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6-4.焼けぼっくいに火はつくか?

お願いじゃけ、俺以外の男がしたことで泣かんちょいて?

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実篤さねあつさん……ここは」

「あー、ちょっと成り行きで取ってしもうた部屋なんじゃけど……あんまりふこぉ考えんで?」

 ――恥ずかしいけん。

 ゴニョリと小声で続けたら、くるみがギュッと抱きついてきた。

「あのっ、せっかく助けてもろうたんに……ごめんなさい……。うち……鬼塚くんと……ちゃんと話をせんと……いけんのん」

 さっきだってあんなに怖がっていたくせに、気丈にもそんなことを言ってくるくるみに、実篤は瞳を見開いた。

 今も、言いながら明らかに分かるくらい震えているのだ。

 どうにも堪らなくなって、実篤はその震えごと包み込むみたいにくるみの小さな身体を抱き締めた。


「さっき、鬼塚あいつとのやり取り、聞いちょったじゃろ?」

 恐らくくるみがこんなことを言ってくるのは、鏡花きょうかがネックになっている。

 そう思った実篤は、くるみの頭にチュッと口付けた。

 こんなにか細い身体で、またあの男にいいように言いくるめられて力づく、何処かに連れ込まれそうになったらどうするんよ?と言う恨み節を懸命に押さえながら。

 実篤は言葉を選んでくるみに声を掛ける。

「ちょっとだけ待ってくれんかな? 俺が妹のこともちゃんと連れ戻すけん。それまでの間、くるみちゃんは心配せんでここに居ており?」

 実篤の言葉に、くるみが涙をいっぱいに溜めたうるうるの目で見上げてきて。

実篤さねあつさ……」

 自分の名前を呼んで更に一層瞳を潤ませるから。
 実篤は(可愛過ぎじゃろ!)と思いながらも、この涙の元凶が自分ではなく別の男の愚行だと気が付いて心底腹立たしくなる。

「お願いじゃけ、俺以外の男がしたことで泣かんちょいて?」

 実篤は、この先もくるみを泣かせるつもりなんて微塵もない。
 だけど、彼女を笑わせるのも怒らせるのも……それこそ今みたいに泣かせるのでさえも……全部全部自分でありたいと思ってしまった。

 実篤の言葉に、くるみが「ごめ、なさ……」と再度しがみついてくるから。

 実篤は今すぐにでも可愛い恋人をどうこうしたい!という衝動を抑えるのに理性を総動員する羽目になる。

 そこでタイミング良くズボンの尻ポケットに突っ込んでいたスマートフォンがブーブーッと振動ちゃくしんを伝えてきて、実篤のなけなしの理性に加勢してくれたから。

 どうにかこうにか理性に軍配が上がった実篤だ。
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