軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第二章

蚤の市 2

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 その出品点数は何百にも及び、コップや皿、果てはぬいぐるみまであった。
「すごい……」
 ぱっと見、ヘンリは夫妻や家族で描かれたものが多い。
 オーフェルエイデ公は大抵植物が背景にあしらわれている。
 そして店の大半を占める一番人気はなんと言ってもリエイムだった。
 椅子に座っていたり、馬に乗っていたりと格好や状況は多種多様だが、どの大きさのリエイムもこちらを向き、にかっと歯を見せ力強く笑っている。
 端麗な容姿かつ最強軍を率いる若き軍将は特にキャラクター性に優れている。オーフェルエイデ領の人気はリエイムに一任されているともよく聞く噂だ。
 そんな第二公子なのだから、さぞグッズにしやすいのだろう。
「お。おやじ、いい腕してるな。どれもなかなか忠実に描かれているじゃないか」
 顎に人差し指と親指を当てたリエイムがさも満足げにうんうん頷くので、サニは渋い表情で目を細めた。
「ちょっと誇張しすぎじゃないですか? 特にこの絵なんて、格好良すぎます」
「なにを言ってる。まんまじゃないか、ほら」
 リエイムは実物大くらいに描かれた似顔絵の一枚手を取ると自分の顔の真横に持ってきて、同じ表情をしてみせる。サニはまわりをはばかることなく、思わず声を出して笑った。
「サニの笑い声を初めて聞いた。そんな風に笑うのだな」
「すみません」
「いや、咎めるつもりで言ったのではないから、謝らないでくれ。サニは最近とても、明るくなったなと言いたかったんだ」
「そうでしょうか?」
 自分では気づかなかったが、確かに最近発言する前に相手にどう思われるかを考える癖がなくなった。
 何を言おうがリエイムはこちらの意図をそのままの意味で受けてくれる。
 他意を探られたり誤解されることもないから安心して発言することができ、おかげで発言の量も増え、返すスピードも早くなった。
 見方によってはそれが明るく映るのかもしれない。
 毎食オーフェルエイデ家族と食卓を囲み、リエイムと行動を共にして軽口を言い合ううち、会話に慣れたというのもあるだろう。
「おや、こんなものもあるぞ」
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