悪役令嬢はお仕置きされたい

神夜帳

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第1章

第9話 そして開演のベルは鳴る Ver0.5

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エアリーのいる観客席は防御フィールドに守られていて、普段は透明で観戦を邪魔しないが、時折流れ弾が飛んできて当たると、青く光り弾を弾き返す。
レオンが雷の力を解放してからは、エアリーの目にはカインの身体を包む青い魔力の光と、レオンを包む黄金の魔力の光が、フィールド中を縦横無尽に激しく動き回ってはぶつかり、光の明滅しか見て取ることができない。
青と黄金がぶつかる度に、それぞれの色の魔力の粒子がまるで火花のように辺り一面にまき散らされて、まるで花火を見ているかのようだ。
クラインもフィールドの中央にいたが、いつの間にかエアリーの近くまで退避している。その表情は苦々しく、そしてカインに対しては嫌悪感を隠すことない視線で睨みつけている。

レオンは稲妻の雷球を辺りにまき散らしながら、まるでテレポートしたかのような瞬足でカインの背面、時に上空から剣を繰り出すが、それらは、カインの濃い青い魔力の壁が一瞬現れたかと思うと、自分の攻撃をまるでなかったかのように無効化し、カイン自身は平然と次の攻撃を繰り出してくる。

(青い魔力……氷の精霊と契約すれば、もっと水色の魔力のはずだ……。あの魔力は、精霊の影響を受けない普通の魔力だ……。一体、何が起きている??)

レオンは、カインの底知れぬ魔力の出力と生成量に驚愕する。
人間と契約した精霊は、人間にとって自分を全力で支援してくれるよき友であり、それと共に魔力を供給してくれる魔力タンクのような役割を果たす。レオンにとってすれば、精霊を召喚した状態で魔法を使えば、まずは精霊から供給される魔力から消費され、自分の魔力は一切消費しない。しかし、今は試合であり、精霊の召喚は禁止されている。魔法を使えば使うほど、自分の体内で生成、貯蓄された魔力を消費していく。
魔力が空になったから死ぬということはない。
だが、魔力が減っていくと、二日酔いのような気分不快に襲われ、魔力が空に近づくにつれ、強烈な吐き気、倦怠感、ブレインフォグに襲われる。それらの症状は、戦いにおいては致命的だ。
雷の精霊と契約しているお陰で、雷にまつわる魔法やスキルの消費魔力は軽減されてはいるが、そうはいっても人間の体内の魔力など精霊に比べれば大したことはない。繰りだせば繰り出すほど自分の中のタンクが減っていくのを痛烈に感じる。

(しかし、それは、あの男ですら同じはずだ……!)

青い魔力は一般的な人間の体内で生成される普通の魔力である。精霊と契約している色ではない。
ということは、いかなるスキルも魔法も消費魔力は軽減されていない。にもかかわらず、戦っても戦ってもまるで衰えを感じさせない青い魔力。

(これだけの魔力を生成できる人間がいたのか……! 欲しい! 欲しいぞカイン・ハーヴェー!)

レオンが剣に雷の魔力をこめてカインに向かって振りぬく。
まばゆい光と共に、黄金の魔力が稲妻のように軌道を変えながらカインに向かっていく。
軌跡がランダムなため、真っすぐ飛んでくるのに比べて、避けるタイミングが非常に難しい。
しかし、カインはやや大げさに剣を構えると、攻撃が当たる瞬間に剣を振りぬく。
稲妻と化した黄金の魔力は、カインの剣に軌道を変えさせられると、辺り一面フィールド一杯に雷光を轟かせ、防御フィールドは反応してコロシアム全体を青く光らせて、それを防いだ。

あまりの眩しさにエアリーもクラインも手で光を遮りながら、それでもなんとか試合を見ようと目を細めつつも必死にフィールドを凝視する。

レオンの視点からすれば、自分の雷光でフィールド全体が光ってカインの姿を一瞬見失ったが、ぞくりとさせる冷たい殺気を感じて、すぐに飛行魔法を使って上空に逃げる。自分の中の魔力タンクがどんどんと空になるのを感じさせたが、気が付けばカインは自分の目の前に迫っていた。

(……速い!!!)

カインが下段に構えていた剣を、レオンに向かって一気に斬り上げる。
レオンの剣が魔力の粒子を電気のスパークのようにまき散らせながらもなんとか防ぐが、あまりに重い一撃に体制を崩し地面に落下してしまった。

(そして、重い!!!)

