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23.本音と指輪と初めての夜
もしかして怒っていますか?
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「ねぇ春凪。もしかして怒っていますか?」
私がグダグダな気持ちのまま、どうにかこうにか作った親子丼をふたり横並びになってダイニングカウンターで食べながら。
いつもと同じ。
対面で座るわけじゃないから顔を見られなくていいなって思っていたんだけど……いつもならうるさいくらいにアレコレ喋る私が黙り込んでいたから宗親さんに不審がられてしまったみたい。
職場では出来る部下になれたと思ったのに……家ではダメな偽装妻だなって溜め息が漏れそうになる。
「おっ、怒ったりなんてしてないですよ? えっと……し、強いて言うなら……その、入籍のことを宗親さんからお聞きしてちょっと驚いたというか……」
私のバカ。
驚いたんです、って断言すれば良かったのに、まだ続きがあるみたいな言い回し。完全に墓穴掘っちゃったじゃない。
「驚いたというか?」
当然、続きを促すように宗親さんに言葉尻を拾われて、私は言い訳を探して所在なく親子丼をかき回した。
「春凪?」
明らかに不審な動きをしていたからだろう。宗親さんに箸を持つ手をそっと握られて動きを封じられて、心臓が大きく飛び跳ねる。
「本当に怒っては……いないんです。ただ――」
一緒に婚姻届を提出しに行けなかったこと、相談してもらえなかったことが寂しかっただけで。
そんな本音を伝えてしまったら、宗親さんは困ってしまうよね。
元々私たち、利害関係で結婚しようって話してたんだもの。
タイミングの良い時に婚姻届を出されたぐらいで、こんなにショックを受けてたらダメでしょう?
頭では分かっているのに、心が拒絶するからか、またしてもじわりと目尻に涙が滲んできて、私は懸命にまばたきをこらえた。
宗親さんにそんな情けない顔を見られたくなくて、見るとはなしに手元に視線を落としていたら、
「もしかして……指輪がまだなこと、拗ねてますか?」
私の手指をギュッと握る宗親さんに、私は心の中で「え?」と思って。
そういえば、確かに指輪がまだだけれど、言われるまでそんなこと、気にもしていなかったのだと逆に気付かされた。
私にとって大切なのは、物じゃなくて心だったから。
こんなところでも「形から」整えたい宗親さんと、ズレが生じているんだと胸が苦しくなった。
でもダメ。
こんな気持ち、宗親さんに悟られちゃいけない。
私がグダグダな気持ちのまま、どうにかこうにか作った親子丼をふたり横並びになってダイニングカウンターで食べながら。
いつもと同じ。
対面で座るわけじゃないから顔を見られなくていいなって思っていたんだけど……いつもならうるさいくらいにアレコレ喋る私が黙り込んでいたから宗親さんに不審がられてしまったみたい。
職場では出来る部下になれたと思ったのに……家ではダメな偽装妻だなって溜め息が漏れそうになる。
「おっ、怒ったりなんてしてないですよ? えっと……し、強いて言うなら……その、入籍のことを宗親さんからお聞きしてちょっと驚いたというか……」
私のバカ。
驚いたんです、って断言すれば良かったのに、まだ続きがあるみたいな言い回し。完全に墓穴掘っちゃったじゃない。
「驚いたというか?」
当然、続きを促すように宗親さんに言葉尻を拾われて、私は言い訳を探して所在なく親子丼をかき回した。
「春凪?」
明らかに不審な動きをしていたからだろう。宗親さんに箸を持つ手をそっと握られて動きを封じられて、心臓が大きく飛び跳ねる。
「本当に怒っては……いないんです。ただ――」
一緒に婚姻届を提出しに行けなかったこと、相談してもらえなかったことが寂しかっただけで。
そんな本音を伝えてしまったら、宗親さんは困ってしまうよね。
元々私たち、利害関係で結婚しようって話してたんだもの。
タイミングの良い時に婚姻届を出されたぐらいで、こんなにショックを受けてたらダメでしょう?
頭では分かっているのに、心が拒絶するからか、またしてもじわりと目尻に涙が滲んできて、私は懸命にまばたきをこらえた。
宗親さんにそんな情けない顔を見られたくなくて、見るとはなしに手元に視線を落としていたら、
「もしかして……指輪がまだなこと、拗ねてますか?」
私の手指をギュッと握る宗親さんに、私は心の中で「え?」と思って。
そういえば、確かに指輪がまだだけれど、言われるまでそんなこと、気にもしていなかったのだと逆に気付かされた。
私にとって大切なのは、物じゃなくて心だったから。
こんなところでも「形から」整えたい宗親さんと、ズレが生じているんだと胸が苦しくなった。
でもダメ。
こんな気持ち、宗親さんに悟られちゃいけない。
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