【SS】ちっちゃいちっちゃいおっちょこちょいの魔法使いがね

夕木アリス

文字の大きさ
1 / 2

魔法つかいは逃げ出しました

しおりを挟む
むかしむかしあるところに、とてもかわいい女の子がすんでいました。
女の子のなまえはシーナといいました。

シーナは魔法をつかうのが大好きで、ちいさいころから魔法のれんしゅうばかりしていました。
そのままたくさんたくさん魔法をつかっているうちに、シーナは国いちばんの魔法つかいになりました。

シーナはとても美しくすぐれた魔法つかいになりましたが、ふたつほど欠点がありました。
それはシーナがおっちょこちょいで、少しばかり背が高すぎることです。

シーナは魔力が強すぎて、しょっちゅう魔法をぼうはつさせてしまっていました。
おたんじょうびケーキのろうそくに火をともそうとしてケーキごととかし、お花に水をあげようとしておやしきを水びたしにしたこともありました。

またシーナは大きくなったらその国の王子さまと結婚するよていでしたが、その王子さまよりも背が高くなってしまいました。


ある日シーナは、王子やそのなかまたちがシーナの悪口をいっているのをきいてしまいます。

「あーんなデッカいおんな、王子にはふさわしくないよ!」
「しかもおっちょこちょいで魔法もばくはつさせてばかりだし、キケンじんぶつだよ!」
「王子のおヨメさんには、もっとやさしくてちっちゃくてかわいい女の子がいいとおもう!」
「そうだな、ボクもそうおもう。あした、お父上にそうだんしてみるとしよう」

さいごのセリフは王子さまのものでした。

「王子さまは、わたしのことがお嫌いなのね。きっとあした王さまによびだされて、結婚のはなしはなかったことにされてしまうんだわ」

みんなにいじわるをいわれてかなしくなったシーナは、家出をしてとおい国に行こうと決心します。
そうして船にもぐりこんで何日も何日もたびをして、たどりついたのは巨人たちの国でした。


「すごいわ!ここの人たちはわたしよりずっとずっと大きいわ。ここなら大きすぎるといじわるされずに過ごせるわね」

シーナは巨人の国のお城にいって、住む場所をさがしました。

「ここなら、食べものにこまることもないわ。寝るところだってありそうね」

そうしてお城のちゅうぼうを気に入り、そこに住むことにしました。

だれかがいるときは魔法ですがたをかくし、つかっていないふきんをおふとんにしてねむりました。
人がいなくなったら、テーブルにのこっている食べものをもらってごはんにしました。

なにしろシーナはここではとてもちっちゃいので、サンドイッチをつくるときに出たパンのかけらや、小さなハムのきれはしでも、一回で食べきれないほどのおおごちそうになるのです。

もちろん、もらうだけでなくてシーナはちゃんとお返しをしていました。
さむいふゆの朝にはストーブのまきに魔法で火をつけておき、水くみをしなくていいよう大きなツボに魔法でいつも水をいれておきました。

お城のコックさんたちは『妖精のしわざじゃないか』とふしぎがりながらもよろこんでくれました。
シーナも、ここでは大きな魔法をつかってもだれにもめいわくがかからないので、きがねなく魔法をつかえておおよろこびでした。


そんなある日、シーナは巨人の国の王子にみつかってしまいました。

王子は『妖精はきみだったんだね』といって、シーナを手のひらにのせました。
追いだされてしまう、とシーナはかなしくなりましたが、王子はシーナを自分のへやにつれていってくれました。

「ちいさな妖精さん。きみがいたいのなら、ずっとこの国にいたっていいんだよ?」
「ありがとう王子さま!でもわたし、妖精じゃないのよ」
「じゃあきみはいったいだあれ?」
「わたしはシーナ。魔法つかいのシーナよ!」
「そうなんだ。よろしくね、ちっちゃな魔法つかいさん」

そうしてシーナは王子のへやに住むことになりました。
けらいのなかには反対する人がおおぜいいましたが、王子は気にとめませんでした。

シーナは王子のことが好きになり、王子の役にたとうとしました。

王となるためのべんきょうをてつだい、剣のれんしゅうのあいてをし、ねむれないときはねむりの魔法をのせた唄をうたいました。
そして魔法ですがたをけしたシーナは城のいろいろな場所に出かけ、悪だくみをしている人をみつけては王子にそれとなくしらせました。

シーナがおしえたおかげでいくつもの悪事がみぜんにふせがれ、巨人の国の王さまはおおよろこびです。

王子もよろこんでくれましたが、それまで悪いことをしてもうけていた大臣や商人からは、シーナはものすごく嫌われてしまいました。

「ねえシーナ。きみのおかげで国はどんどんよくなってきたけど、ぼくはきみが悪い人たちにねらわれるんじゃないかとしんぱいになるんだよ」
「へいきよ。わたし、逃げるのはとくいなの!もといた国からだって逃げたんだもの。つかまったってカンタンに逃げられるわ」

そういってシーナは人助けをつづけ、王子のおぼえはどんどんとよくなり、ついには王子に次の王さまになってほしいという声がたくさん出るようになりました。

そのはなしにおどろいたのは王子のお兄さんです。
兄の王子は次の王さまは自分だとおもっていたので、こまったことになった、とあせりました。
そしてそのはなしの原因であるシーナをつかまえさせて、鳥カゴに閉じこめてしまいました。


兄王子はつかまえたシーナをあの手この手で自分のなかまに引きこもうとしましたが、シーナはすべてことわりました。
ごうをにやした兄王子は、「だったらおまえを人質に、弟に王になるのをあきらめるようおどしてやろう」とへやを出ていきました。

「たいへん、わたしのせいで王子が王さまになれなくなってしまうわ」

シーナは王子の足をひっぱらないよう、巨人の国からも逃げることにしました。

さらにちいさくなる魔法を自分にかけたシーナは鳥カゴから逃げて、大好きな王子のへやにもどりました。
何日もすがたの見えないシーナを王子はずっとさがしていたのですが、このとき王子はつかれきってねてしまっていました。

シーナはいままでのお礼にしっている魔法のじゅもんをかきつけたノートと、出ていくことのおわびの手紙、それに王子にだけノートと手紙がよめるようにしたとくべつな魔法のむしメガネを、王子のベッドのまくらもとにおきました。

「さようなら、王子。大好きだったわ。りっぱな王さまになってね」

そうしてねている王子のほっぺにキスをして、シーナは巨人の国をさりました。


ちっちゃいちっちゃい魔法つかいになったシーナは、つぎはどこの国にいこうかとなやんでいました。
だれかにいじわるをされるのも、だれかにめいわくをかけるのも嫌でなやんでいました。

「大きくても小さくてもダメなら、人のいないところにいけば、きっともう嫌なことにもかなしいことにもならないわ」

そうかんがえてシーナは森のおくにすすみ、かぜの魔法をつかって一番そら高くまでのびている木のてっぺんにのぼって、そこで小鳥たちといっしょにくらすことにしましたーー

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

お月さまのポケット

ほしみ
絵本
静かな夜。 小さなうさぎのミーミは、まんまるお月さまに出会いました。 お月さまのおなかには、ふしぎなポケット。 そこには、だれかの大切な「なにか」が、やさしくしまわれています。 お月さまとミーミの、小さくてあたたかな夜のお話。 ※単体のお話として完結しています ※連載中の投稿作品「人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―」の作中作の絵本

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...