レオンは地面に落下する直前に、身体背面から魔力を放出して浮力を得てなんとか軟着陸する。

(まるで特徴のない戦い方。基本だけを忠実に、そして、基本を必殺技にまで昇華させた……そんな戦い方! ただひたすらに速くて、ただひたすらに重い攻撃、それがこんなに厄介だとは!!!)

基礎技術しか使わないということは、つまりは、隙が無いということだ。基礎技術しかないのならば、相手がトリッキーさで翻弄してくれば、対応しきれずやられてしまうかもしれない。しかし、カインはそんなものを易々と凌駕するだけの速さと重さがあった。
であるならば、余計なスキルや魔法は必要ない。
ジャストガードも緊急回避もパリィも、一つ一つはそれなりに魔力を消費する技である。
カインは避けて、近づいて、叩くを基本として、避けきれない、防ぎきれないもののみスキルや魔法を使用する。
消費魔力を可能な限り低減させたうえで、転生者ゆえなのか? 膨大な魔力量がそれらに絶対の信頼感を付与する。

レオンが着地と同時に、自分に一気に接近するであろうことを予見して、稲妻を横に薙ぎ払ったうえで、風の魔弾を稲妻の隙間を埋めるように3発放った。

瞬間、レオンは立ち眩みがする。
強烈な吐き気と、倦怠感、目の前の視界が歪む。
それを、カインは見過ごさなかった。

(ここが勝負どころ!!)

カインは青い魔力の膜をマントのように編み込むと自分の目の前に展開する。
1枚、2枚、3枚、4枚……。
そして、体中から背面に向けて魔力を一気に噴出し、エアリーの目には留まらぬ速さでレオンに向かって突進する。
カインの目の前に迫る、風の魔弾と稲妻。

カインはそれらを意に介さず、ただひたすらに真っすぐ突進していく。
風の魔弾が青い魔力のマントにぶつかると、青い魔力の粒子をあたりに激しくまき散らしながら相殺する。
続いて、横なぎで向かってくる稲妻は、2枚目と3枚目の魔力のマントを霧散させる。

(ここ!)

カインはレオンを自身の剣の間合いに捉えると、上段に構えて一気に振り下ろした。
レオンが疲労困憊の目の奥で何かをギラリと輝かせると、レオンの背面から剣の形状をした魔力の塊が飛んできた。

(なにか奥の手があるとは思っていたけど!)

レオンの渾身の隠し玉は、本来は4本の剣を生成してぶつける技ではあったが、魔力切れだろう。1本の剣のみが生成され、カインに向かっていきカインの最後の青い魔力のマントと相殺されて消えていく。
それと共に、地面に倒れこみ始めるレオン。
もはや、勝負は決したが、カインはある考えが頭に浮かぶ。

(エアリーへ処刑を命ずるこの王子がいなくなれば、もう安心だろうか?)

倒れこんでいくレオンの顔面に向かって、カインの剣が容赦なく叩きこまれようとしたその時――。

レオンとカインの間に氷の盾が突然現れて、カインの一撃を防いで砕け散った。
クライン・ヴィヴァールが放った氷の魔法だ。
そして、クラインの叫び声が聞こえる。

「勝負ありだ! 気絶している者への追撃は禁止されている!!!」

カインは渾身の一撃を邪魔されバランスを崩して、何度か地面で前転してから立ち上がり、服に着いた土ぼこりを払って振り返った。

レオンは気絶はしてはいなかったが、はぁはぁと大きく息を乱しながら横たわって、クラインに向かって手を振っている。

「私は気絶はしていない。私の負けだ。カイン・ハーヴェー」
「流石ですね。王子様。驚きました。ここまで強いとは」
「カイン・ハーヴェー。それは、嫌味か?」
「いえ、本音です」

(実際、最後の攻撃はびっくりした。あれはLV45で使用できる技だ。あれを隠し玉にとっておいたということは、レオンのLVは45相当と見て問題ないだろう。そして、あれは俺の魔力の壁を砕けなかった。俺自身のレベルは50相当と見ていいだろう……)

「王子様。色々と実りのある良い試合でした」
「レオンでいい」
「はい?」
「私のことは、レオンと呼べばいいと言ったのだ。カイン・ハーヴェー」
「そうですか。じゃあ、俺のこともカインでいいですよ」
「そうか。カイン。願いはなんだ?」
「願い……。そうですね。今から一週間後、4月15日の午後1時30分頃に学園のハルミテ広場で迷子になっている女の子を助けてあげてください」
「……お前は占い師か? 本当に予見者なのか? なんだその妙に具体的な話は」
「いいから。必ずやってください。いいですか? レオンは俺に負けたんですからね」
「……わかっている! 約束は違えない」

