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外伝 レオンハルト編
魔獣の襲撃6
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これで終わりっと。
最後の一頭の首を落とし、周囲を見渡しながらフゥーと大きく息を吐き出した。
砂けむりを舞い上げて突撃して来たのは、ジャイアントボアの大群だった。
そして、憎悪の念の塊となった群れの中心にいたのは、やはりアレだ。
この勢いのまま街に侵入を許せば、人間ばかりでなく、街の建物ごと何もかもが薙ぎ倒され踏み潰されてしまう。
チッ、普段の俺なら、この程度の群れなど丸ごと焼き払って、一気に終わらせられるのに。
俺は、魔力の消費を最小限に抑えるために、魔法は魔獣の侵入を阻む土の防壁と動きを封じる氷魔法だけに留め、剣によって一頭ずつの首を落とすという原始的な面倒くさい方法を取った。
一面に広がって落ちている多数のキラキラした宝石のような魔石を眺め一息付くと、その中で一際異彩を放つ例の魔石だけを拾い上げ、大切に懐にしまう。
よし、一旦フローラの元に戻ろう。
マティアスがついているから大丈夫だと思うが、フローラの無事も確認したいし、心配もしているだろうから安心させてやりたいしな。
既に、俺の耳には、ダイアナが大森林地帯に繋がっていた道を封じたとの通信が入っていた。
今回ポルト全域に投入された魔獣は全て大森林地帯に住んでいたものだ。
魔獣襲撃の犯人は、大森林地帯とポルトの空間を繋ぎ合わせる事によって、莫大な数にのぼる魔獣を移動させた。
確かに、こんな大それた事が出来るのは、膨大な魔力を保有する父上を除けば魔族くらいしかいない。
というか、こんなふざけた真似をするのは、奴らだけだ。
魔族に操られていたのか、あの魔石を持っていない魔獣も、人間に対する恨みの念を纏っていた。
懐に忍ばせた魔石は今なお禍々しい邪気を放っている。
この魔石の事を思うと、どす黒い怒りと深い悲しみと、どうしようもない悔しさが膨れ上がってやり切れない。
今ならば、はっきりと感じられる、邪気に紛れてかすかに伝わってくる竜気、この魔石は元は竜族、俺達の祖先だったのだ。
兄上の話は衝撃的なものだった。
クリムの襲撃を聞いたその晩、相談があるというと、兄上はすぐに会おうと言ってくれた。
兄上にポルトの街を蹂躙した魔獣の始末をお願いすると既に始末した後だという。
「兄上、その魔獣を相手にした時どう思った? ヘンじゃなかった? 始末した時、そいつ、どんな魔石になった? 俺、兄上に見てもらいたいものがあるんだ。この魔石なんだけど」
俺は封印して収納してあったソレを、兄上の前に突き出した手の平の上に魔法で取り出した。
俺は不気味な、持っていると悪い影響がありそうなソレを、自分の身の近くに置きたくなかった。
「鹿の魔獣から出て来たものなんだけどさ、強い邪気に紛れてかすかに竜気を放っている気がするんだ。でも、俺、竜の魔石なんて見た事も聞いた事もないから、気のせいかも知れないけど。ただ、こんな魔石は初めてでさ、この禍々しい色といい、怨念めいた気といい、一体何だと思う?」
魔石といったら、色は様々だけど、普通は宝石のようにキラキラした美しい魔力の結晶体なのに。
「レオン、それはな、紛れも無い竜の魔石だ。そして、お前の懸念通り、俺が狩った魔獣の魔石もこれだ」
兄上は苦しげな顔つきで、懐から二つの、俺が持っているヤツにそっくりな魔石を取り出した。
クリムを襲ったヤツ以外に、もう一匹いたようだ。
「通常、竜族は竜の谷において、魔力の消失とともに肉体も消滅という死の過程をとる。だから魔力の結晶体である魔石が残る事はない。竜が魔石になるのは、他の魔獣と同様、魔力を有しながら命を奪われた時だ。だが、竜族の首などおいそれと落とせはしない。大陸に散らばっていた竜族が竜の谷に逃げ込む原因となった、あのおぞましい竜狩りの際に被害に遭った竜のものだろうというのが、父上の見解だ」
竜の国というおとぎ話のもとになっているおぞましい史実。
人間にとっては祖先が犯した大昔の絵空事のような罪だが、竜族にとっては決して忘れる事は出来ない、看過出来ない歴史だ。
その証拠に、番いを人間に求めるようになった今でさえ、竜族は人間という種族が信用出来ずに竜王国に引き籠ったままだ。
「発端はオーティスのはずれで起こった、魔獣が人を襲っているという事件だった。だが、魔獣に襲われるなどありふれた事だろう? はじめの頃は重要視されていなかったんだが、この魔石がダイアナの目に入って、お前と同じように竜気を感じたダイアナは父上に見てもらおうと竜王国に持ち込んだんだよ。父上が、初めてこの魔石を見た時の反応は凄まじかったぞ。数か月前の地震を覚えているか? あれはな、父上が憤怒のあまり大地を揺るがしたのが原因だ」
俺は目を剥いた。
覚えている。あの時は、竜王国始まって以来の地震だ火山の爆発だと、国中で大騒ぎになったのだから。
「俺が、視察に出たのもこれを調べるためだったんだ。お前に知らされなかったのは未成年だったからだが、お前はもう既に巻き込まれてしまっているからな、きちんと知っておくべきだろう」
兄上はそう言って真正面にやって来ると、姿勢を正し、俺の目を見据えて真剣な口調で言う。
