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結婚編
竜王様の愚痴10
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「・・・・・・で、・・・・・・・なのだ。・・・・・・だろう? ・・・・・・なのに。・・・・・・でな、・・・・・・なのだ。だから、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつでもどうぞとは言ったけど、毎日やって来るとは思わなかった。
「おい、エルランド、ちゃんと聞いておるか?」
「はい」
「ローリーはな、我がいなかったら出産も乗り切れなかったと毎日感謝してくれてるし、イクメンだと褒めてもくれる。頼ってもくれるようになった。それはもちろん嬉しい。だがな、ちょっと違うのだ。ん? ああ、シッコか? よしよし」
竜王様は慣れた手つきでゼファイド様を抱き上げると、崖側の窓から腕を伸ばし用を足させる。
スッキリしてパワーアップしたゼファイド様は、再びボール遊びを再開し机の脚の間を勢いよくすり抜けたり、書類の山に突っ込んだり・・・
いや、我々もこうやって育てられてきたのだから、文句は言えないのだが。
散らばった書類を拾い集め、棚にしまい終わった後もずっと竜王様の愚痴は続く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でな、我もゼファーと一緒に学校に行くつもりだったのだ。そしたら、ん? 今度は腹がすいたのか。ちょっと待っておれ」
竜王様は包みを開け、中身の肉を小さく裂いてはゼファイド様の口元へ運ぶ。
「で、どこまで話たっけ? こら、そのように急いで食うでない。喉に詰まったらどうする。で、なんだっけ?」
「学校に行くつもりだったと」
「そうなのだ。ところがローリーは、我が一緒に行くと人間達が萎縮してしまうから来てはならんと譲らぬ。ならば、わからぬように結界で姿を隠して見ていると言ったら、気が散るからそれも駄目だと言うのだ。こんなはずではなかった! ローリーは朝から出て行って、夕方まで戻って来ないのだぞ? いちゃいちゃしようにも、本人がいなくてはいちゃいちゃできぬではないか! そうであろう? でな、・・・・・」
一体私はいつまでこの愚痴に付き合わなければならないのだろうか?
「アル~」
とその時、王妃様の明るい声が、竜王様の首飾りの赤紫石から響く。
王妃様が発明した通信具の試作品である。
驚くべきことに、遠く離れた場所にいる相手と会話が出来るのだ。
そればかりか、身につけていればその相手の状態や位置もわかるという。
今までは、アイデアはあったものの適する媒体の石が無かったため製品化できなかったらしい。
それが竜王様が創った透明な石によって実現させることが可能になったと王妃様は大層喜んでいる。
王妃様は、人間が自立できるよう竜王国に魔法具の製造という新たな産業を興したいと考えているのだ。
『エルさん、人間は仲間と一緒に暮らす生き物よ。仲間の役に立ちたい、認められたいと思うのは根源的な欲求なの。でも、それって逆に言えば、竜族を異種とみなさないで仲間だと思ってる証拠でもあるのよね』
我ら竜族の都合で生み出された人間に対し、責任を果たすつもりで不自由のない生活を与えていた。
だが、それが彼らの自尊心を奪っていたとは王妃様に言われるまでわからなかった。
「おっ、もうそんな時間か。わかった、直ぐに迎えに行く」
ソファーで丸くなっていたゼファイド様は、すでに竜王様の肩へと駆け上がっていた。
竜王様はゼファイド様を背に乗せて、王妃様を迎えに下流域へと飛び立って行った。
「やれやれ、やっと出て行った」
「竜王様はお幸せそうですね」
「ああ、まったく」
竜王国の天候はずっと穏やかで平和そのもの。
愚痴はこぼしに来ても、実のところ竜王様のご機嫌はとても良い。
「私も竜王国の為にはこのまま黙っているのが一番だとは思うのですけど、王妃様が竜王様に心の底から感謝して頼り切っておられるのを見るととても切なくて。そもそも王妃様を難産に追い込んだのは竜王様ですのに、ご自身が窮地を救ったかのように吹聴されたり、恩着せがましく王妃様に感謝を強要したり。私はどうにも納得がいかないのです」
まずい。
アウラは王妃様の難産に苦しむ姿を目の当たりにしてから、ずっと防げたはずなのにと後悔していた。
「そうだ! アウラ、久し振りに人間の国に物見遊山に行かぬか? 王妃様の出産に関しては、そなたには随分と世話になったゆえ、その労いも含めて、な!」
「エルランド様、それは本当ですの?! 嬉しいですわ! では、早速準備してまいります!」