クラインは、横たわっているレオンに走り寄ってきて肩を貸して起こし上げた。そして、カインを憎々し気に睨みつけながらつぶやいた。

「カイン・ハーヴェー……」
「なんでしょう? 先輩」
「……なんでもない」

やがて、クラインとレオンはコロシアムから去っていった。
残されたのは、土ぼこりで薄汚れたカインと、駆け寄ってきたエアリーの二人だけである。
エアリーは興奮した面持ちで顔を真っ赤にしながらカインの傍に行くと、カインの手を取って言った。

「カイン! 凄かったわカイン! でも、あなたならもっと早く終わらせられたんじゃないかしら?」
「まぁ、ちょっと色々確かめたいことがあって」
「さっき、レオンに言っていたのは、乙女ゲーというものの主人公、つまりヒロインのことよね?」
「うん」
「カイン。そう言えば私、あなたからヒロインの容姿や性格を聞いたことがなかったわ」
「うん。決まってないからね」
「え? 決まってない? どういうこと?」
「主人公はキャラクリできるんだよ」
「キャラクリ?」

エアリーがきょとんとしながら首をかしげている。その様子がとても可愛らしくて抱きつきたくなる衝動を抑えながらカインは続けた。

「キャラクタークリエイトと言って、容姿や声は遊ぶ人の自由に変更ができるんです。一応サンプルデータは4つくらい用意されてはいるんですが、デフォルトキャラみたいのはなくて、クリエイト画面では真っ黒い泥人形みたいのが表示されていて、そこから色々パーツを選ぶんです」

エアリーは、カインの言っていることが半分以上よくわからなかったが、ふと以前自分が見た夢のことを思い出した。夢で出てきたヒロインの顔は真っ暗で良く見えなくて、場面によって髪の色や髪型、それこそ胸のサイズなどのプロポーションですらバラバラだった。
無限の存在……そう感じたのを覚えている。

「そう……。じゃあ、名前は?」
「名前もプレイヤーが自由に決めるので……」
「てがかりないんだ?」
「手掛かりは、ヒロインがこの学園に向かう途中で事件に巻き込まれて、遅れて入学すること。それが4月15日。そして、レオンとハルミテ広場で午後1時30分に出会うこと」
「そう。つまり、レオンに会うように言ったのは……」
「うん。レオンが出会ってくれないと、誰がヒロインなのかわからないんだ」
「じゃあ、私達もその日その時間にこっそり覗かないとね」
「うん……」
「どうしたの? カイン?」
「いやぁ……。アクションRPGだからさ。キャラクタービルドってのがあってだね」
「はい?」
「キャラクターをどう成長させるかってことかな」
「うん?」
「なんというか、ヒーラー寄りにしたり、アタッカー寄りにしたりって色々あるんだよ」
「あぁ、教育方針ってこと?」
「うん。まぁ、そんな感じ。それでさ」
「うん」
「ヒロインが最初に従えている精霊が火で、武器がナックルだったら、勝てないかもしれない」
「どういうこと?」
「ヒロインが最初に従えている精霊は、キャラクリで選べるんだけど……。火の精霊とナックルの相性が抜群に良すぎて……。バトル好きの間では、最強ビルドって言われていたんだ」
「そうなの? でも、別にヒロインと戦う必要ないんじゃないかしら?」
「そうだね。悪役令嬢にならなかったエアリーなら、戦う必要はないかもしれないから……うーん」
「まだなにかあるの?」
「いや、こういう物語ってさ、大抵、運命の強制力みたいなのが働いて、どう足掻いても戦うことになったりするんだよね。まぁ、でもこの世界は、確かに生きた世界だから、ゲーム通りに進むわけじゃないけどさ」
「そうなの……。じゃあ、私は結局悪役令嬢になって、処刑されちゃうのかしら?」
「ごめん。不安にさせることを言って。エアリー。君は必ず守ってみせる」
「フフ。期待しているわ。私の騎士、カイン・ハーヴェー」




