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俺の立ち位置

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 こんな愛くるしい女が俺の彼女だなんて、マジで夢みてぇなんだけど。

 そう思うと同時に、他のやつらにとっても、音芽こいつはさぞや可憐で魅力的に見えるに違いないと思い至る。
 そもそも音芽おとめは自分がモテるという自覚がない分、無防備で危なっかしい。
 俺もしょっちゅう悩まされるけど、信じられないくらい鈍感で天然なところもある奴だから、下手したら俺以外の男に変な気を持たせちまう可能性だって十二分じゅうにぶんにあるわけで。

 考えただけで何か腹立つな。

 俺は音芽を抱きしめる腕をそっと緩めると、
「俺だけかよ」
 拗ねたみたいにそうつぶやいて、彼女の愛らしい顔を覗き込んだ。

 そんな俺を、大きな目をパチクリさせながらソワソワと見つめ返してくるのが凶悪的に
 マジ、何でこんないい女なんだよ、こいつ。
 ムカつく。

「お前と付き合ってるって公言したくてたまらないの、俺だけ……かよ?」

 それで、だろうか。
 どんだけ音芽のことが好きで堪んねぇんだよ、と自分自身溜め息が出そうな嫉妬まみれで駄々っ子みたいなセリフが自然口をついて。

 緩めたばかりの腕に再度力がこもる。

 あぁ、本当、今日の俺はどうかしてるな。

 けど――。

 そんな子供みたいな俺の言動に、音芽おとめが一生懸命首を横に振ってくれて

「ち、違っ!」

 とか全否定してくれんの、すごくね?
 たまにはこんな風に自分を出してみるのも悪くないと心の片隅で思いつつ、俺はホッとしたように腕の力を緩めた。


「は、温和はるまさ……、ありがとう」

 そんな俺の顔を見つめながら、音芽おとめが思わず、と言った具合に礼を言ってくる。

 こいつのことだから自分のことを真剣に考えてくれて有難う、とか殊勝しゅしょうなこと思ってんだろうな。

 本当そう言う所、堪らなく可愛いんだけど!

 こんな音芽だから、俺はこいつを困らせたくないと真剣に思っちまう。

 今すぐにでも鳥飼とりかい音芽おとめは俺の女だ!って公言してしまいたいところだけど、それやったら音芽、困んだろ?

 カミングアウトしていくにも最善の順序があることくらい俺にだって分かってるさ。

 どこか不安そうに俺を見つめてくる音芽を安心させてやりたくて、

「今すぐどうこうする気はねぇから安心しろ。順序ってもんがあんだろ?」

 そう格好つけてはみたものの、公言しないことで音芽を囲い込むことの出来ない不安に、思わず言葉尻に溜め息が混ざってしまった。

 俺の方はこんなに切ない思いを飲み込んでると言うのに、音芽のやつがあからさまにホッとしやがるから、さすがに少し腹立たしくなる。
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