目以降は出血がない分、音芽の罪悪感が薄れることに期待しよう。

「それより音芽おとめ。――身体、しんどくないか?」

 お互いに裸のまま音芽おとめをギュッと抱き締めて問いかけると、恥ずかしそうにモジモジと身じろぎながら俺の胸元にひたいをこすりつけて「だ……、大丈夫……っ」と声が返る。

 耳まで真っ赤にして、照れまくっているのがあんまりにも可愛くて、俺は今日が休日でないことを心の底から後悔した。


 けど、忘れちゃいけない。

 どんなに色っぽかろうが、どんなに甘くしどけない様を俺に見せていようが、音芽は初めて男とことを経験したばかりなんだ。

 それを、俺は初っ端であんな無茶させた。いつも以上に気遣ってやらねぇとまずいだろ。

 それは、変に頑張り屋なところがあるこいつの性格を知っている俺の義務だと思う。果たせなかったら、妹のことを溺愛している実兄の奏芽かなめに合わせる顔がねぇ。


「――そっか。けど、無理はすんなよ? お前いつもそういうの言わずに我慢するだろ」

 俺にくらいしんどい時はしんどいと教えて欲しいし、正直な話、めちゃくちゃ心配になるから欲しい。

 心配するあまり、思わずとがめるような口調で言ってしまってから、そんな音芽に無理をさせたのは他でもない俺自身なのだと思い至って、途端バツが悪くなる。

 違うだろ、俺。


「俺、セーブきかなくて……お前のこと酷く抱いた自覚あるから……その、心配なんだよ」

 ごめん、って小さくつぶやいてから、照れ隠しのように「――風呂、どうする? 湯、溜めてあるけど」と話を切り替えた。
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