夕暮れ時、カインの私室でエミリアの甘い女の声が響く。

「はぁ……はぁ……。ちょっと、なんでまた襲ってくるのよぉ」



「じゃあ、なんで俺の部屋にくるのさ」
「だから、仕事でしょうがぁ……あんっ」


数分前――。


カインが、レオンとの試合のあと、屋敷に帰って簡単にシャワーで汚れを落とし、自室に帰るとエミリアがいた。
あんなことがあったというのに、そんな毎日熱心に掃除をする必要ないだろうに、エミリアはカインに背を向けて床のモップ掛けをしていた。
カインがそっと近づくと、エミリアは少しびくっと身体を震わせたが、構わず掃除を続ける。

(ドアを開ける音で気づくだろうに……)

カインはエミリアを後ろから抱きしめる。

「きゃっ! また!?」

エミリアの少しわざとらしい驚き声に続いて、首筋から香るエミリアの優しい眠たくなる甘い匂いが香った。
戦いで高揚していたところに、年頃の可愛い女の子が自分の腕の中にいる。
昂った身体は甘い匂いを嗅いで、激しく劣情を抱く。
自然と股間のものは硬く大きくなっていき、エミリアのお尻を押した。

「ちょっと、カイン?」

エミリアが振り返る。
カインの目に飛び込んできたエミリアの表情は、顔を真っ赤にしながらも恍惚を浮かべていて、やがてもじもじと身体をくねらせ、その豊かなお尻をわざとらしくカインのズボンの中のペニスに押し付けてきた。

「壁に手をついて」
「……仕事中なんだけど?」

そういいながらもエミリアは前かがみになりながら壁に手をついて、お尻をカインに向けて突き出す。
カインは、エミリアのメイド服のロングスカートをまくりあげると、そこには何も身に着けていないお尻があらわれて、淫花からはダラダラとよだれのように蜜が太ももをつたって流れ落ちていた。
身体をほぐす必要がないことを悟ったカインは、ズボンから自分の硬く膨張したものを取り出すと、遠慮なく一気にエミリアの膣穴を貫いた。

「ひぃぐ!」

エミリアが声にならない女の悲鳴をあげる。
カインのペニスはズブズブと奥に向かって押し込まれていき、エミリアの肉沼のヒダヒダはそれから精子を搾り取ろうとうねって小さな快楽を連続でカインに与えていく。

「動くぞ」

カインがぼそりと呟いて腰を前後に動かす。
エミリアの身体がそのたびに揺すられて、ほどよいサイズの胸を揺らしていく。
メイド服の背面のチャックはやがて降ろされて、半脱ぎにさせられると、その隙間からカインの腕が入っていて、しっとりとした肌触りの胸を揉んだ。
カインがひともみするたびに、カインの手からは柔らかく、そして若々しい弾力が伝わってくる。

「はぁ……うぅ……恥ずかしいぃ……」

エミリアが左手で口を抑えながら、右手で必死に身体を支える。
声を出さまいと歯を食いしばり、手で口元を抑えるその健気な様子に、カインはぞくぞくとしたものを背筋に感じる。戦いで昂った気持ちは、自然と腰の動きを早めていき、少し意地悪したい気持ちがわいてきて、エミリアの胸の桃花を優しくつねった。

「うっ!……はぁん!」

エミリアがびくっと一瞬身体を反らす。秘処からは、より一層愛液が漏れだして、カインが腰をふるたびにじゅぽじゅぽと淫靡な音を立てる。エミリアはその音を聞きながら、淫らな状態になっている自分を否定するかのように、時折首を左右にふった。

「ちょっと……。はやい……はやいよぉ……」
「ごめん。今は、手加減できない」

レオンとの戦いの記憶が、腰の動きをゆるめることを許さない。
パンパンパンと乾いた音、ジュポジュポと愛液が糸をひきながらカインとエミリアを繋ぐ音、そして、どんどんと匂いが濃くなっていく膣からのレアチーズケーキのようなエミリアの女の香り。

「はぁ……ぁぁ……。ちょっとぉ……なんでまた襲ってくるのよぉ」
「じゃあ、なんで俺の部屋にくるのさ」
「だから、仕事でしょうがぁ……あんっ」
「本当に?」
「うっんっ……はぁ…はぁ……」

エミリアは段々と快楽の波が頭を駆け巡っていき、姿勢を維持することができず、床にむけて崩れていき、やがてカインのものがぬるっと抜ける。
エミリアの頭が壁に寄り掛かり、左胸が壁に押し付けられて丸く変形する。
カインは、床に伏せ始めてしまったエミリアを見ても容赦することなく、そのまま床に仰向けに寝転がらせると、正常位で足を開かせ、再び自分のモノをエミリアの女の分け目へねじ込む。
エミリアがこれ以上にないほど顔を上気させながら、ぬるりと入ったペニスを無意識ながら締め付ける。



