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第十三話:召喚者

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 俺たちは、王都でもかなり目立つ建物へと向かっていた。

「ここがビョウインか。かなりデカイな。」

 俺は見たままの感想を上を見上げながら呟いた。
 俺たちはそのまま、ビョウインの中へと入って行った。
 ビョウインの中は俺が見慣れているような風景で、元いた世界の病院そのものだった。
 俺はビョウインの中を見渡しながら受付まで足を運んだ。

「どうされましたか?」

「ここにユナという冒険者はいるか?」

 俺が近づくとすぐに受付嬢が話しかけてきて、質問を投げかけた。

「インチョウですね。はい、今はいますよ。約束の方はしていましたか?」

「いや、していない。」

「ですと、会うことは出来ないですね。」

「ユナが見たことない魔法を見せるからと伝えてくれくるか?」

「分かりました。少々お待ち下さい。」

 受付嬢はそう言うと、その場を離れて行った。
 お母様に昔、ユナは魔法に目がなくて、特に新しい魔法に関してはとても興味を持つと情報を貰っていた。
 すぐに、受付嬢は戻ってきてユナの部屋まで案内をしてくれた。

「失礼します。連れてきました。」

「ありがとう。では、仕事に戻ってよいぞ。」

 受付嬢は扉をノックしてから入り、すぐに受付の方へと戻ってしまった。

「なんだ、少年じゃないか。そう言ってくれればすぐに会ったのに。それにしても随分と大きくなったな。」

 俺を一目見るとすぐに分かったのかユナは微笑みながら椅子に座るように言ってきた。

「それで、見せてくれるっていう魔法は?」

「一応あるけど、それはただの口実で色々聞きたいことがあってきたんだ。」

 俺はそう答えると、空間魔法をユナに見せた。

「これは凄いな。誰もが欲しがるような魔法じゃないか。どうやってやるんだ?」

「俺もこれの原理は分からない。俺の根源は想像だから、想像すると出来るだけなんだ。」

 俺の答えに少し残念そうな顔をしていたが、新しい魔法を見れたことだけでも嬉しいようだ。

「聞きたいことがあるって言ったな?それは?」

「聞きたいことはかなり多いんだが大丈夫?まずはこのビョウインについてなんだが。」

「時間は大丈夫だ、気にするな。ビョウインについてはかなり長くなるぞ。」

 ユナはそう言うと、俺たちにお茶を出してくれてゆっくりと座った。

「私の母は王国騎士団魔法部隊の隊長になるほどの魔法の使い手なのだが、ある時国王が持つ特殊能力の予言で、近い将来強大な魔力を持った者がこの世界に現れると予言したんだ。それを聞き、母は別の世界から人を召喚しようとした。別の世界から来る人間は召喚者と転生者がいてな、召喚者とはその名の通り、魔法によって召喚した者で、転生者とは別の世界から来て、こちらの世界で新たに生まれる存在なのだが、この者たちは昔から何人かいて、その全員が強大な魔力を持つものであることが分かっていた。そして、私の母は魔法により召喚をしたのだ。」

「難しい話だな。それで、召喚は成功したのか?」

「ああ、成功した。そして、召喚されたのがサトウミサキという少女だった。ミサキは当時の私と同い年でな。とても仲良くしていたのだ。」

 ユナがその名を口にした瞬間、今までつまらなそうにしていたカナの表情が変わった。

「サトウミサキって私のお母さんだ。」

 カナがそう呟くとユナは驚いた顔をしていた。

「それは本当か?なら、尚更この話をしなくてはならないな。私とミサキは良きライバルとして友人として、魔法の勉強を共にしていたのだ。私の魔法は攻撃魔法しかなく、ミサキは治癒魔法しかなかったのだが、お互いがお互いの魔法を羨ましく思っていてな、ある日二人の魔法を交換出来る魔法が書かれた本をミサキが見つけたと言ってきたんだ。私たちはその魔法を使って魔法の交換を試みたのだが、結果は失敗。交換することは出来なかったのだ。私たちは成長して、それぞれの道を行ってからはなかなか会うことが出来ずにあの事件が起きた。あの事件により私は酷く荒れたもんだ。しかし、ある事に気づいた。それはミサキの魔法が使えることだ。驚いた私は昔試みた魔法がどんな魔法だったのか調べると、どちらか一方が死ぬともう一方に魔法が引き継がれるという魔法だったんだ。召喚者は昔からあまり長く生きられないと言われていた。ミサキはその事を知った上であの魔法を使ったんだ。ミサキは昔からこの世界にはもっと医者が居ればいいのに、ビョウインがあれば良いのになと言っていたんだ。だから私はミサキの魔法を使い、このビョウインを作ったということだ。」

「そうだったのか。だからビョウインがあったのか。」

「少年、ビョウインを知っているのか?」


 俺は何も考えずに呟くと、その呟きに対してユナが反応した。
 俺はやってしまったと思い、口を手で塞いだ。

「はぁ。やってしまった。今更隠せないし正直に言うしかないか。俺はユナが説明していた転生者だ。でも、お願いだから父さんとお母様には黙っていてほしい。」

「これは驚いた。流石にマリアとアーサーにはそんなことは言えんよ。」

 ユナは驚きながらも冷静で、黙っていてくれることを約束してくれた。

「話はこんなもんで大丈夫か?それより私はお前たちの魔力量が気になって仕方ない。」

「まだ聞きたいことはいっぱいあるが、今回はこんなもんで大丈夫だ。魔力量って測れるのか?」

 俺の問いに対してユナは何も言わず水晶を持ってきた。

「これに触れるとその人の魔力量が分かる。魔法の使えない人でも魔力というものは持っているんだ。魔力量が百無ければ人は死んでしまう。魔法の使える者は百以上持っていると言うことだ。」

 ユナはそう説明してくれると水晶をこちらへ渡してきた。
 それをカナが受け取ると水晶の中に一という数字が出てきた。

「一ってどういうことだ?生きるのに百は必要なのだろう?」

「一じゃないこれは。この水晶は千の値までしか表示出来ないんだ。千の値を超える魔力量を持つのは召喚者と転生者くらいしかいないからな。召喚者の娘だけあって魔力量が凄いな。一万だぞ。」

 ユナは説明しながらも信じられないという顔で水晶を眺めていた。
 俺はカナから水晶を受け取ると、水晶には三という数字が出た。

「三万?ミサキでも二万だったのに?国王の予言の強大な魔力を持つ者って少年の事だったのかもしれないな。」

 ユナは驚きを隠せずにいた。
 俺たちは様々な謎について知り、さらに自分の魔力量について知ることとなり、一日でかなりの情報量に頭がパンパンだった。
 そして、俺は一刻も早く冒険者貴族になり、村へ帰りたいと思っていた為、すぐにでもギルドへ行き、ランク6の魔獣を倒したいと考えていた。
 しかし、ランク6の魔獣を倒す過程で絶望を味わうとこになるとは思ってもいなかった。
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