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4-3.ハッピーハロウィン!―後編―
帰れんなるかもしれんよ?
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***
「こんだけ車が少なけりゃあはぐれることもないと思うけど一応……」
実篤はくるみの車の運転席に中途半端に腰掛けて、ドアを開けたままオーディオ一体型のカーナビに自分の家の住所を登録すると、行き先指定して車外のくるみを振り返った。
「――っ!」
てっきり運転席そばに立っているとばかり思っていたくるみが、身を乗り出すようにして車の中を覗いていて、その近さに驚いてあやうく悲鳴を上げそうになってしまった実篤だ。
(くっ、唇が当たるかと思うたっ!)
事故みたいに彼女とのファーストキスが終わってしまうのだけは避けたい!と本気で思ってしまってから、「乙女か!」と自分で自分の思考回路にツッコミを入れる。
そんな実篤をキョトンと見つめて来るくるみの視線に気付いた彼は、慌てて言葉を紡いだ。
「……もっ、もしも信号とかで俺の車とはぐれたりしたら、こっ、コレを頼りに走ってきてくれる?」
聞いたら、「はぐれんように気に掛けてくれんのん?」と拗ねたみたいに唇をとがらせてくるとか。
可愛すぎて「小悪魔め!」と思わずにはいられない。
「もっ、もちろん、そのつもりじゃけど……もしもに備えて、ね?」
今すぐにでもすぐそばのくるみをギュッと抱きしめたくなって、「こんな外ではまずいじゃろ、俺!」と理性を働かせた結果、挙動不審に視線を泳がせてしまった実篤だ。
「分かりました」
言ってから、「あーん、それでもやっぱり!」とくるみがつぶやく。
「こっから実篤さんの家までって三十分以上も掛かるんですね。別々に行くん、何か寂しゅうなりました」
実篤の家は由宇町にある。
市町村合併で岩国市に組み込まれた町なので、結構距離があるのだ。
目的地に実篤の家を指定した瞬間、ナビが「目的地まではおよそ二十キロメートルで、四十分くらいかかります」と告げたことが不満らしい。
「ほいじゃあ車、そのままにして俺のに乗る?」
明日はどうせ『クリノ不動産』自体休みなのだ。
このままくるみの車が停めてあったからと言って支障はない。
ないのだけれど――。
(それじゃと何か泊まって行きんちゃいって誘っちょるみたいじゃし、さすがにくるみちゃんも警戒するじゃろ)
そう思って、わざわざ米軍基地から出て、そのまま由宇町がある下り方面に車を走らせず、一旦上る形でくるみの車を取りに来たのだ。
「ええんですかっ?」
なのに、キラッキラの笑顔でそんな実篤の顔を見つめてくるとか……「くるみちゃん、マジか!」と実篤が思ったのも仕方ないだろう。
「いや、く、くるみちゃんこそ……ええん?」
ドキドキしながら問いかけたら、キョトンとされた。
この子には危機感というものはないんじゃろうか?と思ってしまった実篤だ。
(それとも自分がヘタレすぎて〝男として〟認識されてない、とか……?)
怖がらせるのは本意ではないが、男として意識されないのは不本意過ぎるじゃろ、と相反する事柄が実篤の頭の中で拮抗する。
「くっ、車置いたままにしとったらあれよ? か、……」
帰れんなるかもしれんよ?と続けたかったのに、その先が言いたくないのは何故だろう。
「こんだけ車が少なけりゃあはぐれることもないと思うけど一応……」
実篤はくるみの車の運転席に中途半端に腰掛けて、ドアを開けたままオーディオ一体型のカーナビに自分の家の住所を登録すると、行き先指定して車外のくるみを振り返った。
「――っ!」
てっきり運転席そばに立っているとばかり思っていたくるみが、身を乗り出すようにして車の中を覗いていて、その近さに驚いてあやうく悲鳴を上げそうになってしまった実篤だ。
(くっ、唇が当たるかと思うたっ!)
事故みたいに彼女とのファーストキスが終わってしまうのだけは避けたい!と本気で思ってしまってから、「乙女か!」と自分で自分の思考回路にツッコミを入れる。
そんな実篤をキョトンと見つめて来るくるみの視線に気付いた彼は、慌てて言葉を紡いだ。
「……もっ、もしも信号とかで俺の車とはぐれたりしたら、こっ、コレを頼りに走ってきてくれる?」
聞いたら、「はぐれんように気に掛けてくれんのん?」と拗ねたみたいに唇をとがらせてくるとか。
可愛すぎて「小悪魔め!」と思わずにはいられない。
「もっ、もちろん、そのつもりじゃけど……もしもに備えて、ね?」
今すぐにでもすぐそばのくるみをギュッと抱きしめたくなって、「こんな外ではまずいじゃろ、俺!」と理性を働かせた結果、挙動不審に視線を泳がせてしまった実篤だ。
「分かりました」
言ってから、「あーん、それでもやっぱり!」とくるみがつぶやく。
「こっから実篤さんの家までって三十分以上も掛かるんですね。別々に行くん、何か寂しゅうなりました」
実篤の家は由宇町にある。
市町村合併で岩国市に組み込まれた町なので、結構距離があるのだ。
目的地に実篤の家を指定した瞬間、ナビが「目的地まではおよそ二十キロメートルで、四十分くらいかかります」と告げたことが不満らしい。
「ほいじゃあ車、そのままにして俺のに乗る?」
明日はどうせ『クリノ不動産』自体休みなのだ。
このままくるみの車が停めてあったからと言って支障はない。
ないのだけれど――。
(それじゃと何か泊まって行きんちゃいって誘っちょるみたいじゃし、さすがにくるみちゃんも警戒するじゃろ)
そう思って、わざわざ米軍基地から出て、そのまま由宇町がある下り方面に車を走らせず、一旦上る形でくるみの車を取りに来たのだ。
「ええんですかっ?」
なのに、キラッキラの笑顔でそんな実篤の顔を見つめてくるとか……「くるみちゃん、マジか!」と実篤が思ったのも仕方ないだろう。
「いや、く、くるみちゃんこそ……ええん?」
ドキドキしながら問いかけたら、キョトンとされた。
この子には危機感というものはないんじゃろうか?と思ってしまった実篤だ。
(それとも自分がヘタレすぎて〝男として〟認識されてない、とか……?)
怖がらせるのは本意ではないが、男として意識されないのは不本意過ぎるじゃろ、と相反する事柄が実篤の頭の中で拮抗する。
「くっ、車置いたままにしとったらあれよ? か、……」
帰れんなるかもしれんよ?と続けたかったのに、その先が言いたくないのは何故だろう。
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