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第三章
眠っていた記憶 3
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リエイムはいつの間にかもとの穏やかな口調に戻っていた。瞳をのぞき込むと、ちゃんと昔のリエイムがその中にいるような気がした。懐かしさがこみ上げる。
「リエイム? 本当に?」
「ああ。サニ、会いたかった。おかしいな、不思議な気持ちだ。ずっと会っていたのに」
リエイムはぎゅうっと腕に力を込め、サニを抱きしめる。
「ほら、当初の計画とは変わってしまったが、記憶をなくしてもまた一からサニを好きになったぞ?」
胸を張りながら、無邪気に笑ってみせる。心臓が痛くなるほど絞られた。
「リエイム……私も、あなたに会いたかったです」
「じゃあどうして、ああっ! 納得いかないから蒸し返すが、なぜ俺のことを振ったのだ? 記憶のない俺では、不満だったか?」
「だって……今の私は聖舞師でもないですし……それに、リエイムは身分の高い公女様と結婚して跡継ぎを設けられるほうが、私といるよりも良いことだと思ったのです」
ようやく気持ちも落ちついてきたのか、肩をすくめながら短いため息をつく。
「またそんな、余計な気を遣って。考えすぎだ。まあそこも、いじらしくて好きなんだが」
「だって、こんなに前とはあなたを取り巻く状況が違うじゃないですか。領の民やオーフェルエイデ家も、リエイムの跡継ぎを望んでいるはずです」
「俺はどんなに世界が平和になったって誰に反対されたって、好きでもない人と結ばれたりはしないさ。もとより、双子が生まれた時点で跡継ぎのことは俺に関係ないしな」
確かに考えすぎだと言われればその通りだ。
でも、自分なりに真剣に出した答えではあった。
「もう一度改めて言わせてくれ。サニ、俺は君のことが好きだ。誰よりも愛しているし、一生添い遂げたいと思うのは君一人しかいない。俺が公子とか煩わしいことは考えないでほしい。サニの本当の気持ちを聞かせてくれ」
そろそろと、サニは遠慮がちにリエイムの手を握った。
「私は……あなたが記憶を失ってしまっても、苦しかったけどあなたのことがずっと好きでした」
「ようやく言ってくれた」
たまらないというようにぎゅっと押し込めて、それでも足りないのかサニを持ち上げた。地面から身足が浮いて、サニは慌てる。
「わ、ちょ……」
下からリエイムが笑う。今までのどんな笑顔より、晴れやかな表情で。
「これからは、君を一生離さないから」
力強い笑いを見せてから、そっと口づけられた。
「私も、あなたのことが大好きです」
ずっと胸にしまっていた言葉を、ようやくちゃんと伝えることができた。
いつのまにか頬に伝う涙を、リエイムの大きな親指がそっと拭った。
「リエイム? 本当に?」
「ああ。サニ、会いたかった。おかしいな、不思議な気持ちだ。ずっと会っていたのに」
リエイムはぎゅうっと腕に力を込め、サニを抱きしめる。
「ほら、当初の計画とは変わってしまったが、記憶をなくしてもまた一からサニを好きになったぞ?」
胸を張りながら、無邪気に笑ってみせる。心臓が痛くなるほど絞られた。
「リエイム……私も、あなたに会いたかったです」
「じゃあどうして、ああっ! 納得いかないから蒸し返すが、なぜ俺のことを振ったのだ? 記憶のない俺では、不満だったか?」
「だって……今の私は聖舞師でもないですし……それに、リエイムは身分の高い公女様と結婚して跡継ぎを設けられるほうが、私といるよりも良いことだと思ったのです」
ようやく気持ちも落ちついてきたのか、肩をすくめながら短いため息をつく。
「またそんな、余計な気を遣って。考えすぎだ。まあそこも、いじらしくて好きなんだが」
「だって、こんなに前とはあなたを取り巻く状況が違うじゃないですか。領の民やオーフェルエイデ家も、リエイムの跡継ぎを望んでいるはずです」
「俺はどんなに世界が平和になったって誰に反対されたって、好きでもない人と結ばれたりはしないさ。もとより、双子が生まれた時点で跡継ぎのことは俺に関係ないしな」
確かに考えすぎだと言われればその通りだ。
でも、自分なりに真剣に出した答えではあった。
「もう一度改めて言わせてくれ。サニ、俺は君のことが好きだ。誰よりも愛しているし、一生添い遂げたいと思うのは君一人しかいない。俺が公子とか煩わしいことは考えないでほしい。サニの本当の気持ちを聞かせてくれ」
そろそろと、サニは遠慮がちにリエイムの手を握った。
「私は……あなたが記憶を失ってしまっても、苦しかったけどあなたのことがずっと好きでした」
「ようやく言ってくれた」
たまらないというようにぎゅっと押し込めて、それでも足りないのかサニを持ち上げた。地面から身足が浮いて、サニは慌てる。
「わ、ちょ……」
下からリエイムが笑う。今までのどんな笑顔より、晴れやかな表情で。
「これからは、君を一生離さないから」
力強い笑いを見せてから、そっと口づけられた。
「私も、あなたのことが大好きです」
ずっと胸にしまっていた言葉を、ようやくちゃんと伝えることができた。
いつのまにか頬に伝う涙を、リエイムの大きな親指がそっと拭った。
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