「うっ。キッツ」

カインの目の前には、後ろからではよく見えなかったエミリアの程よい胸の双丘が重力で丸く広がっている姿が目に入る。両手でこれでもかとその胸を揉みながら、乳首を人差し指で優しくこすっていく。
何度かこする度に、エミリアがびくっびくっと身体を震わせた。

「あっ、あっ、なんかいっぱい、いっぱいになっていく……」

カインはエミリアの小さくて可愛い口に唇を重ねて、強引に舌をねじこむ。
カインの舌とエミリアの舌が絡み合う。
互いの柔らかな舌が絡み合うたび、癒しに近い柔らかな心地よい快感が頭を通り抜けていく。
エミリアが何も考えられなくなり、ぼわっと恍惚の表情を浮かべたころ合いで、カインは激しく腰を動かしながら、指でエミリアのクリトリスを愛撫し続けた。

「カイン! カイン! あっ、イクっ……もう、無理。あぁ……真っ白になる……」

エミリアは、艶やかな囁くような声と共に身体にぎゅっと力が入り、カインのペニスを締め付ける。
腰と後頭部にチリチリとした快感がこみあげてきたカインは、エミリアの息も絶え絶えな甘い囁き声と共に、搾り取るように締め付けられた肉のヒダヒダの快感に耐えきれず、精液を勢いよく中に放った。
その瞬間、エミリアの身体から力が一気に抜ける。

カインのペニスがエミリアの中で、びくっびくっと脈打ち、その度に多幸感と共に白い精が放たれエミリアの奥を目指して流し込まれていく。

「はぁ……」

カインが戦いの後くすぶっていた高揚感が少し落ち着いてくるのを実感したとき、目の前のエミリアは、焦点の合わない目を中空に向けていて、じんわりと汗ばんだ健康的な肌の美しい肢体は、もはや自分では制御できないのだろう、小さな痙攣をランダムに繰り返していた。
口はだらしなく恍惚の表情のままぽかんと開いていて、口の端からはよだれと、女の艶めかしい甘い吐息が激しく漏れる度、胸が大きく動いた。

「乱れるメイドさん。えろいなぁ」

カインが誰に聞かせるわけでもなく囁く。
メイド服が半分脱げ、光に照らされたじっとりと汗ばむ健康的な肌がとても艶めかしい。
脱力しているエミリアの胸を何気なく揉むとエミリアの口から甘く吐息が漏れる。

「んっ」

エミリアの中で精を吐き終わり、少しずつ小さくなろうとしていたペニスが、快楽に呆けて脱力しているエミリアの喘ぎ声に再び元気を取り戻す。

「……うん?」

ぼわっとしているエミリアの間の抜けた声、何がなんだかわからないといった涙の溜まってキラキラと輝く瞳、ぐったりと顔を横に向け、頭の重さを床に預けていたが、再度急に揺さぶられる身体に少し驚いて、エミリアは顔をカインに向ける。

「カイン? 嘘でしょ?」

カインから返事はない。
再び腰を振り始めているカインだが、今度はゆっくりと動かしていた。
それが、エミリアの中の快楽のポイントを的確に刺激して、波が去ったばかりの頭を再び快感がこみ上げさせて、味わっていた浮遊感をより強める。

「あぁああ! もう無理ぃいいい! もうだめぇえええ! あぁぁああん! らめだってぇえええ!」

エミリアは普段の自分で会ったら考えられないような獣のような喘ぎ声で叫ぶと、排尿のような感覚と共にふわふわとしたものに包まれる感覚に陥る。
何度も何度も絶頂させられても、カインは腰の動きをやめることはなく、大きな波が何度も全身を浮遊感と共にうちよせ流れていくうちに、エミリアは次第に考えるのをやめた。

「あっ……ぁっ……」

快楽の波が全身を駆け巡るたび、力なく吐息を吐き、身体を震わせる。

カインは、その日、エミリアの中に3回精を吐いてようやく収まった。




エアリーはベッドの中で、昼間の試合を思い出しながら、これから自分はどうしていくべきなのか考えた。

(このまま普通に過ごしていけば、私は処刑されることなく優しい充実した毎日と共に学園を卒業できる。でもそれだと、卒業と共に待っているのはレオンとの結婚、そしてレオンの子供をつくること……。それは、嫌だ。悪役令嬢じゃない以上、どんなにカインと愛し合おうとしても、政治的な圧力でレオンと結婚させられる。じゃあ、婚約を破棄され、そのうえで処刑されないようにするにはどうしたらいいの?)

