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第7章 新国テンプルム
第343話 時間停止は便利です
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「『魔王ユーリ』よ、貴様に時間を与えると危険だ。貴様にも言い分はあるだろうが、悪いが問答無用で始末する」
その将軍の言葉で、天井のあちこちが開いて黒装束の男たちが降りてきた。
総勢10人。軽やかな身のこなしからして、法王国の隠密部隊――それも暗殺専門かもしれないな。
両手に金属製の3本の爪を着けており、どうやらその先には毒が塗られているようだった。
恐らく、特製の猛毒だと思うけど、僕には効かないだろうな。喰らうつもりもないけど。
どこの国にもこの手の組織はあり、神聖な法王国とて、裏から支える闇の実行部隊はいる。
見たところ、純粋な強さでは法王国聖騎士隊には及ばないみたいだけど、殺人に関しては熟達しているようだ。
躊躇なく僕を殺しに来るに違いない。
「テンプルム国王『魔王ユーリ』を殺せ!」
「よせジークヘルトっ、くそっ、全然動けねえっ!」
「やめてっ、逃げてユーリ様ぁっ!」
久魅那が床にへばりついたまま、絶望的な表情で僕を見つめる。
それとは対照的に、眷女のみんなはすでに僕が余裕なことは見抜いてるようで、でろ~んと床に身体を伸ばしたまま成り行きを見守っている。
というより、僕がどうするかワクワクしているような状態だ。
少しは心配してくれてもバチは当たらないと思うけど?
まあいいや、ではその期待に応えましょう。
「『魔王ユーリ』、そのお命ちょうだいする!」
10人の暗殺者がいっせいに僕を襲おうとした瞬間、全員その場に倒れ込む。
「な……なんだ!? 何が起こったのだ……?」
「ユーリ様、これはいったい……?」
実はいま時間を止めて、相手を気絶させるため『波動撃掌』を撃ち込んだんだ。
時間を止めずにただ石化させるだけでも良かったんだけど、完全に僕の周囲を囲まれてたから、10人を一気に石化させるのが難しかったんだよね。
周りにみんなが倒れているのであまり派手に動きたくなかったし、ちょっとズルいけどこっそり全滅させてもらったよ。
「バカな、封印で一切動けぬはずなのに、どうやって倒したのだ!? 貴様が動いたところなど見なかったぞ!?」
「何人きても同じですよ。僕としてはこれ以上被害者を出したくないので、無駄なことは遠慮していただきたいのですが」
「『魔王ユーリ』……このオレの想定以上の存在だというのか!? だがもはやあとには引けぬ! やりたくはなかったが、聖剣の力を解放せねばならぬか……」
えっ、ってことは、聖剣『贄捧ぐ天剣』を使うってこと?
法王国の将軍は、代々受け継ぐその聖剣の力で『雷帝』と呼ばれるけど、この部屋の中でその力を解放されるのは困るな。
もの凄い神の雷が降りそそぐっていうし、みんなが巻き添えで被害を受けたら大変だ。
『エナジー吸収』スキルで吸収してもいいけど、まあ無駄な戦闘は避けよう。
「贖罪の贄捧ぐ! 汝、裁きの雷を受け……な、なにっ!?」
将軍が聖剣の力を使おうとしたところ、時間を止めてその剣を奪い取った。
これでもう戦えないだろう。
「そんなバカな……このオレが、剣を振るうことすらできぬだと!?」
「無駄ということを分かってもらえたでしょうか?」
「くっ……貴様は腕輪と魔導結界で、完全に力を封印されているはずだ! 伝説では、如何なる者でも無力にするとなっている。なのに、この奇跡の業はいったいなんなのだ!? 魔王ですら、この封印の前では為す術もないだろうに……」
確かに、もし魔王に『臣下の誓錠』を嵌め、この部屋に連れてこられるなら、勇者の力を使わずとも倒すことは可能だ。
まあ机上の空論だけどね。魔王に封印の腕輪を着けさせることがまず不可能だし。
あ、いや、今回の魔王は以前よりも遙かに強大になってるから、たとえこの罠に嵌めても倒せないかもしれないけど。
「ああユーリ様、あなた様の強さを信じなかったわたしが愚かでした。どうかわたしを罰してください! なんでもします! いえ、させてください!」
「なんかあの子、どんどん性癖が悪化してない?」
「これは由々しき事態ですわ、わたくしたちも負けてられませんわね!」
いや、別に変態度なんかで競わなくてもいいんだ、お願いだから普通にしててください……。
「『魔王ユーリ』……貴様は何者なのだ? 貴様が何をしたのかまるで分からぬ。完全にオレの理解の限界を超えている力だ。もしや、この世界を滅ぼしにきた異世界の神なのか……?」
「滅ぼすなんてしません、僕はこの世界の人間だし、皆さんの味方です」
「これほど人知を越えた奇跡を見せながら、それを信じろというのか? 悪魔の甘言としか……」
「おやめなさい、ジークヘルト将軍」
狼狽する将軍の後ろから、静かに部屋の扉を開けて誰かが入ってきた。
みんなの視線を集めたその人は……なんと、パスリエーダ法王国君主、ゲネヴィシュト法王様だった。
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その将軍の言葉で、天井のあちこちが開いて黒装束の男たちが降りてきた。
総勢10人。軽やかな身のこなしからして、法王国の隠密部隊――それも暗殺専門かもしれないな。
両手に金属製の3本の爪を着けており、どうやらその先には毒が塗られているようだった。
恐らく、特製の猛毒だと思うけど、僕には効かないだろうな。喰らうつもりもないけど。
どこの国にもこの手の組織はあり、神聖な法王国とて、裏から支える闇の実行部隊はいる。
見たところ、純粋な強さでは法王国聖騎士隊には及ばないみたいだけど、殺人に関しては熟達しているようだ。
躊躇なく僕を殺しに来るに違いない。
「テンプルム国王『魔王ユーリ』を殺せ!」
「よせジークヘルトっ、くそっ、全然動けねえっ!」
「やめてっ、逃げてユーリ様ぁっ!」
久魅那が床にへばりついたまま、絶望的な表情で僕を見つめる。
それとは対照的に、眷女のみんなはすでに僕が余裕なことは見抜いてるようで、でろ~んと床に身体を伸ばしたまま成り行きを見守っている。
というより、僕がどうするかワクワクしているような状態だ。
少しは心配してくれてもバチは当たらないと思うけど?
