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第四話: バーデン村
しおりを挟む俺は誰にも見られないよう魔法の練習をしていたら、日が暮れてしまったため急いで家に向かっていたのだが、何かあったのか護衛隊が集まっていた。
「父さん何かあったの?」
「ヤミか。あんまり遅くまで外にいるんじゃないよ。」
「ごめんなさい。それより、なんで護衛隊が集まってるの?」
「山を挟んで向こう側にバーデン村があるのは知ってるな?そのバーデン村が魔獣の群勢に襲われていると情報が入って、加勢に行くところだ。」
「でも、それじゃあ、父さん達も危ないんじゃ…。」
俺が不安そうな目で父さんを見つめると、父さんは俺の頭に手を置きしゃがみながら話してくれた。
「魔の国との境界であるバーデン村とバンダリー村はこれまでも群勢がきた時は助け合ってきたから危険でも行かないとダメなんだよ。」
「そうなんだ。ちゃんと帰ってくるよね?」
「当たり前だ!戻ってくるときには負傷者がいるかもしれないからヤミはマリアの手伝いをしててくれ。」
「わかった。」
俺が不安を隠しきれないまま頷くと、父さん達護衛隊はバーデン村へ向かって行った。
俺は父さんに言われた通り、お母様の手伝いをしに向かった。
「あら、ヤミ!アーサーには会ったの?」
お母様は忙しそうな中、俺の方に駆け寄ってきた。
「うん。父さん無事に帰ってくるよね?」
俺は父さんが心配で今にも泣きそうな声が出てしまった。
「大丈夫よ。アーサーは強いもの。それより、ヤミも手伝って。人手が足りないの。」
お母様は自分のことのように誇らしげにして、俺に手伝いをするよう言ってきた。
俺は体を動かしてた方が気が紛れると考え手伝いを積極的にこなした。
手伝いも終わり一度お母様と一緒に家へ帰ったが護衛隊がどうなったのか情報が全然こなく、俺は気がついたら疲れて寝てしまっていた。
日が昇り窓から差す光で目が覚めた俺は、自分が寝てしまったことに気づき飛び起き、お母様のことろへ向かった。
「お母様、父さんたちは?」
「まだ帰ってこないし情報も入ってこないのよ。群勢を相手にしている訳だから遅いのは仕方ないけど、少し心配だわ。」
昨日はあんなに落ち着いていたお母様も流石に少し不安な気持ちがあるのか、落ち着かなそうに歩いていた。
村の入り口で父さんの帰りを待とうと考え、家を出て歩いていると、慌てた様子の村人が叫んでいた。
「護衛隊が帰ってきたぞー!」
その声に反応して俺は走って入り口まで向かった。
入り口に着くと護衛隊の人たちが互いに肩を貸しながら歩いて来るのが見えた。
「父さん!大丈夫だった?」
俺はすぐに父さんを見つけ駆け寄った。
「ああ、なんとかな。負傷者もいるから話はマリアのところについてからだ。」
父さんはそういうと、護衛隊を連れてお母様のところに向かっていくのに俺はついていった。
幸い父さんはあまり負傷していなく治療を終えて、俺のところに来てくれた。
「バーデン村は大丈夫だったの?」
「俺たちが着いた時にはもう半壊状態でな。バーデン村の人たちの頑張りもあり魔獣は少なく、それを退治して帰ってきたのさ。」
俺の問いに対して父さんは静かに答えてくれた。
「バーデン村の人たちは?」
「無事な人たちは一緒に村に連れてきたのだが、かなり犠牲者が出てしまった。バーデン村には、元王国騎士団長もいたのだが、魔獣と戦っている途中で行方がわからなくなったみたいだ。」
「それじゃあ、もしかして…。」
「そうかもしれない。今回はかなりの数の群勢が来てたみたいでな。もっと早く着くことが出来ていたら…。」
父さんはそういうと、頭を抱えて落ち込んでいた。
一人にしてあげた方が良いと思い、俺はお母様の手伝いに向かった。
俺はまだこの時は知らなかったが、バーデン村が半壊させられ、犠牲者も多く出たことで次に魔獣たちの標的になるのはバンダリー村であり、それがいつになるのか予想することも出来ないので、魔獣の群勢が攻めてくる恐怖を感じながら生活をしていかなくてはならなくなってしまったのだ。
この魔獣の進行により、元王国騎士団長と偉大な魔法使いが犠牲になったことは後に知ることとなった。
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