竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

文字の大きさ
33 / 144
出会い編

決着1

しおりを挟む
 我ら三人は今あばら家の中で、三本の氷柱となって直立に床に縫い付けられ、身動きが全く出来ない状況にある。
 そして、唯一、頭だけは口がきけるようにと氷に覆われていないものの、全身は氷漬けにされていてかなり冷たい。
 
 やっとローリーが我らを信用して、胸の内を打ち明けてくれるものと、我は喜び勇んでローリーの後をついて行ったのだが、あばら家に入った途端、氷柱にされてしまった。

「えっと、ローリー、これは一体どういう事なのだろうか?」

 ローリーはテーブルらしきものの上に立って、杖をピシピシと自らの手の平にに打ちつけながら、我らを睥睨するように見下ろしている。
 どうも胸の内を打ち明けてくれるという状況では、なさそうである。

「オレの正体、知ってるんだろ?」
「え?」
「知っているのに知らない振りをして、一体何をするつもりだったんだ?」

 ローリーが我を見据えて、詰問する。
 何をするつもり?
 我はただ、後をつけて正体を探ったことが、バレないように黙っていただけなのだが、答えにくいな。

「あ、いや、その・・・」

 我がなんと答えていいものやら迷っていると、

「すっかりアルの演技に騙されたよ。馬鹿な振りして油断させ、イシュラム国から来たと嘘をつき、オレを有頂天にして信用させた。何が目的だ?」 

 ローリーが、さらに何やら、さっぱり分からないことを言う。
 演技? 馬鹿な振り? 一体ローリーは何を言っているのだ?
 とりあえず、答えられる問いについては正直に言っておこう。

「確かに我はローリーが何者であるか、推測している答えはある。しかし、確証があるわけでもないし、正体を知っていると言ってよいものかどうかはわからん」

「ああ、やっぱりアルの超能力でバレたのか」
 
「ローリー、お前は何か誤解をしている。アルベルト様は演技や馬鹿な振りなどしていない。あれは素だ。お前を騙そうなどとは、これっぽっちも思ってもいないぞ! それから、目的は何だと聞いたな? 俺達の目的は花嫁探しだ。お前に見せたあのリストは、花嫁候補者の令嬢達なんだ」

 ディーンが横から口を挟む。

「はっ、笑わせるなよ。そんな誤魔化しが通用するとでも? あれはお前達が攫う予定の令嬢達のリストだ。仲間に引き入れるためのな」

「一体何の話だよ!? さっぱりわかんねぇ。はっきり言えよ!」

「お前達が、闇の魔法使いの仲間だってことは分かってるんだ!」

 闇の魔法使いの仲間?

「はあ? そんなわけないだろ!」

「そうだ、我らは仲間などではないぞ」
 
「残念だけど、口論している時間はオレには無いんだ。闇の魔法使いの仲間と知って、放免するわけにはいかない。王宮の魔法使いが来るまで、このまま氷漬けでいてもらうよ」

 ローリーは台から飛び降り、出口に向かう。

「おい、冗談だろ?」
 
「ああ、そうだ。アルが推測した正体って誰? 一応聞いておく。当たったら、そうだな、共に旅をした仲間への礼儀だ、魔法を解いた本当の姿でお別れしてやるよ」

 出口に向かったローリーがくるりと我に向き直り、見つめて真剣な面持ちで言う。
 我もローリーの美しい緑の瞳を見つめて言った。

「グローリア=ハイネケンだ」

「はは、正解」

 ローリーが自嘲したような薄笑いで言った。
 そして、ローリーは幻影魔法を解いていく。
 この薄暗いあばら家に輝いて現れたのは、黄金の髪と真っ白な雪を思わせる白い肌、変わらぬ緑の瞳を持ったまごうことなき小さな女の子だった。

「じゃ、さようなら」 

 小さな女の子が言った。
 


 ああ、ああ、なんということだろう。
 身体が悦びに震える。歓喜の声を上げている。
 我の番いに間違いない!!
 ぼやけていた輪郭がはっきりとその姿を現した。
 
 魔力が奔流となり、ローリーを求めて凄まじい勢いで体中を駆け巡る。
 気付けば氷の柱を粉砕し、出て行こうとしたローリーを捕らえ抱きしめた。
 そして、本能のままにローリーを羽交い締めにし、逃げられないように頭を押さえ、顔中を舐め回し唇を割って魔力を注ぎ込む。
 しかし、次の瞬間抱きしめていたはずのローリーの体が消えた。

「え? あれ? どこに行った?」

 きょろきょろ辺りを見回すと、焦った顔をしたローリーが壁に張り付いていた。
 ローリーを見つけ手を伸ばそうとした瞬間、ローリーから氷魔法が放たれ、我は再び氷漬けにされてしまった。
 でも今度は柱ではなく、大きな氷の塊が我の周りにくっ付いている。

「いきなり何するのよ! びっくりして死ぬかと思ったわよ!」

 真っ赤になった顔を袖でごしごし拭きながら、ローリーがパニックを起こしたようにギャーギャー喚いている。

「本当に、何考えてんのよ! 汚いじゃない! 全く、何してくれるのよ! あーもう、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、アルの馬鹿!! あーもう、信じられない! 本当に馬鹿なんだから!!」

「我は馬鹿ではない。番いにツバを付けただけだ! 他の雄に奪われぬようにな。番いを見つけた時の、実に真っ当な対応だ。ああ、ディーンよ、ローリーは我のものだ、よいな」

 フランには番いがいるから安心だが、ディーンにはまだいないからな。
 一応釘を差しておくことにする。
 こんなに愛らしいローリーの姿を見て、うっかり好きになってしまうとも限らんからな。
 早い者勝ちなのだ。

「ローリー、我のローリー、前の姿も愛らしいと思ってはいたが、その姿は以前の百万倍愛らしい。我は気に入ったぞ」

「ローリー、そろそろここから出してはくれまいか。愛しいそなたを抱きしめ、愛でたくともこれでは動けぬ。ああ、後ろに回らんでくれ。後ろは首が回らんから、そなたが見えぬ」
 
 お願いしたのにローリーは後ろに回って、何やらディーンと話している。
 耳もすっぽり氷漬けにされているせいで、何を話しているのかよく聞こえない。

「ローリー、ローリー、ディーンとばかり話していないで、我の方にも来てくれ。ローリー、愛しい我のローリー、こっちへ」

「アル、ちょっとうるさいから、黙ってて!」

 ローリーに叱られた。
 我が悪いのか? なんで? 我は何も悪いことはしていないぞ。
 ローリーがこっちに来てくれないから、我がうるさいのではないか。
 そもそもこんなふうにローリーが氷漬けにするから、我がローリーの元へ行けないのだ。
 
 とは思うものの、番いに嫌われるのはとても辛い、黙って大人しく待つことにする。
 

「××××××××」
「××××××××××××××××××××××××××××」
「××××××××」
「××××××××××××××××××××××××××××」
「××××××××××××」
「!!」
「×××××××!!」

「×××××××!!」
「×××××××××××××××××××!!」
「×××××××!!」
「×××××××××××××××××××!!」
「×××××××!!」
「×××××××!!」

 
 まだかな? 
 まだ終わらないのかな?
 我はローリーが目の前に来てくれるのを、今か今かとじっと待っていた。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...