エアリーは寝返りを打ちながら考える。

(4月15日に現れるヒロインを応援して、レオンとくっつけつつ、私がレオンには相応しくない女だという評判を作る。そうすれば、レオンは婚約を破棄せざるを得なくなり、ヒロインとくっついて、誰もが幸せな結末になるんじゃないかしら?)

言うのは簡単。
しかし、婚約を破棄されるほどの悪評というのは、相当なものでなければ黙殺されてしまうだろう。

(処刑されるほどではなく、されど、婚約は破棄される程度の悪評を築く……。できるかしら?)

そのまま眠りにおちたエアリーは、また自分が悪役令嬢となって処刑される夢を見た。

そして、翌朝。

いつもならば、甘えてカインに起こされるまでベッドの中で過ごすエアリーだったが、その日は起こされるよりずっと早く自分で起きると、メイドを二人呼んで自分の身支度を手伝わさせた。
だが、いつもなら身に着けるであろう学校の制服である紺のブレザーとベージュのスカートではない。

「真っ赤なドレスを持ってきて」

エアリーがメイドに力強い口調で言った。

「え? よろしいんですか? お嬢様……」

学園は制服を必ず着なくてはいけないというわけではない。
制服は、毎日の私服を用意することすら難しい、実力はあるがお金のない身上の者たちへの学園の気遣いでもあった。実際、所得の低い家庭の者には、制服はただみたいな価格で買える。
お金も実力も十分にあり、悪目立ちを恐れないのであれば、制服以外のものを身に着けて授業を受けることは誰にも憚れるものではない。
実際、有力な貴族の中には、ドレスで授業を受けている者もいる。

「構わないわ。私は今日から制服は着ません。これからは、鮮血のように真っ赤なドレスを着ていくわ」
「どういうことでしょうか? お嬢様」
「いいの。これは、私の覚悟の問題ですから」
「はぁ」

エアリーがナチュラルメイクをすませ、黒いブラとショーツ、そしてガーダーベルトを身に着けた後、用意された薔薇の意匠がところどころに施された真っ赤なドレスを身にまとう。

コンコン

エアリーの私室のドアを誰かが叩いた。
タイミングからしてカインがエアリーを起こしに来たのはわかっていた。

「カインでしょ? どうぞ、はいって」

エアリーの促しとともに、カインが部屋に入ると目を丸くして驚いていた。

「お、お嬢様? 今日はもう起きていらっしゃる? それどころか、そのドレスは一体? それで登校するのかい?」

カインの言葉に、エアリーは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「えぇ。そうよ。どう? まるで悪役令嬢みたいでしょ?」
「お嬢様。もう悪役令嬢になる必要はないのですが?」
「えぇ。そうね。でも、いいのよ。カイン」
「はぁ?」

カインの何が何だかわからないといった間抜け顔を横目に、つかつかとカインの横をすまし顔で通り過ぎてから大げさに大きな動きで振り返る。
真っ赤なドレスのロングスカートがばさっと広がり、ひるがえって、まるでエアリー自身が薔薇の花弁になったかのようだ。

「カイン・ハーヴェー」
「え? 急にフルネーム。こわっ」
「あなたにお願いがあります」
「なんでしょうか?」
「あなたがフラフラするのは腸が煮えくり返る想いがしますが、今、私はレオンの婚約者。あなたの行動を縛る権利はありません」
「はぁ」
「ですが、あなたの心がどこにいこうとも、最後は私の元へ帰ってきてください」

そう言って、勝ち気そうな笑顔でにんまりと口の端を上げる。
少し動揺しているのか目がわずかに泳ぐカインの表情。
それを見て、エアリーは今度は女神のような優しく慈しんだ微笑みを浮かべる。

「カイン。最後はあなたの帰る場所に私はなってみせます。だから、私の戦いを支えてください」
「……お嬢様が何を考えているのかわからないような、わかりたくないような……。でも、俺はエアリー、君を守ってみせる」

カインの言葉を聞いたエアリーは、満足気に微笑むと、くるりと踵を返して私室のドアをくぐる。
それに続くカイン。

「さぁ、カイン! 開演のベルが鳴るわ!」

舞台は整った。
さぁ、幕を開けよう。
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