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やましいことなんてない、はずなんだ

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 俺の方を見ようとしない音芽おとめの頬に触れて、
「なぁ音芽。こっち向けよ」
 と言ってみる。

 途端、「は、恥ずかしいっ、のでっ」と、何故かぎこちない敬語で返してくる音芽のテンパり具合が可愛すぎて思わず声に出して笑ってしまった。

 ホント、一挙手一投足。音芽のやること全てがツボに入り過ぎて参る。

 彼女の照れが俺にも伝播してくるみたいな錯覚を覚えた俺は、仕切り直すみたいに小さく咳払いをした。


「……その、悪かった。――あれは俺も色々まずかったって反省……してる、から」

 さっき音芽が指摘してきた話。

 確かに言われてみれば軽率な行動だったと、今更のように思って。

 相手が音芽じゃなかったから、逢地先生かのじょに触れたことも俺にとってはある意味機械的で、男として何ら心動かされる事がなかったから失念していた。

 けど、傍目はために見りゃ、誤解される行動だったよな?

 それはやはり素直に反省すべき点だし、2度と同じことをして音芽を傷付けねぇようにしないと。

 思いはしたものの、長年飼い慣らしたひねくれ者の血が騒いだ俺は、全面的に悪かったと認めてやるのが気恥ずかしく思えて。
 小声で「……一応」と付け加える。

 途端、音芽おとめの肩がぴくっと微かに跳ねたのが分かった。

 そうして、ふっと身体から力を抜くと、俺から顔を逸らせたまま「本当に……反省、してる?」と確認するみたいに聞いてきて。

 俺は心の中で「当たり前だろ」って答えながら、実際には「何度も言わせるな」って減らず口を叩いてしまう。

 音芽は俺のその言葉に、予想に反して怒った素振りも見せずに吐息を落とすように
「何度も言って欲しい……。でも……」

 言って、やっと俺のほうを振り返ると、いきなり頬を両手で挟んできた。

 ちょっ、おっ、それ反則だろ!

 俺は予期せぬ音芽からの反撃?に、びっくりして視線をそらせた。

 音芽はそんな俺に、まるで口調で

「2度と……私以外にそういうこと、しないって約束してくれるなら……。許して……

 とか偉そうに言ってきやがんの。


 何だよ。教師としては俺の方がお前の先輩だぞ?

 やられっぱなしにさせてたまるか!
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