まあいいや、ではその期待に応えましょう。
「『魔王ユーリ』、そのお命ちょうだいする!」
10人の暗殺者がいっせいに僕を襲おうとした瞬間、全員その場に倒れ込む。
「な……なんだ!? 何が起こったのだ……?」
「ユーリ様、これはいったい……?」
実はいま時間を止めて、相手を気絶させるため『波動撃掌』を撃ち込んだんだ。
時間を止めずにただ石化させるだけでも良かったんだけど、完全に僕の周囲を囲まれてたから、10人を一気に石化させるのが難しかったんだよね。
周りにみんなが倒れているのであまり派手に動きたくなかったし、ちょっとズルいけどこっそり全滅させてもらったよ。
「バカな、封印で一切動けぬはずなのに、どうやって倒したのだ!? 貴様が動いたところなど見なかったぞ!?」
「何人きても同じですよ。僕としてはこれ以上被害者を出したくないので、無駄なことは遠慮していただきたいのですが」
「『魔王ユーリ』……このオレの想定以上の存在だというのか!? だがもはやあとには引けぬ! やりたくはなかったが、聖剣の力を解放せねばならぬか……」
えっ、ってことは、聖剣『贄捧ぐ天剣』を使うってこと?
法王国の将軍は、代々受け継ぐその聖剣の力で『雷帝』と呼ばれるけど、この部屋の中でその力を解放されるのは困るな。
もの凄い神の雷が降りそそぐっていうし、みんなが巻き添えで被害を受けたら大変だ。
『エナジー吸収』スキルで吸収してもいいけど、まあ無駄な戦闘は避けよう。
「贖罪の贄捧ぐ! 汝、裁きの雷を受け……な、なにっ!?」
将軍が聖剣の力を使おうとしたところ、時間を止めてその剣を奪い取った。
これでもう戦えないだろう。
「そんなバカな……このオレが、剣を振るうことすらできぬだと!?」
「無駄ということを分かってもらえたでしょうか?」
「くっ……貴様は腕輪と魔導結界で、完全に力を封印されているはずだ! 伝説では、如何なる者でも無力にするとなっている。なのに、この奇跡の業はいったいなんなのだ!? 魔王ですら、この封印の前では為す術もないだろうに……」
確かに、もし魔王に『臣下の誓錠』を嵌め、この部屋に連れてこられるなら、勇者の力を使わずとも倒すことは可能だ。
まあ机上の空論だけどね。魔王に封印の腕輪を着けさせることがまず不可能だし。
あ、いや、今回の魔王は以前よりも遙かに強大になってるから、たとえこの罠に嵌めても倒せないかもしれないけど。
「ああユーリ様、あなた様の強さを信じなかったわたしが愚かでした。どうかわたしを罰してください! なんでもします! いえ、させてください!」
「なんかあの子、どんどん性癖が悪化してない?」
「これは由々しき事態ですわ、わたくしたちも負けてられませんわね!」
いや、別に変態度なんかで競わなくてもいいんだ、お願いだから普通にしててください……。
「『魔王ユーリ』……貴様は何者なのだ? 貴様が何をしたのかまるで分からぬ。完全にオレの理解の限界を超えている力だ。もしや、この世界を滅ぼしにきた異世界の神なのか……?」
「滅ぼすなんてしません、僕はこの世界の人間だし、皆さんの味方です」
「これほど人知を越えた奇跡を見せながら、それを信じろというのか? 悪魔の甘言としか……」
「おやめなさい、ジークヘルト将軍」
狼狽する将軍の後ろから、静かに部屋の扉を開けて誰かが入ってきた。
みんなの視線を集めたその人は……なんと、パスリエーダ法王国君主、ゲネヴィシュト法王様だった。
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