アウラは嬉々として、執務室を飛び出して行く。
アウラを宥めるために口からついて出た言葉であったが、久し振りにゆっくり人間の国を外遊するのもよいかも知れぬ。
竜族の存在が各々国でどのように伝わっているかも知りたいし、竜王様の愚痴もそろそろ聞き飽きたしな。
いつでもどうぞとは言ったけど、毎日やって来るとは思わなかった。
「おい、エルランド、ちゃんと聞いておるか?」
「はい」
「ローリーはな、我がいなかったら出産も乗り切れなかったと毎日感謝してくれてるし、イクメンだと褒めてもくれる。頼ってもくれるようになった。それはもちろん嬉しい。だがな、ちょっと違うのだ。ん? ああ、シッコか? よしよし」
竜王様は慣れた手つきでゼファイド様を抱き上げると、崖側の窓から腕を伸ばし用を足させる。
スッキリしてパワーアップしたゼファイド様は、再びボール遊びを再開し机の脚の間を勢いよくすり抜けたり、書類の山に突っ込んだり・・・
いや、我々もこうやって育てられてきたのだから、文句は言えないのだが。
散らばった書類を拾い集め、棚にしまい終わった後もずっと竜王様の愚痴は続く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でな、我もゼファーと一緒に学校に行くつもりだったのだ。そしたら、ん? 今度は腹がすいたのか。ちょっと待っておれ」
竜王様は包みを開け、中身の肉を小さく裂いてはゼファイド様の口元へ運ぶ。
「で、どこまで話たっけ? こら、そのように急いで食うでない。喉に詰まったらどうする。で、なんだっけ?」
「学校に行くつもりだったと」
「そうなのだ。ところがローリーは、我が一緒に行くと人間達が萎縮してしまうから来てはならんと譲らぬ。ならば、わからぬように結界で姿を隠して見ていると言ったら、気が散るからそれも駄目だと言うのだ。こんなはずではなかった! ローリーは朝から出て行って、夕方まで戻って来ないのだぞ? いちゃいちゃしようにも、本人がいなくてはいちゃいちゃできぬではないか! そうであろう? でな、・・・・・」
一体私はいつまでこの愚痴に付き合わなければならないのだろうか?
「アル~」
とその時、王妃様の明るい声が、竜王様の首飾りの赤紫石から響く。
王妃様が発明した通信具の試作品である。
驚くべきことに、遠く離れた場所にいる相手と会話が出来るのだ。
そればかりか、身につけていればその相手の状態や位置もわかるという。
今までは、アイデアはあったものの適する媒体の石が無かったため製品化できなかったらしい。
それが竜王様が創った透明な石によって実現させることが可能になったと王妃様は大層喜んでいる。
王妃様は、人間が自立できるよう竜王国に魔法具の製造という新たな産業を興したいと考えているのだ。
『エルさん、人間は仲間と一緒に暮らす生き物よ。仲間の役に立ちたい、認められたいと思うのは根源的な欲求なの。でも、それって逆に言えば、竜族を異種とみなさないで仲間だと思ってる証拠でもあるのよね』
我ら竜族の都合で生み出された人間に対し、責任を果たすつもりで不自由のない生活を与えていた。
だが、それが彼らの自尊心を奪っていたとは王妃様に言われるまでわからなかった。
「おっ、もうそんな時間か。わかった、直ぐに迎えに行く」
ソファーで丸くなっていたゼファイド様は、すでに竜王様の肩へと駆け上がっていた。
竜王様はゼファイド様を背に乗せて、王妃様を迎えに下流域へと飛び立って行った。
「やれやれ、やっと出て行った」
「竜王様はお幸せそうですね」
「ああ、まったく」
竜王国の天候はずっと穏やかで平和そのもの。
愚痴はこぼしに来ても、実のところ竜王様のご機嫌はとても良い。
「私も竜王国の為にはこのまま黙っているのが一番だとは思うのですけど、王妃様が竜王様に心の底から感謝して頼り切っておられるのを見るととても切なくて。そもそも王妃様を難産に追い込んだのは竜王様ですのに、ご自身が窮地を救ったかのように吹聴されたり、恩着せがましく王妃様に感謝を強要したり。私はどうにも納得がいかないのです」
まずい。
アウラは王妃様の難産に苦しむ姿を目の当たりにしてから、ずっと防げたはずなのにと後悔していた。
「そうだ! アウラ、久し振りに人間の国に物見遊山に行かぬか? 王妃様の出産に関しては、そなたには随分と世話になったゆえ、その労いも含めて、な!」
「エルランド様、それは本当ですの?! 嬉しいですわ! では、早速準備してまいります!」
アウラは嬉々として、執務室を飛び出して行く。
アウラを宥めるために口からついて出た言葉であったが、久し振りにゆっくり人間の国を外遊するのもよいかも知れぬ。
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