「父上は竜の魔石を一つ残らず竜の谷に還してやりたいと強く望まれている。そして母上は、この機を逃さず、本気で魔族と対峙するつもりだ」
本気で・・・
最後の一頭の首を落とし、周囲を見渡しながらフゥーと大きく息を吐き出した。
砂けむりを舞い上げて突撃して来たのは、ジャイアントボアの大群だった。
そして、憎悪の念の塊となった群れの中心にいたのは、やはりアレだ。
この勢いのまま街に侵入を許せば、人間ばかりでなく、街の建物ごと何もかもが薙ぎ倒され踏み潰されてしまう。
チッ、普段の俺なら、この程度の群れなど丸ごと焼き払って、一気に終わらせられるのに。
俺は、魔力の消費を最小限に抑えるために、魔法は魔獣の侵入を阻む土の防壁と動きを封じる氷魔法だけに留め、剣によって一頭ずつの首を落とすという原始的な面倒くさい方法を取った。
一面に広がって落ちている多数のキラキラした宝石のような魔石を眺め一息付くと、その中で一際異彩を放つ例の魔石だけを拾い上げ、大切に懐にしまう。
よし、一旦フローラの元に戻ろう。
マティアスがついているから大丈夫だと思うが、フローラの無事も確認したいし、心配もしているだろうから安心させてやりたいしな。
既に、俺の耳には、ダイアナが大森林地帯に繋がっていた道を封じたとの通信が入っていた。
今回ポルト全域に投入された魔獣は全て大森林地帯に住んでいたものだ。
魔獣襲撃の犯人は、大森林地帯とポルトの空間を繋ぎ合わせる事によって、莫大な数にのぼる魔獣を移動させた。
確かに、こんな大それた事が出来るのは、膨大な魔力を保有する父上を除けば魔族くらいしかいない。
というか、こんなふざけた真似をするのは、奴らだけだ。
魔族に操られていたのか、あの魔石を持っていない魔獣も、人間に対する恨みの念を纏っていた。
懐に忍ばせた魔石は今なお禍々しい邪気を放っている。
この魔石の事を思うと、どす黒い怒りと深い悲しみと、どうしようもない悔しさが膨れ上がってやり切れない。
今ならば、はっきりと感じられる、邪気に紛れてかすかに伝わってくる竜気、この魔石は元は竜族、俺達の祖先だったのだ。
兄上の話は衝撃的なものだった。
クリムの襲撃を聞いたその晩、相談があるというと、兄上はすぐに会おうと言ってくれた。
兄上にポルトの街を蹂躙した魔獣の始末をお願いすると既に始末した後だという。
「兄上、その魔獣を相手にした時どう思った? ヘンじゃなかった? 始末した時、そいつ、どんな魔石になった? 俺、兄上に見てもらいたいものがあるんだ。この魔石なんだけど」
俺は封印して収納してあったソレを、兄上の前に突き出した手の平の上に魔法で取り出した。
俺は不気味な、持っていると悪い影響がありそうなソレを、自分の身の近くに置きたくなかった。
「鹿の魔獣から出て来たものなんだけどさ、強い邪気に紛れてかすかに竜気を放っている気がするんだ。でも、俺、竜の魔石なんて見た事も聞いた事もないから、気のせいかも知れないけど。ただ、こんな魔石は初めてでさ、この禍々しい色といい、怨念めいた気といい、一体何だと思う?」
魔石といったら、色は様々だけど、普通は宝石のようにキラキラした美しい魔力の結晶体なのに。
「レオン、それはな、紛れも無い竜の魔石だ。そして、お前の懸念通り、俺が狩った魔獣の魔石もこれだ」
兄上は苦しげな顔つきで、懐から二つの、俺が持っているヤツにそっくりな魔石を取り出した。
クリムを襲ったヤツ以外に、もう一匹いたようだ。
「通常、竜族は竜の谷において、魔力の消失とともに肉体も消滅という死の過程をとる。だから魔力の結晶体である魔石が残る事はない。竜が魔石になるのは、他の魔獣と同様、魔力を有しながら命を奪われた時だ。だが、竜族の首などおいそれと落とせはしない。大陸に散らばっていた竜族が竜の谷に逃げ込む原因となった、あのおぞましい竜狩りの際に被害に遭った竜のものだろうというのが、父上の見解だ」
竜の国というおとぎ話のもとになっているおぞましい史実。
人間にとっては祖先が犯した大昔の絵空事のような罪だが、竜族にとっては決して忘れる事は出来ない、看過出来ない歴史だ。
その証拠に、番いを人間に求めるようになった今でさえ、竜族は人間という種族が信用出来ずに竜王国に引き籠ったままだ。
「発端はオーティスのはずれで起こった、魔獣が人を襲っているという事件だった。だが、魔獣に襲われるなどありふれた事だろう? はじめの頃は重要視されていなかったんだが、この魔石がダイアナの目に入って、お前と同じように竜気を感じたダイアナは父上に見てもらおうと竜王国に持ち込んだんだよ。父上が、初めてこの魔石を見た時の反応は凄まじかったぞ。数か月前の地震を覚えているか? あれはな、父上が憤怒のあまり大地を揺るがしたのが原因だ」
俺は目を剥いた。
覚えている。あの時は、竜王国始まって以来の地震だ火山の爆発だと、国中で大騒ぎになったのだから。
「俺が、視察に出たのもこれを調べるためだったんだ。お前に知らされなかったのは未成年だったからだが、お前はもう既に巻き込まれてしまっているからな、きちんと知っておくべきだろう」
兄上はそう言って真正面にやって来ると、姿勢を正し、俺の目を見据えて真剣な口調で言う。
「父上は竜の魔石を一つ残らず竜の谷に還してやりたいと強く望まれている。そして母上は、この機を逃さず、本気で魔族と対峙するつもりだ」
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