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第十話:カナの過去
しおりを挟む俺はサトウ・カナと晴れてチームを組むこととなり、チームは二人でも問題がないと先生が言っていたので、他の生徒が寄り付かないのもあり、二人チームにすることになった。
カナは奴隷上がりだったこともあり、お金はないものの学費は免除されているが、住む場所がないらしくとりあえず俺の部屋に一緒に住むこととなった。
学校が終わって部屋まで帰り、俺はお互いについて話そうと提案した。
「チームメイトとして聞いておきたいことがいくつかあるんだがいいか?」
「うん…。大丈夫…。」
カナはまだ俺を警戒しているのか、少し震えている。
「冒険者育成学校の試験を受ける前は何をしていたの?」
俺が単刀直入に聞くと、ゆっくりではあるが今までのことを全て話してくれた。
カナは元々バーデン村に住んでおり、父親は元王国騎士団長、母親は偉大な魔法使いだった。
そして、俺が幼い頃に起きた事件の時に、王都まで逃げる途中、盗賊団に襲われ、一緒に逃げていた人たちは殺され、まだ幼かったカナは奴隷として売られたそうだ。
この世界での奴隷は若ければ若いだけ高く売れるらしく、そのせいで奴隷として売られたのだ。
父親と母親が亡くなったのを知ったのは奴隷として売られた後であり、酷く心に傷を負ってしまい、今でもまだ引きずっている。
運が良かったのか、貴族に買われることはなく、奴隷商人の元で五年ほど過ごしたある日、一人の冒険者により助け出され、その後は冒険者に剣の稽古をつけてもらって冒険者育成学校へ入学することを決めたそうだ。
その冒険者はランク6の冒険者貴族であり、冒険者貴族には奴隷を解放する権限が与えられており、その冒険者によってカナは奴隷上がりとなったと話してくれた。
「サトウと言うのは父親の姓か?」
「サトウはお母さんの姓だよ…。」
つまり、俺の元いた世界に関係しているのはカナのお母さんということだ。
これについては、詳しく調べる必要があると俺は考えた。
「カナ、ネームタグが赤いということは魔法が使えるのか?」
「うん…。治癒魔法と強化魔法が使えるよ…。」
カナはそう答えると根元についても教えてくれた。
カナの根元は舌であり、その理由が怪我をした時にお母さんがよく唾をつけてれば治ると言うから、言う通りにしていたら治癒魔法が使えるようになり、根元が舌になってしまったそうだ。
しかし、根源については自分でも分からないらしいが、問題なく魔法は使えるのだ。
俺はカナがすぐには心を開いてくれないだろうが、学校でも部屋でも一緒にいるのでそう時間はかからないと考えた。
「それより、男の俺と部屋が一緒でも大丈夫なのか?」
「大丈夫…。シルヴァといた時もずっと同じ部屋だったし…。」
俺が気を遣い聞くと、何が問題なのか分からないと言う顔をしながらそう答えた。
シルヴァとはカナを助けた冒険者だ。
「そうか、ならいいんだが。今日は色々話してくれてありがとう!辛い過去を思い出させてごめんな。」
「大丈夫だよ…。」
お礼とお詫びをすると少し笑ったような顔でそう答えた。
俺は何を思ったのか、自然とカナの頭に手を伸ばし撫でていた。
すると、カナは今まで顔が少し強張っていたのだが、一気に緩み、とても可愛い笑顔でこちらを見た。
「これされるの好き!シルヴァも良くしてくれたの。」
俺は頭を撫でるのをやめようと思ったがその言葉を聞き、もう少しだけいいかなと考え、撫で続けた。
俺は、これで少しは心を開いてくれたら嬉しいなと思っていた。
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